Book Reviewに関するエントリー

51h7oYCb2nL.jpg清原和博氏の「男道」を読了。

ハードカバーでかなりの厚みがあったので、ちょっと構えて読み始めたのだが、厚手の紙だったのと平易でとても読みやすい文体のおかげであっという間に読了。予想外に面白かった(といったら失礼か)。

清原氏は言わずと知れたプロ野球界のスーパースターで、昨年現役引退をしたばかり。だが、巨人時代の素行の悪さやコテコテのパフォーマンスなどでヒール扱いになった部分もあり、僕自身も清原氏のことはあまり良く思っていなかった。

だが、最近のマスコミの偏重報道につくづく嫌気が差している自分自身が、マスコミを通しての清原氏の言動だけをベースに彼を判断してしまっているという矛盾に気付き、彼自身の言葉に興味を持った。

というわけで、特に清原ファンではない、むしろアンチ清原を自認していた僕だったのだが、本書は予想以上に楽しく読めたし、教訓も多かった。

まずなんといっても文体が平易で読みやすく、しかも文章がうまいのだ。PL学園時代に桑田選手とともに大活躍した甲子園での思い出や、憧れの巨人からドラフト会議で指名されなかった悔しさなどが、目の前で繰り広げられているかの如き瑞々しい文章で描かれている。

もちろん文章が面白いだけが本書の魅力ではない。その魅力の多くは、清原氏が生きてきた人生の壮絶さと人生哲学の頑なさ(これは良い意味でも悪い意味でも)、自分を愛してくれる人間を無条件に受け入れ、同じように他者を愛する性格によって創られているのだ。

清原は僕の2歳年上で、同世代といっていいだろう。同世代の彼の半生を読むと、自分自身が如何に己を追い込むことなく生きてしまったかと赤面してしまう箇所も多く、読んでいるうちに段々居心地が悪くなってくる(笑)。

彼がPL学園で死に物狂いに練習していた頃、僕自身は何をしていたか。彼が巨人から指名されず涙を飲み、憧れの王監督と無二の親友桑田選手の二人に裏切られたのではないかと悩んでいた頃、僕にいったいどんな悩みがあったか。同世代の男として、彼のことを良く知りもしないで揶揄する資格など自分にはない、と痛感させられる。

オリックス移籍後の清原氏については、僕はほとんど何も知らなかった。たまにスポーツニュースで、久し振りに出てきたけどまた怪我をして二軍に落ちたとか、怪我ばかりでほとんど試合に出ていないのに高額の年俸をもらっているとかといった、ありきたりなニュースを耳にしていた程度だ。

だがその頃彼は、膝の手術で歩くこともままならない状態でリハビリを続けていた。一般人とは違い、ただ生活できれば良いというレベルのリハビリではない。もう一度プロ野球選手として一軍に戻るというリハビリがいかに壮絶であったかについて、僕は今まで考えたことがなかった。

もちろん本書を読んだからといって、僕は急に清原氏の大ファンになったりはしない。もともと彼が好むテイストは僕の好みとは大きく異なるし、どうやらノリも合わないだろう。だから僕が彼が醸し出す世界観に大きく惹きつけられることはない。

だが、清原和博というプロ野球選手のことを、僕はやっぱり尊敬すべきだなと強く感じた。彼は尊敬に値するだけの努力をし、そして結果も出してきたのだし、僕らの同世代のスーパースターだったことは間違いないのだから。

僕はテレビはほとんど見ない生活をしているが、清原氏はいま評論家をしているようだ。数年間外部から野球を見つめ、その後で指導者として再びプロ野球界に戻ってくるのだと僕は確認している。

彼がコーチや監督として再びユニフォームを着たときには、僕は今までとは違う見方で清原氏を応援することができるような気がする。

読んでよかった。ありがとう、清原和博。

 

男道
男道
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清原 和博
幻冬舎
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村上龍の「限りなく透明に近いブルー」を読了。

