Book Reviewに関するエントリー

51TJFN5W9TL.jpgブックレビュー2010年の3冊目は桑原正守氏著、「世界一のセールスマスターが明かす 売れまくりの法則」を紹介しよう。

桑原正守氏の著書を読むのはこれが二冊目。ちょっとしたご縁で同氏の講演を収録したDVDを見る機会があり、なかなか良かったので興味を持ち、著書を古い順に読んでいるところ。

ちなみに一冊目は「絵に餅を描け」。

今では経営コンサルタントという側面が強い桑原氏だが、自身の出身がフル・コミッションでのカリスマ営業マンということもあり、多くの営業関係の著書や教材の開発も手がけている。

そして僕自身も営業出身ということで同氏には近しいものを感じているのだが、本書もなかなか面白かった。

厚さ1cmもない本で、しかも厚手のコート紙に刷られていて、しかも見開きの片側はイラストなので、本当にあっという間に読めてしまうのだが、こういった本はさらっと読んだだけではなかなか深い部分にまで言葉が響いてこないものだ。本書を手にした人のうち、自身の営業成績を何とかしたいという人は、一度読んで終わりではなく、本書から学んだ点が実践できるようになるまで、繰り返し読み返すことをお勧めする(著者は『6回は読んでください』と言っている)。

さて、本書のタイトルは「売れまくり」の法則である。売りまくりではなく売れまくりである点がとても重要である。

著者が指摘するように、20世紀の営業マンは製品が良ければ売れたかもしれない。だが、21世紀の入り、日本にはモノが溢れ、どの製品を買ってもそこそこモノは良いという時代になった。

だからこそ、営業マンは、ごり押ししてもお客さんは嫌悪感を抱くばかりで売れるようにはならない。いかにお客さんに選ばれるようになるか、つまり「売りまくる」のではなく「売れまくる」ようになるかを突き詰めると、実は人間の根本からの実力、『人間力』を鍛えなければならない、という、なかなか奥が深い話になって行く。

マスター営業マンとヘボ営業マンの思考パターンの違いという形で対比しながら話が展開するが、象徴的なのが、ヘボ英御マンは「成功の反対は失敗だ」と考え、失敗しないように生きるのに対して、マスター営業マンは「成功の反対は平凡だ」と考え、リスクを取ってでも新しいこと、大きなことにチャレンジしていくという対比は、なかなか見事だし、実際その通りだろう。

カリスマ営業マンの説法というと、精神論、根性論のオンパレードと警戒する人もいるかもしれないが、桑原氏の導きはまさその正反対で、とても分かりやすくしかも論理的に、どのように人間力を上げていくかを導いてくれる。

あくまでも入門書的位置づけで、しかも半分とイラストなので、上級者向きの本でないことは確かだが、営業の仕事でこれから生活していこうとしている若者や、自身の成績が頭打ちになっている中堅営業マン、それにフリーで仕事をしている人なんかにも読んでもらうと勉強になる点が多いと思う。

精神力や根性論ではないと書いたが、成功するためには強い心とやりとげるための圧倒的な熱意は絶対に必要だ。そこは勘違いしてはいけない。

次の本を手に取るのが楽しみだ。

 

世界一のセールスマスターが明かす 売れまくりの法則
桑原 正守
ビジネス社
売り上げランキング: 115860
おすすめ度の平均: 4.0
3 成果にこだわる一冊
5 悪習慣を変えるきっかけになるはず
2 カリスマですが・・・
3 新人セールスマン向け
5 この本は一体・・・
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2010年2冊目のブック・レビューはジョー・ヴィターレ氏著、「宇宙スイッチ」を紹介したい。原題は"The Attractor Factor"、翻訳は住友進氏。

そもそも「宇宙スイッチ」という書名だけでは、一体何の本なのか、小説なのかエッセイなのか実用書なのかも分からないだろう。そこでサブタイトル「望むものすべてにたちまちつながる究極の5ステップ」を見て、ああなるほどこれは自己啓発本なのだな、と分かるという寸法だ。

今まで自己啓発本はほとんど日本人が書いたものばかり読んできたのだが、本書はイタリア系アメリカ人の著者によって書かれているせいもあってか、あらゆる意味で日本型自己啓発本とは異なっており、その点かとても新鮮で面白かった。

日本型の自己啓発本の多くは「粘り強く継続される努力」が大前提となっていることが多いが、本書は努力という観点からはまったく書かれておらず、むしろ即物的といっても過言ではない内容となっている。

著者が謳う「望みがかなう5つのステップ」は以下のとおりである。

1. 「自分が望んでいないこと」は何かを知る

2. 「自分が望んでいること」は何かを知る

3. 「自分の意志」をはっきりさせる

4.「すでに望みはかなった」と感じる

5. 宇宙にすべてをゆだねる

以上である。この項目名だけを見て、著者が何を言おうとしているかが理解できるだろうかというと、それは無理だと思うので、興味を持った方は一読してもらうしかないのだが、要は「やりたくないこととやりたいことをしっかり認識して、どうなりたいかという意志を持つ。そしてその意志はもう叶っていると強く信じるとともに、その結果は宇宙に委ねてしまい、じたばたしない」という感じだろうか。

面白いのは、努力もしないし強く願いもしないという点だ。望みが叶うかどうかは「宇宙」が決めることなので、叶わなかったらそれは宇宙が叶うべきではないと判断した結果だから受け止めろ、という流れになる。なんか日本のおみくじみたいだ。

意志を決めてその願いはもう叶っていると感じることで、著者が言う「宇宙スイッチ」が作動し、その願いは次々に叶っていくという部分だけを読むと、正直あまり信憑性がないというか、半信半疑という感じになってしまうが、どちらかというとその前段階が重要で、「臨んでいない結果に物事が落ち着いてしまうのは、本当はその結果を心の奥底では臨んでいるからだ」というパラドックスについては、最近日本でも言われるようになってきているが、真実だと感じる部分があるし、「望んでいいる結果以外は実現しない」という言葉にもうなずく部分が多々ある。

ただ、結局最後は「奇跡」とか「スピリチュアル」という言葉に落ち着いてしまう部分があり、こうなってきてしまうと、正直「信じるものは救われる」なわけで、もはや自己啓発とは言えない世界に突入してしまっているような気もしなくはないが、日本人の「努力型自己啓発」とは対極的な考え方が気持ち良いし、これもまた真だなと感じた。

それにしてもイタリア系アメリカ人が書くと、「望み」はここまで即物的に本に書いて良いのかと呆れるやら笑っちゃうやらで、本筋とは関係ない部分でも楽しめた。どんな風に即物的かは読んでのお楽しみだが、一つだけ紹介すると、多額の報酬とともに自伝の執筆を不本意ながら引き受けた著者が、他の仕事を優先したいと願っていたところ、その報酬を支払った依頼者が逮捕され投獄されてしまったため、お金は返さなくて良くて、しかも執筆は本人の出所後でも良くなって、「望みがかなった!」「軌跡だ!」となるわけである。

日本でこんな書き方をかたら袋叩きに遭うと思うのだが、イタリア人てのはやはりこういうものなのだろうか(^_^;)。

望みをかなえるために考えるべきことにぐっと幅が出来たという意味で、とても意義深い一冊であった。

 

 

宇宙スイッチ

 

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2010年の1冊目、澤上篤人氏著、「投資は世のため自分のため」を読了。

以前読了した勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」や堀江貴文氏の「夢をかなえる打ち出の小槌」などに長期ローンを組んで家を買うことの危険さがあれこれと主張されていて、勝間氏の本ではその代わりに「投資信託等による長期安定投資を行うべし」と書かれていたのだが、本書では、より具体的に長期安定投資について簡単に分かりやすく説明してくれている。