このブログでは初めての紹介だが、数え切れないほどの回数再読している作品で、20回以上は読んでいるだろう。おかげで本はボロボロだ(笑)。

本書の舞台は1970年代初頭の東京郊外福生の米軍基地近くである。19歳の主人公「リュウ」が、日本人や米兵の仲間達との、麻薬やセックス、音楽と暴力に満ちた日々を描いた作品である。そして本書は村上龍のデビュー作かつ1976年の群像新人賞受賞作であり、そして、同年の芥川賞受賞作品でもある。

僕が何度も繰り返しこの「限りなく透明に近いブルー」を読み返す理由は、その激しいセックス、ドラッグ、暴力の描写に惹かれるからではない。その理由は、この作品が持つ強いリリシズムと、そして文体の美しさが導く静寂さを僕が強く求めるからである。

物語の冒頭から繰り広げられる薬漬けの登場人物達の無軌道な言動は確かに刺激的で読む者を釘付けにする吸引力を持つし、登場人物同士のトラブルに起因する暴力シーンを読めばこちらの心拍数は上がりることも確かだ。

だが、麻薬やセックス、それに暴力への魅力が読者を本作に惹き付けるのではない。主人公が語る言葉の繊細さ、それに彼が見る世界の視覚的描写の美しさを徹底的に追求した純文学者、村上龍の世界に僕らは堪らなく惹かれてしまうのだ。

この作品の中では、主人公「リュウ」が見た世界だけが全ての世界であり、彼が見なかった事象はまったく描かれることがない。小説であるにもかかわらず、読者はまるで映画を見ているかのような錯覚を憶える。それほどに見事な描写力とキャラクター設定力を、本作は持っていると、僕は思っている。

この「限りなく透明に近いブルー」が発表されてから、既に30年以上の年月が経った。村上龍は大御所となり、経済・金融小説やビジネス系エッセイを多数発表し、今や日本の現代を非ビジネス・非経済学者的アプローチから抉るという活動における第一人者になっていると言って良いだろう。

だが、僕は、村上龍には、是非もう一度だけ、この「限りなく透明に近いブルー」の文体を使って、経済・金融ではない、ビジネスでもない小説を書いて欲しいと願っている。

何故なら、彼の長く栄光に満ちたキャリアに於いて、村上龍がここまでリリシズムにこだわって作品を完成させたのは、あとにも先にもこのデビュー作以外にはないからだ。

なんといっても密度が濃く、儚く、そして名言に満ちた名作。タイトルも泣けるほどカッコいい。「限りなく透明に近いブルー」。発表から33年を経ても色褪せない力作だ。

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岡部えつ氏の「枯骨の恋」を読了。

本書は「第3回『幽』怪談文学賞短編部門大賞」受賞作である「枯骨の恋」を収録した短編集である。

友人に薦められて読んでみたのだが、非常に良い。すごく良い。タイトルにも書いたが、何といっても怖くてエロくてそして美しい。期待以上の素晴らしさだった。今年読んだフィクションの中では3本の指に入る出来だろう。

本書には全部で7編の短編が収録されているのだが、共通して言えるのが、上に書いた「怖さ」「エロさ」「美しさ」である。

まず「怖さ」だが、怪談なので怖くて当たり前というなかれ、物語の怖さだけではなく、側方支援として、さまざまな舞台装置が怖さをエスカレートさせている。

例えば「女同士の妬み」であったり、「女の容姿の衰え」であったり、「不景気と加齢による自分の年収の低下」と「失業に対する恐怖」であったり、「地方都市の過疎化による閉塞感」だったり、「ずっと昔に犯した罪の記憶と因果」であったりする。

これらの、直接の物語展開とは一見関係のないような舞台装置がとても上手い具合に作動した結果、読者(特に男性は?)は背中にじっとりと嫌な汗をかきつつも、目が離せない、という展開になる。恐らく女性と男性で受け取り方は違うだろうが、女性を美化して捉えがちな男性の方が、本書に登場する女性達の怖さに打ちのめされるのではないだろうか。