著者の澤上篤人氏は日本における長期運用型独立信託の元祖「さわかみ投信」を率いるさわかみファンド主催者であり、いわゆるこの道のカリスマである。

本書は見開き1ページを1テーマとして挿し絵も挿入された「絵本」という体裁を採っている。もちろん子供や若者も想定読者になるだろうが、金融リテラシーが低い(僕のような)日本の大人にとっても、長期運用の意義や効果が非常に分かりやすく書かれた素晴らしい本だと感じさせられた。

「絵本」という体裁のためか、一部理想論が勝ち過ぎている部分もなくはないのだが、本書には以下の3つ、とても優れた点があると思う。

1. 投資のスタートは「自分だけが勝つ」ではなく、「長期運用型投資で経済のパイ自体を大きくして『みんなで勝つ』ことが必要だと説いている点。

2. 「みんなで勝つ」という主張自体は勝間氏の本と同じだが、具体的に長期運用型投資を国民が皆で行うとどのようなメリットが日本にもたらされるかについて、とても分かりやすく、しかも正しい方向に(と少なくとも僕には思える方向に)導いてくれている点。

3. 「投資」「運用」という行為自体に不慣れで警戒感を持つであろう読者の心理を確実に把握したうえで、それを安心ささるような解決方法について具体的に書かれている点。

長期ローンを組んでのマイホーム取得が現代においてどのようにリスクが高いのかについても、「勿体ない点」と「危険な点」に分類したうえで解説されており、とても分かりやすいうえに説得力もある。

いずれにしても、日本はバブル崩壊と経済の成熟化が同時にやってきてしまったため、人々はずっと不況が続いていると勘違いしているが、実は欧米もすでに通過した市場の成熟化という洗礼を受けているため、二度と高度成長時代のような雇用体系や社会保障体制には戻れないのだという主張は実に正しいし、その成熟化した市場で自分がどうやって生き残っていくべきかについて、真剣に考え自分の人生の舵取りをしていくべきだと強く感じた。

澤上氏は他にも何冊も本を書いているようなので、それらも一読してみようと思う。新年から素晴らしい本に出会えたことに感謝である。

投資は世のため自分のため

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村上春樹氏著、「回転木馬のデッド・ヒート」を読了。

この本は10年以上前に購入し、何度も読み返している。今回久し振りの再読。

今年後半は実用書ばかり読んでいて小説やエッセイを読んでおらず、年内になにか一冊小説を読みたいと思い、この短編集をチョイス。僕は村上春樹氏は短編より長編が好きなのだが、この短編集は好きだ。

で、「小説」書いてしまっているが、実はこの短編集は厳密な意味では小説ではない。なぜなら、ここに書かれている話は実話ばかりだからだ。

村上春樹氏が周囲の人から聴いたちょっと不思議だったり日常の中の非日常だったりした話をまとめたもので、彼自身もこの短編集は「正確な意味での小説ではない」と述べている。

従って、この本にまとめられている8つの物語に出てくる「僕」は小説の主人公としての架空の「僕」ではなく、著者村上春樹であるというのも、実はとても特殊かつ貴重なものである。

村上春樹氏の短編はどれも長編と比較すると物語全体が静寂に覆われたように静かなものが多いが、この短編集もやはり全体的にとても静かな物語が多い。

8編のうち、特に気に入っているのが35歳の誕生日に自分の人生の「折り返し地点」はここだと決める男の話、「プールサイド」。最初に読んだ時僕はまだ35歳になっていなかったが、今こうして自分が40歳になってから読むと、以前とはまた違った感慨があるものだ。

久し振りに小説を読んで楽しかった。来年は実用書ばかりではなく小説ももっと読もう。

 

回転木馬のデッド・ヒート

 

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堀江貴文氏著、「夢をかなえる「打ち出の小槌」」を読了。

ホリエモンが書いた自己啓発本である。勝間和代氏、小飼弾氏らも含め、僕と同世代のこれらの人々は強い危機感を持って現代日本の若者にエールを送っている。この本でも著者ホリエモンは「日本の若者よ目覚めよ」と檄を飛ばしている。