次に「エロさ」だが、これも女性作者ならではなのだろうが、視点自体が既にエロい。男が書く女性像はどうしても男性が無意識に美化した姿に改変されてしまうケースが多いが、本作に出てくる女性達の性に対する言動は非常に生々しく、時として苛烈ですらある。

最後に美しさだが、まず文体が美しい。リズムが良く読みやすいだけではなく、女性らしいすらりとした文章が物語の恐ろしさとは対照的で、そのためにこの短編集全体で、「怖さ」というよりは「儚さ」を読後感として与えてくれる。

次に表紙が美しい。昔レコードで「ジャケ買い」という言葉があったが、本書がもし書店で平積みになっていたら迷わず買いたくなるような、そんな美しい装釘である。ちなみにこの装画は佐藤正樹氏によるものだそうだが、憂いをたたえる大人の女の美しさが良く表現されていると思う。

そして最後だが、主人公達が美しい。7編の物語は全て女性が主人公なのだが、どの作品の女性達もどこか儚げで傷つき、そしてもがいている。女性が描く女性なのでその美しさは媚びておらず自然体で、じんわりと染み出してくるような美しさで、思わず主人公達に感情移入してしまう。

7編どれも面白かったが、個人的にはタイトルクレジットの、既に死んだ元恋人の骸骨の幻影とともに暮らす女を描いた「枯骨の恋」、そして7作中で一番怖かった、女同士の友情の裏に潜む主導権争いや劣等感などの醜さを織り込んだ「親指地蔵」、そして地方の土着信仰と現代企業のいじめ問題をハイブリッドにした「アブレバチ」、この3作が特に心に残った。

寝苦しい夏の夜に、怪談なんて如何だろう。僕は実際寝る前に「アブレバチ」を読んだら、すっごく怖い夢を見て夜中に飛び起きた(^_^;)。お薦めです!

枯骨の恋 (幽BOOKS)
枯骨の恋 (幽BOOKS)
著者:岡部えつ
出版社:メディアファクトリー
出版日:2009-06-03
ランキング:159786位
おすすめ度:
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磯崎憲一郎氏の「終の住処」(ついのすみか)を読了。

本書「終の住処」は第141回芥川賞受賞作品である。ここ数年芥川賞受賞作を読むという習慣がなくなっていたのだが、今回は日本人の男性、しかも40代ということで興味を持ち、購入して読んでみた。書籍として130ページ強だが、そのうち受賞作「終の住処」は100ページ強であり、もう一本書き下ろしの「ペナント」という作品が収録されている。

で、この「終の住処」だが、何とも読了感が悪い作品だ。誤解のないように言っておくと、それは著者が綿密に計画し、作品に練り込んだものが読者の心に投射された結果なのであって、作品の水準が低いとか、そういうことを言っているのではもちろんない。

その「悪い」読後感を幾つかのキーワードで表現すると、まず頭に浮かぶのは「不安定」、そして「無意味」、さらに「諦観」といったネガティブな単語がずらずらと出てきてしまう。とにかく後味が悪いのだ。

わずか100ページ程度の中編の中に、主人公と妻の20年以上の歳月が詰め込まれているのだが、物語は不安定な文体で延々と区切りなく語られる。登場人物同士の会話が極端に少ない代わりに説明文が多く、パラグラフの切れ目が少なく、数ページもずらずらと説明文が続く場合もある。

また、100ページで20年の物語を描いているわけだが、時間の進行は均等に割り振られておらず、いや、寧ろ意図的に時間の長さを無視した割り振りとなっており、その点でも読者は不安を感じることになる。例えば、主人公の男は妻に隠れて浮気をするのだが、まだ他人同士の二人が偶然すれ違った次の行で二人は既に愛人関係になっており、その過程などは全て省略されているかと思えば、遊園地の観覧車のゴンドラの数についての主人公の思索が延々と続いたりする。