日本の若者に元気がないことは今更言うまでもないことで、その状況を何とかしようとい意気込みは、残念ながら政治家や大企業の経営者達から見て取ることができないことも周知の事実。

「格差社会」とは実は「世代間ギャップ」という言葉を口当たり良く表現しているもので、「世代間ギャップ」とは、高齢者ほど金を持っていて若年層が持てないという状況を分かりにくくぼかしているに過ぎない。

要は若者が従来得られてきた権益を奪うことで、一定以上の年代の人々が「滑り込みセーフ」となるよう、政治家や財界の人達は総出で突っ走ってきているのだ。

だから、若者の困難な状況を根本的に変えようという動きは、年配の人々からは出てこない。当たり前のことだ。

そんな状況を「なんとかせねば」と声高に叫んでいるのが、僕らと同世代の成功者である。彼らはバブル前の既得権益とは無縁に自分達の力で成功しのし上がった「ポスト・バブル」な世代で、彼らは若者側に立っていると自覚し、反発する力も失ってただ萎縮するばかりの若者達を何とか奮い立たせようと必死だ。

そしてこの本もまさにそういったテーマで書かれているので、本来僕のような40歳の人間が読むためのものではなく、10代、20代の若者がターゲットとなっているものだろう。

コンセプトはとても良い。上述したとおり、自らの成功体験を伝え、既存の価値観に縛られるなというエールはとても共感できるし、「お金より信用を貯めろ」という主張ももっともだし僕自身も見習うべき点も多い。

だが、その一方で本書はあまり親切な本ではない。精神論が大半を占めてしまい、どうすればホリエモンのように生きられるのか、彼がどうやって成功したのかに関しての具体的なアドバイスがないのが残念だ。勝間氏の著書が参考資料やウェブサイトなどの具体的に役立つ事例を山ほど用意しているのとは対照的で、果たして本書のターゲット読者であろう若者達はホリエモンの主張を目の当たりにして、最初の一歩を踏み出すことができるだろうか。疑問である。

あと気になったのが、本書では必要以上に極論に主張が触れてしまっているように感じられる点が散見されることだ。「フェラーリを最近売った」とか「毎晩深夜まで会食・飲み会が続く」とか「アークヒルズクラブにTシャツで入ったのは私だけ」などの記述は、自慢がしたいのか他人に勇気を与えたいのかがよく分からなくなってくる。

ただ、ホリエモンの頭の回転の速さや攻撃性などの魅力もたっぷり詰まっていて、とにかく勢いがあることは間違いない。僕は彼のブログもTiwtterもフォローさせてもらっているが、彼の魅力は粗削りで極端ながら、頭の良さとその回転の速さ、そして勢いだと常々感じているのだが、本書にもそれは見事に再現されている。

ホリエモンは最近著書を出版しまくっているが、もう何冊か読み続けてみようかと思う。良くも悪くもホリエモンという感じの本だった。

 

夢をかなえる「打ち出の小槌」

 

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コグレマサト + いしたにまさき両氏著、「ツイッター 140文字が世界を変える」を読了。

ちなみに皆さんはTwitterを「ツイッター」と発音しているだろうか、それとも「トゥイッター」と発音しているだろうか。僕は後者なので、「ツイッター」とカタカナで書かれると軽く違和感があるのだが、まあそんなことはどうでもいい。あと、Macの「かわせみ」で「ついったー」と打って変換すると、最初の候補に「トゥイッター」と出た。それもどうでもいいことだ(^_^;)。

僕自身がTwitterをかなり積極的にやっている人間なので、本書に書かれていることは概ね理解できるし、広瀬香美と勝間和代が「ヒウィッヒヒー」で大爆発した日はモニターの前にいたので、あの夜のドライブ感がまざまざと蘇り心が熱くなった。

本書ではTwitterの魅力についていろいろと書かれていて、どれも納得なのだが、僕が個人的にTwitterは良くできているなあと感じるのは、設計者が意図したかどうかは不明だが、非常に荒れにくいメディアであるという点が挙げられるだろう。

Twitter開始当初は「いずれTwitterも荒らしに荒らされて芸能人や有名人は皆退場してしまうだろう」と思っていたのだが、これがなかなかそうならない。どうしてそうならないのかを考えてみたところ、以下の3つの点により、Twitterは「荒れにくいメディア」として成立しているのだと感じた。

1. 荒らし行為を行った場合、被害者が相手のIDを容易に特定できる。

荒らし行為を行っている人間がいた場合、その人物の呟きの履歴は他のユーザーからも簡単に見ることができてしまう。IDでTimelineを検索されて発言履歴を見られてしまうというのは、荒らし行為を行っている人間からすると、相当恥ずかしいことなのではないかと思うし、そのような人物は誰からもフォローしてもらえないだろう。

2. ブロックの仕組みが良くできている。

荒らし行為を受けた場合、被害者は加害者のIDをブロックすることができるのだが、ブロックをすると、被害者から加害者が見えなくなるだけではなく、加害者から被害者も見えなくなってしまう仕組みになっている。つまり、荒らしやストーカー的行為をすると、その相手を見失ってしまうようにできている。これはとても良くできていると感心させられる。

3.  Retweetで全ユーザーに晒されてしまう。

最近ホリエモンがRTで自分に対する批判的意見を晒しているが、まさにこれが最大の荒らし防止効果を持つのだと思う。たとえばストーカー的発言をする人がいたとしても、被害者はその発言を発信者のIDをつけた状態で全Followerに向けてRetweetすることができる。こういう状態だと、一方的な暴言や荒らし行為などはほぼ不可能になる。まさに抑止力である。

あとは、上記の仕組みの問題以外にも、ユーザーの年齢層が高目であるとか使い始めの敷居が高いためネットリテラシーが相当ある人が多く集っているなどの、人依存的に「荒れにくい」環境が作られているという事実もあるだろう。

僕自身もTwitterではほとんど嫌な思いをしたことがない。日本ではネットと言えば匿名、匿名と言えば陰湿な荒らしや炎上といった負のイメージがつきまとうが、Twitterに限ってはなかなか平和な状況が続いているようである。

2009年に大ブレイクしたTwitterが2010年にどのように進化していくか、とても楽しみである。今朝も5時過ぎに起きてTLを覗いたら、とある日本人DJがUstreamを使って2000人以上を集めてライブをやっていた(トブさんありがとうございました)。またしてもすごい瞬間に立ち会ってしまったと感動したのだった。すごいことがどんどん起こるねー(^-^)。

ちなみに私のTwitterはこちらです。フォローよろしくです!

ツイッター140文字が世界を変える

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野口悠紀雄氏著、「「超」整理法 — 情報検索と発想の新システム」を読了。

先日読了した「iPhone情報整理術」の中で、「いまだに「超」整理法を上回る整理術は見当たらない」と著者が述べていたのが本書を知るきっかけだった。

そんなに素晴らしい整理術なら是非自分自身の情報整理術にも取り入れてみたいと思い手にとり読んでみた。

なかなか面白い部分もあったが、正直ちょっと自分には合わないと感じる部分もあり、また本書が発行されたのが1993年と古いため、時代に合わなくなっている部分も多々あった。その辺りを簡単にまとめてみよう。

まず、肝心の整理術としての「超」整理法の完成度についてだが、個人的には「イマイチ」の感が拭えなかった。ちなみに「超」整理法とは、書類を片端からA4サイズの封筒に入れて本棚に左から順に封筒を並べ、中から書類を出して使ったらその書類は一番左に戻すという行為を繰り返す手法である。

これを繰り返していると、しょっちゅう使う書類はいつも左側にあるので探しやすく、使わない書類は徐々に右に寄っていくので、一定期間使わない状態が続いた書類は捨てるか、またはずっと保存する「神」書類になるかの判別をしていくというもの。