さらに、登場人物の会話や作中での価値判断が常軌を逸している点も付け加えたい。妻に隠れて浮気をした男が妻と離婚をしようと実母に相談に行った際、帰り際に母が付け加える一言は「その女の子が太っているということだけは、完全にあなたの思い違いなのだと思うわ」である。この一言は物語の進行と関係がないうえに、愛人として直接会っていた主人公に対して話しを聞いただけで会ってもいない母がかける言葉としてはロジックが破綻している。

また、仕事で成功を収めた主人公が通勤電車の中で幸福な気持ちに包まれた際のモノローグは意味不明な、以下のような文章である。

「もう大丈夫だ。いっさいの心配は不要だ。こんな朝の通勤電車のなかにさえ祝福すべき子供がいたのだ、ならばここには猫やサルだっているかもしれない、馬だって姿が見えないだけで本当はいるのかもしれない、そしてじっさいにそれらの動物がいたとしても、この世界にとって何ら問題はない」

自分と妻、そして一人娘の3人が住むための「終の住処」を建てた主人公は、アメリカに転勤となり、そして重要な合併案件を処理し、数年ぶりに帰国する(この部分もわずか10ページ程度で済んでしまう)。帰国した彼をまっていたのは彼の家と、そして妻だった。娘は数年前からアメリカに留学してしまっていたという。そして主人公は妻という何を考えているか分からない人間との今後の生活に思いを馳せ、物語は終わる。

人間は無意味なことを繰り返ししでかす生き物で、人生は思うようにならず、他人は何を考えているのか分からない、たとえそれが妻であっても。人生は長いようで短く、そして複雑なようでいて単純だ。

おそらくこの物語が内包しようとしているテーマは上記のようなものなのだと思う。だが、物語の不安定さと読後感の悪さに打ちのめされてしまい、しばらくそのようなテーマまで辿り着くことができなかった。

文学的価値は高い作品だし、多くのチャレンジをしているのだと思う。だが、面白いかと言われれば面白くないと答えるし、もう一度読みたいかと言われたら、僕はもういいや、と答えるだろう。

うーん、と唸ったまましばらくレビューを書き始められなかった。そんな一冊。

 

終の住処
終の住処
著者:磯崎 憲一郎
出版社:新潮社
出版日:2009-07-24
価格:¥ 1,260
ランキング:134位
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在庫状況:通常2〜5週間以内に発送
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村上龍の「無趣味のすすめ」を読了。

タイトルは「無趣味のすすめ」となっているが、無趣味であることを奨めているというよりは、趣味なんかに熱中せずに自分の仕事にもっと時間と精力を注ぎ込みなさい、という意味合いの本である。

本書はエッセイというよりは「独白録」のような体裁で、村上龍がトピックごとに自分の考えを断定する文体で述べていく。中には幾つか「その通りだよな」というものもあれば、一方で「あんたは組織に属してないからそんなことが言えるんだよ」と反論したくなるものもあった。

彼が言っていることは大筋で正しく筋も通っており説得力もある。「グローバリズムへの適応」、「理想的なビジネスパートナーの存在」、「交渉時に『相手の立場に立って考える』ことが何故日本でだけタブー視されるか」、「消費者として王様と呼ばれる我々が労働者では消耗品となるジレンマ」などは、まさに日本が直面する問題の本質を突くテーマであることは確かだ。

だが一方で、心のどこかで「この本って村上龍が書かなきゃいけないかなあ」と思う自分がいるのも事実だ。「部下は掌握すべきなのか」という項目で、著者は、やる気がなかったり、同じ方向を向かない部下は辞めてもらえばいい、とあっさり言い切り、部下との関係で悩んでいる上司がいることが理解できない、とまで言っているが、それは彼がフリーで活動し、中間管理職の立場を経験せずに生きているからこそのものであり、現実問題としては彼の方法論では組織は改善しないどころか、崩壊してしまうだろう。