「書類は分類するな」という著者の考え方には100%同意するが、書類を未分類の状態で片端から封筒に放り込んでいくという方法はちょっとどうだろうという感じがした。

僕自身仕事の書類は僕の心の師である吉越浩一郎さんの「デッドライン仕事術」で紹介されていた、書類を仕事単位でクリアフォルダに入れ、各クリアフォルダをデッドラインの日付ごとにあらかじめ作った書類フォルダに入れて管理するという方法を採用しているが、個人的には吉越さんのデッドライン管理の法が、ちょくちょく使う書類を封筒に入れるという超整理法よりも優れていると感じた。

ポイントは3点。

1. 仕事単位でクリアフォルダに格納するので、いちいち封筒から書類を出さなくても内容が判別できるし、クリアフォルダも書類フォルダも一度用意すれば継続的に利用できて経済的である。備忘録をクリアフォルダの前面に貼り付けておくことも容易。

2. 「ちょくちょく出てくる書類」が必ずしも「今日必要な書類」とは限らないため、超整理法だと最初に出てきた書類が最初に必要な書類とは限らない。デッドライン術だと、必ずその日がデッドラインの書類が最初に出てくるので、優先順付けが既に出来ており、探す手間がない。

3. 最初に書類を格納する時に、超整理法では単に一番左に置くだけだが、デッドライン術なら格納する段階で「次に使うのはいつか」を考えてファイルするため、その時点でその仕事で次にするべきことのシミュレーションがなされており、実際に書類が出てきた時にすぐに行動に取り掛かることができる。

以上、吉越さんのデッドライン仕事術との比較で,個人的に超整理法に難ありと感じた部分を列挙してみた。

また、これは仕方がないことなのだが、本書は1993年に出版されていて、時代はまだWindows 95も出ていない時期である。本書ではWindows 3.1ではなくMO-DOSを使っての情報整理をかなりのページを割いて紹介しており、これらの部分は歴史的資料として読み物的にはとても興味深く面白かったが、2009年12月にはそういった部分は参考にはならない。

もう一点気になったのは、著者の野口氏は本業が大学教授であるため、本書の内容もビジネス的というよりは学術的であり、ちょっと読んでいてかったるい脱線やうんちくが多い。第4章と第5章は本書の内容からはかなり逸脱してしまっていて、話が若干混乱してしまっている。

というわけで、残念ながら期待していた成果は得られなった。ただ、恐らく現代において巷で流行している整理法・整理術の根底には本書が唱えた方法が流れているのではないかという気もする。吉越さんのデッドラインによる書類管理も、「分類しない」とい意味では本書の流れを汲むものだといえよう。

それにしても、1993年から2009年の間に、我々を取り巻く情報環境がいかに激しくそして不可逆的に変化したかを、本書を読むことで思い知ることができた。そういう意味ではタイムトリップをさせてもらえたことは貴重な体験であったといえよう。

 

「超」整理法

デッドライン仕事術

 

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勝間和代氏著、「やればできる — まわりの人と夢をかなえあう4つの力」を読了。

すごく良かった。とても良かった。今まで5〜6冊勝間氏の著書を読んだが、ダントツに良かった。著者の気合いが全編通じてほとばしっていて、読んでいるこちらの心にずんずん響くのだ。

そしてエピローグを読んでいて思わずホロリと涙が出てしまった。自己啓発本を読んで涙が出たのは生まれて初めてだが、それぐらいこの本は良い。

どんな自己啓発本でもそうだと思うが、心を開き、「良い部分はすべて吸収してやる」という思いで読まないと本の良さは分からない。この本はまさにその典型で、良い点をすべて肯定して自分の身にしようと思って読むと、これが本当に素晴らしい。嬉しくなってしまうほどの出来だ。