また、集中して仕事ができて充実している時にはオフ(休暇)など必要ない、という項目についても、やはり彼は自分の好きなことをやって生業としているのだからそのように考えるのが当たり前でも、企業に勤める多くの人には当てはまらないのでは、と反論したくなる。まあ、「オフを欲するのは無能なビジネスマン」と断言されてしまっているので、オフが欲しいと思う僕はきっと彼から見れば無能なビジネスマンということなのだろう。

というわけで、良い点もたくさんあるが首を傾げたくなる箇所も幾つかある、そんなエッセイだった。

でもこれって村上龍が書かなきゃダメかなあ。吉越浩一郎さんとか柳井正さんとか渡邉美樹さんとかが書いた方が良い本になるんじゃないかなあ。ビジネスの現場にいない人が書くビジネス指南書ってのはどうもねえ(^_^;)。

 

無趣味のすすめ
無趣味のすすめ
著者:村上龍
出版社:幻冬舎
出版日:2009-03-26
価格:¥ 1,260
ランキング:3796位
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在庫状況:通常2〜5週間以内に発送
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西原理恵子氏の「この世でいちばん大事な「カネ」の話」を読了。

僕はまったくと言っていいほどマンガを読まないので西原理恵子氏のこともほとんど知らなかった。知っていたのは、昔祖母が毎週買っていた「週刊文春」で「恨ミシュラン」なる連載を読んだことがあったのと、数年前にアルコール依存症から生還したご主人を癌で亡くしたという新聞記事を読んだぐらい。

というわけで、西原氏のマンガを一つも読まずに自叙伝的エッセイを先に読んでしまい、多少戸惑っているというのが正直な感想。恐らく本書は西原氏のマンガを読み込んでから読むべきだったのだろうと感じたが、読んでしまったものは仕方がない。西原ファンから見ればひどく見当違いなレビューになるかもしれないが、僕が上述した通りの状態で読んで本書のレビューを書かせていただこう。

本書はタイトルこそ過激に「カネの話」となってはいるが、中身は「仕事と生き方」の話であり、西原氏の半生を顧みた自叙伝である。ただ、彼女の半生を顧みるには、「カネ」を避けて通る訳にはいかないと言い切れるほどカネで苦労して来たし、また、カネで苦労したからこそ今の彼女がある、という意味では、このタイトルは過激ではあるものの、決して突飛なものではないのだろう。

幼少期の貧しい日々や過酷な家庭環境については気の毒としか言いようがないが、そこからガンガンのし上がってくる上京後の西原氏の行動と、その行動規範というか哲学は、非常に清々しくそして力強い。自分探しなんかしてたって何も見つからない。とにかく仕事をして前に進めば、そのうち自分は何ものかになっている。そのメッセージは単純明快であり、真理を突いている。

力強く自分のやりたいことをやり続け、何者かになり、そして自分が大事だと思う人々と生きる。シンプルで力強い彼女の生き方は、是非見習いたいと思わされる。壮絶なのに清々しい読後感であった。

これは、西原氏のマンガも一冊ぐらい読まねばなるまい(^_^;)。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)
この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)
著者:西原 理恵子
出版社:理論社
出版日:2008-12-11
価格:¥ 1,365
ランキング:155位
おすすめ度:
在庫状況:在庫あり。
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雑誌"monkey business vol.5 対話号"から、村上春樹のロング・インタビュー、「成長を目指して、成しつづけて」を読了。聞き手は古川日出男氏。

村上春樹のインタビューが雑誌に掲載されること自体が滅多にないことで、しかも先日のエルサレム賞関連のもののように特定の話題に限定されたものではなく、自由なテーマで自らの著作や創作活動について語るというのも珍しく、これはと思い読んでみた。

まず何と言っても特筆すべきはそのボリュームで、何と70ページ以上ある。しかも内容がほぼ彼の著作や創作活動に関する彼の考えに関する話で占められていて、内容が非常に濃く、素晴らしいインタビュー記事だった。

このインタビューのテーマは、タイトルにある通り、60歳を迎えた村上春樹がさらなる成長を目指し努力し続ける姿をリアルに伝えようというものなのだが、彼の自分自身に対する貪欲な成長志向がハッキリと言葉として伝えられていて清々しく、またここまで真摯に執筆に向き合い、しかも結果にも執着する作家はなかなか他にはいないのではないかと感動もさせられた。

30歳でデビューした彼は40歳で「ノルウェイの森」を書き、50歳で「ねじまき鳥クロニクル」を書き、そして60歳にして「1Q84」を書いたわけだが、それぞれのステージにおいて彼が何を考え、どのような課題を見出し、何を目標とし、どのように行動したかが簡潔にまとまられ、そして意外にもかなり熱く語られている。そしてその中で共通するのは彼の努力の仕方が常に首尾一貫していて、「一度決めたらずっと同じことをコツコツやり続ける」というタイプの努力を惜しまないという点で、この点は何とも勉強になるというか尊敬するというか、見習わなければならないと感じさせられた。

もう一つ興味深かったのは、彼が短編、中編、ノンフィクションの創作を、長編を書くための準備運動というか、骨格を鍛えるための作業と定義して様々なチャレンジを行って来ている点で、これは過去の短編、中編を読むと素直に納得することができるが、このことからも(インタビューの中で名言もしているのだが)、彼は長編の創作活動を作家としての彼の活動における究極の目標と位置づけていることが改めて浮き彫りになっていて面白い。

60歳を迎えた人間が「成長を目指して、成しつづけて」と考え続けられることだけでも大したものだと思う。ただ目指すだけではなく、成すだけでもなく、「成しつづける」ことを求めているのだ。これはそんじょそこらの決意ではない。

これだけ自分の創作活動に関わる事柄について(熱く)語る村上春樹というのはなかなかない。しかも内容がとても濃くて素晴らしい。作家を目指している人だけでなく、自分自身の人生の組み立てについて考えたい人なども是非読んでみて欲しい、素晴らしい記事だった。

 

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
著者:柴田 元幸
出版社:ヴィレッジブックス
出版日:2009-04-20
価格:¥ 1,365
ランキング:3258位
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午堂登紀雄氏の「脳を「見える化」する思考ノート」を読了。

本書のレビューをこのブログに書くのは実は二度目で、一度目のレビューは今年の3月30日に書いている。

この本を読んで感銘を受けた僕は、すぐに東急ハンズへと向かい、一冊900円ほどするリング式、厚表紙、無罫線タイプのノートを買ってきて、なんでもかんでもノートに書き殴り始めた。

それから4ヶ月が経ち、僕のノートは4冊目を迎え、その間他にも数冊の「ノート術」、「メモ術」関係の本を次々に読み、自分なりにノート術を強化してきた。

4ヶ月前と較べた時に、ノート術を始めてから明らかに自分自身が進化したと実感できる部分と、まだモヤがかかったように胡乱なままになっている部分があるように感じ、この「脳を「見える化」する思考ノート」を再読し、自分に足りない部分を再発見しようと思い立ったのだ。

再読の結果、やはり色々と面白い再発見があった。いや、再発見というよりは、本来最初に読んだときに頭に叩き込んでおくべき点が幾つも漏れていたのだが(^_^;)。

中でももっとも重要なポイントは、自分自身の「なりたい姿」「目標」「欲望」などを残さず書き出す「ブレイン・ワークアウト」における、「なりたい姿」や「目標」を、次のステップでどのようにToDoに落とし込むかという部分が、抜け落ちてしまっていたことが発見できたことだろう。

「小説で新人賞を獲りたい」「フルマラソンを完走」「数年間ヨーロッパに住んでみたい」など、なりたい自分、達成したい目標を書き出すことは実践できていて、さらにそれを年単位、月単位、週単位のTo Doに落とし込むこともできていたのだが、肝心の、目標を達成するためにしなければないToDoの洗い出しとその優先順位付けが抜けていたために、一番大きな目標と年単位の目標の間にモヤモヤとした部分が残ってしまっていたのだ。