なにがそんなに良いかというと、3点。一つは「みんなで成功する」というコンセプトがとても分かりやすく、しかもこれからの時代に必要とされる形だと思われる点。

二つ目は成功に向かうための道筋が「しなやか力」「したたか力」「へんか力」そして「とんがり力」と4つのフェーズに分けて書かれているのだが、これが自身の実体験に基づき非常にリアリティがあり、「普通の人」が「とんがった人」へと変化していく過程を詳細に捉えている点。

そして三つ目は勝間氏自身がとても心を開いて、読者へと歩み寄って書かれていることが伝わる点。これは香山リカ氏の「しがみつかない生き方」への反論書であると本人が定義していることもあってか、「勝間和代だからできた」ではなく、「勝間和代でもできたのだから、皆もやればできる」という視点で全編が統一されていて、とても共感できる。

そして同時に本書は「やればできる」と訴えると同時に、「やらなければ100%できない」とも主張している。また、やったからといって誰もがテレビに出たり著書を出版できるわけではないとも断言している。だが、正しい方向に正しい手段で努力し続けることで、身近なコミュニティ、たとえば家庭、たとえば職場の自分のグループなどの中で自分を「とんがった存在」に育てることはもちろん可能だし、その小さなコミュニティの中でのとんがり力が、その外側にある大きなコミュニティに参加するための招待券となっていることも多々あると訴える著者の主張には思わず「そうだ」と応援したくなってくる。

本書の前書きと帯にあるが、いま日本全体の景気が悪く、特に若者は物心ついてからずっと日本は不景気で、将来や生き方に希望がなく、上昇思考も失われているという状態には、僕も強い危機感を感じるとともに、そんな生き方はとてももったいないとも思っている。

僕はまだ僕自身のことで精いっぱいだが、勝間氏はその危機を解決することを自らのミッションと位置づけて、全ての活動をそのミッションに連動させて活動しているのだ。これは人間の生き方として理想的であり、人として生きるからには僕自身も是非そのように生きたいと願うわけである。

勝間氏のことを悪く言う人がたくさんいることは知っているし、僕だって彼女のすべてを称賛しているわけでは決してない。だが、少なくとも彼女の本を読むことで得ることは山ほどあるし、自分自身をより強い人間に進化させるためのノウハウも詰まっている。事実僕は今このエントリーを「親指シフト」で書いているが、これも彼女の本を読んで勉強する決心をして毎日練習しているからできるようになったのであって、彼女を悪く言う人達の文章を読んでいても、あまり得られるものはないというのが印象である。

自分自身を高めたいという想いに年齢的限界はないと僕は信じている。もしあなたも心の中にそういう想いを抱えているなら、本書はあなたになにかヒントを与えてくれるかもしれない。やらなければ100%できない。でもやればできる。

 

やればできる

 

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51TKC3FBT5L.jpg桑原正守氏著、"絵に餅を描け ― 桑原流実践メンタルトレーニング"を読了。

桑原氏の最近の講演を収めたDVDをたまたま見る機会があり、同氏の熱さと内容の濃さに感銘を受け、著書も読んでみたいと思い、時系列順に読んでみるかと、同氏の最初の著作と思われる本書を選んだ。2004年発行の本なので、今から5年前のものだ。

本書はメンタル・トレーニングの本と書かれているが、実際読んでみた感想としては、自己啓発本のハシリと位置づけるのが適当なのではないかと思われる。最近勝間和代氏らがさかんに出版している、20代~30代の若者を成功に導こうという主眼で書かれるものと同様の目的を持って書かれている。

だが、桑原氏は営業出身でコンサルタントとして現役ということもあり、勝間氏や堀江氏などの著書と較べると、ずっと言葉がシンプルで強く、メッセージも単純な分強い。

もちろんメッセージが強くシンプルである分、たくさんのことを伝えることはできない。一点集中である。そういう意味で本書はとても泥臭く、現場寄りの啓発本であるのだが、本書の素晴らしい点は、シンプルなメッセージの中に、とても心に響く、強く圧倒的なものが含まれているという点だ。決して美麗な字句を用いているのではないし、高度な論理に立脚しているわけでもない。ただ響くのだ。