というわけで軌道修正。今週末にこの部分をじっくり補正して、改めて目標をじっくり見直そう。

もう一つ新たな発見だったのは、著者の午堂氏が強調している「思考」ノートとしての使い方が、自分はまだまだできていなかったことを再認識した点で、これは見落としというよりは、ノート術活用の「経験値」が僕自身まだ低く、改善の余地がたっぷりあるということなのだろう。

一冊のノートに仕事もプライベートもすべての情報を時系列順にひたすら詰め込む。議事録、セミナーの内容、レストランの感想、リマインダー、ToDo、スケジュール、日記、怒りのガス抜き、などなど。だが、一番大事なのは自分の夢や目標を書き込み、その目標を達成するための道筋を考えることと、自分に出来ること、つまり新しいアイディアや企画を育成していくことなのだが、その部分の「ぶれ」を修正するのに、今回の再読は非常に役に立った。

もちろん僕は紙のノートだけではなく、MacやPC、iPhone、それにこのブログなど、データ化すべきものは極力データ化して処理をしている。

だが、紙でなければ出来ないこと、髪の方がずっと良くできることというのがたくさんある。それを再発見させてもらった再読であった。

 

脳を「見える化」する思考ノート
脳を「見える化」する思考ノート
著者:午堂 登紀雄
出版社:ビジネス社
出版日:2008-08-28
価格:¥ 1,365
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岡本敬三氏の「根府川へ」を読了。

実は先月からこの岡本敬三氏主宰の小説講座を受講するようになった。つまり僕にとって、岡本敬三氏は小説の師匠になったということである。

誠に申し訳ないことに岡本敬三という小説家のことはそれまで全く知らなかったので、早速アマゾンで購入して読んでみた。

この「根布川へ」は、3つの短編で構成されている。「日々の余白」、「根布川へ」、「無言歌」の三作である。

この三作は連作ではないが、時系列に沿って物語が緩やかに繋がる形を採っており、共通する世界観として最初に心に浮かんで来た言葉は「疲弊」と「透明」、そして「憐憫」であった。

最初の物語「日々の余白」では企画・編集を生業とする企業に勤め、奥さんもいて仲良くセックスしたりしていた主人公は、二作目「根布川へ」では既に離婚して5年を経ており、仕事も「詐欺」的な商売に身を染めている。そして三作目「無言歌」では主人公はチェーンの立ち食い蕎麦屋の店員として働いている。

3つの作品の中で作者は徐々に老い、妻との生活を失い、そして仕事的にも転落しつつある。その老いっぷり、失いっぷり、転落っぷりがとてもリアルで切なく、でも同時に妙な透明感が作品全体を包み込んでいて、さらに物語全体の枯れ具合がとても寂しくて、そこに思わず憐憫を感じさせられる。

「もっと力を込めて生きようよ」、「もっと頑張ろうよ」と思わず声を掛けたくなるのだが、主人公はきっと頑張るには疲れ過ぎているし、そしてもう希望を失い、老いてしまっているのだろう。

冬の弱々しい晴天の太陽みたいに、はかなく弱々しい世界観は、僕がこれから脚を踏み入れていく世界であることは間違いないのだ。

でも僕自身は、まだもうしばらく、この世界には脚を突っ込まないように、最大限の悪あがきをしようと思っている。

 

根府川へ
根府川へ
著者:岡本 敬三
出版社:筑摩書房
出版日:2003-10
価格:¥ 1,890
ランキング:581498位
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渡辺久信氏の「寛容力 〜 怒らないから選手は伸びる 〜」を読了。

非常に面白く、勉強になる本だった。渡辺久信氏といえば、清原、秋山、工藤らと、西武ライオンズの第二期黄金期の中核を担った豪速球エースピッチャーであり、昨年は埼玉西武ライオンズの監督として、就任一年目にして日本一を達成した名リーダーでもある。