「目標設定ではなくストーリーを設定しろ」、「照れと落ち込みは自意識過剰の典型」、「大切なのは「自分力」。自分力は知識ではなく経験で身に付く」、「ウソは過去を偽ること、ホラは将来を宣言すること」、「三日坊主になった自分を責めるのではなく、5日目に再スタートすることに心を集中させろ。100回三日坊主を繰り返せば300日だ」などなど。

カリスマ営業マン出身のコンサルタントと聞くと、精神論を振りかざす人という印象があるかもしれないが、同氏の主張はむしろ精神論を否定し、どうすれば根性や気合に依存しないで人生を切り開いていくかというスタンスに立脚しているように感じられ、その点にとても共感ができる。

一点残念に感じるのは、「ここは大事なポイントなので後で説明します」と書かれている数箇所について、結局最後まで触れられず、項目だけが同氏が経営する会社が運営する有償のセミナーの広告に記載され、セミナーの勧誘へとなだれ込んでいってしまっている点。そのような出し惜しみをしなくても、気に入った人はセミナーに出席したり講演を聴きに行ったりする可能性はあると思うので、きっぱりと書きかけたことは本に全て出してしまって欲しかった。

細かい不満はあるものの、桑原本一冊目、なかなか気に入った。これから何冊か、時系列順に読んでみようかと思う。

なお、残念ながら本書は現在絶版となっており、新品を入手することはできないようだ。僕は図書館で借りてきたが、アマゾンにも中古が出ているようだ。

絵に餅を描け!―桑原流実践メンタルトレーニング
桑原 正守
碧天舎
売り上げランキング: 190393
おすすめ度の平均: 4.0
4 リズミカルな調子でどんどん読める、営業の魂が書き込まれた書。
5 繰り返し反復が実践力をつくる!
3 内容はいいです。
5 賛否は分かれる!!!
5 何度読んでも感動する!


 

 

 

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小谷野敦氏著、"美人好きは罪悪か"を読了。

通勤電車の中で、居眠りしているおっさんの手からするりと落っこちて床に落ちた新書を拾ってあげ,そのおっさんに返したのがこの本だった。

タイトルに一目ぼれして自分でも読みたくなり手に取ってみた。ちくま新書から出ているという点も気になった。

結果、期待していたほど面白くはなく、刺激的でもなく、全体的にはぼんやりした内容だった。今年読んだ本の中では残念ながらワースト3に入るだろう。

著者の小谷野敦とい人物に興味があったり彼の著作に触れた経験がある人が読めばまた違うのだろうが、この人に興味がない僕にとっては、この人がどのようなタイプの女性を好むかや、美人を雑誌で見つけたときにどう行動するかなどにあまり興味が持てず、従って共感もあまり覚えない。

もう少し科学的側面から男性の美人好きが分析されたり考察されたりしているのかと期待していたのだが、本書は常に著者小谷野氏の主観や好みが訥々と語られることに終始していて、まるでこれでは単なるエッセイであり、新書である必然性が感じられないし、このタイトルも「釣り」としては優秀だが、内容との乖離が大きく、結果としてあまり良いものとは言えないのではないだろうか。

ただ、同氏は知識が豊富で論点もなかなか面白いとは思うので、最初から小谷野氏の雑文、エッセイを読むつもりで手にとったならば、もう少し違う印象を受けたかもしれない。

後書を読むと、この本に収められている文章は連載であり、その連載中に同氏の母親が癌で入院したり、ご本人が結婚されたり、当初予定していた出版社から出せなくなったりと、なかなか執筆に集中できない環境だったのかもしれないと推察できる。

コンディション不良の時に書かれた本にたまたま当たってしまったのなら残念である。またどこかで巡り合った際には、ベスト・コンディションの一冊と出会いたいものだ。

美人好きは罪悪か?

 

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