この本を手に取るまで、渡辺久信氏の印象は、恐らく多くの日本の平均的野球ファンの方々と同じようなもので、「若い頃は『新人類』とか騒いで工藤とテレビでばか騒ぎしたりして、最初は豪速球でビュンビュン三振を取って活躍してたけど、あまり長い間活躍しないで、いつの間にかすーっと消えちゃったと思ったら、去年突然西武の監督になって、いきなり日本一になって、大したものだと感心した」というものであった。

そしてさらに日本一になった年のオフにこうして本まで出版してベストセラーになってしまったのだから、まさに大活躍の一年だったのだろう。

さて、前置きが長くなったが、本書は著者渡辺久信氏の反省を振り返る自伝であると共に、現代の若者をいかにまとめ、引っ張っていくか、一昔前と何が違っていて何が違っていないのかを簡潔かつ的確にまとめた、マネジメント指南書でもある。

現代の若者はひと昔前までと違い、子供の時代に怒られ慣れていない。だから、頭ごなしに怒ってしまうと「怒られた」という事実だけによって若者は萎縮してしまい、指導者に近づいてこなくなってしまうと渡辺氏は説く。まさにその通りなのだ。僕は渡辺氏より4歳年下だが、今の若者は、叱ると本当にあっけないぐらい見事に凹むのだ。そして凹んだまま復活しないことが多い。

相手のレベルまで目線を下げ、そして何が問題だったかを考えさせ、答えを導くのを手伝う。これが今のマネジメントに求められるアクションである。

「そんな面倒なことやってられるか。自分だってガンガン殴られて鍛えられたんだ。そんな根性じゃ一人前にはなれない」と吠えるのは簡単だ。だがそれでは若者はついてこない。そこがいま、野球の世界だけではなく、ビジネスの現場でも大きな問題になっていて、だからこそこの本が売れるのだ。

何故そうしなければいけないのかを納得したときには、その答えを導き出す方法を考える能力は今の若者は昔の若者より優れている。渡辺氏はそのようにも説明している。この点も大いに頷ける。彼らは論理的に納得しないと動こうとしない。だからこそ「いいから黙ってやれ」ではダメで、組織としての必然性、この行動を取った結果何が変わるか、変わった結果どうなるかを相手が納得するまできちんと説明し、相手の話も聴く必要がある。

若い頃は感情の起伏が激しくリーダータイプではないと思われていた渡辺氏がどうしてこのように若者の心を掴めるようになったか。そこには日本のメディアではほとんど取り上げられなかった、台湾球界での選手兼コーチ時代の苦労があったようだ。

西武からヤクルトに移籍して一年後、渡辺氏は現役を引退して台湾に渡り、投手コーチに就任する。ところが台湾リーグのレベルが低く、渡辺氏は何故か現役復帰させられエースとして18勝を上げ、最多勝を獲得してしまう。しかし彼はその一方でコーチとして、通訳もいない中、自らのピッチングをお手本にして若手を身振り手振りと片言の台湾語で若手を育て、そのやりがいに目覚めたという。

また、2年間の台湾球界を経験した後は3年間野球評論家として12球団をくまなく観察して回り、さらにその後は西武の2軍コーチ、そして2軍監督として、若手の育成を担って来た。

そんなキャリアを積んで来た渡辺氏だからこそ、独自の若手育成法を確立し、就任早々若手中心のチームを一年目から日本一に導くことが出来たのだろう。

スポーツ選手の自伝は時として自らの体験と周囲の人間関係ばかりが羅列されてしまって汎用的ではないこともあるのだが、本書はなかなか論理的で本としてもストーリーがしっかりしていて面白く、しかも勉強になった。なかなかの名書だと思う。

 

寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~
寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~
著者:渡辺 久信
出版社:講談社
出版日:2008-11-11
価格:¥ 1,260
ランキング:15339位
おすすめ度:
在庫状況:在庫あり。
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