Book Reviewに関するエントリー

31M6GHe2udL.jpgブックレビュー今年21冊目の読了は、佐藤可士和氏著、「佐藤可士和の超整理術」。


恥ずかしながら、実は佐藤可士和という人物のことは去年までまったく知らなかった。

楽天のロゴを作ったのがこの人だと知り、名前が変わっていることもあって印象に残っていたのだが、今年に入って僕の周囲でやたらこの人の話が出るようになってきて、「これはひょっとして何らかのセレンディピティか?」と感じていろいろ調べていたところ、この本に巡り合った。

情報の整理は僕のライフワークなので、この「超整理術」というタイトルに強く惹かれ読んでみた。結果、すごく良くて魅力的な本なのだが、心の中にぞわぞわしたもどかしさも残ってしまい、消化不良も抱えることとなった。今この原稿を書きながら、自身の消化不良が何なのかを整理してみようと思う。

まず、本書の良かった点は大別して3つだ。

一つは「整理」という言葉を単に身の回りの整理整頓という意味だけに使わず、「空間の整理」、「情報の整理」、「思考の整理」とステップアップして説明しており、最終的には生き様の部分にまで視野を広げることに成功している点。

二つ目は、著者が仕事を通じて得た情報整理、思考整理のプロセスが、実例と共に詳細に書かれていて、非常にリアリティーに富むものに仕上がっている点。実際のクライアントとのやり取りと、その結果としてのデザインやロゴを見せられると、まるで自分が大きな仕事をやり遂げたかのような達成感を共有することができる。

そして三つ目は、「整理」と「デザイン」、「整理」と「クリエイティブ」といった、一見無関係とも思われるキーワードの結びつきの説明により、「整理」は実はどんなキーワードとも結びつくことができる、スーパーワードであることに気づかされた点。

例えば「整理」と「ランニング」。この二つのキーワードには接点はないと今までの僕なら考えたと思うが、本書を読了したおかげで、「何のために走るのか」、「どれだけ走るのか」、「走った結果どうなりたいのか」、「どのように走るのか」などのキーワードを接続ポイントとして情報と思考を整理することで、自分自身のランニングに対するスタンスや哲学を構築できるという武器を持った。これはとても大きい。

そしてもどかしさについてだが、整理術のステップが上がって「思考の整理」へと向かって行くにつれ、どうしても著者の事例紹介の部分に割かれるスペースの比率が大きくなり、どうやってこその整理術を獲得できるのか、というノウハウが、暗黙知になってしまっている点なのだと、これを書いていて気づき始めた。

れと同時に、このレビューを書いたおかげで、そのような「思考の整理」については、机の上を整理するとか本棚を整理する時のような明確な方法論というのはなく、著者自身が身をもって体感したリアリティーで示すことしかできない種類のものなのかもしれないと思うようになってきた。

いずれにしても、従来の「整理術」本とはまったく違うアプローチの、とても斬新でエッジの利いた本である。ちょっと時間を空けてもう一度読みたい、いまはそう感じている。

佐藤可士和の超整理術

 

 

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佐藤 可士和
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 2164
おすすめ度の平均: 3.5
1 この本の内容を超整理して欲しい
4 整理の先にある「本質」
3 デザインが好きな方には良し、ビジネス書としては足りないかな
5 仕事を進める手順書として
4 仕事は整理から始まる
Amazon.co.jp で詳細を見る
512b0Fpkh1L.jpgブックレビュー2010年20冊目は茂木健一郎氏著、「脳を活かす生活術」を紹介しよう。

茂木健一郎氏はテレビへの露出が強い方のようだが僕はテレビを見ないのでこの人のことは、「テレビに出てる脳科学者の人」ぐらいき知識しかなかった。

本書は能に関する専門家としての立場から、生活すなわち人生をどのように豊かに実りあるものにしていくかという観点から書かれている自己啓発書である。

読み始めてすぐに、何だか読みにくいぞ、と感じたのだが、やがて理由が分かる。脱線が多く、しかもその脱線が著者の自伝的エッセイになっていて、本題から微妙に外れそうで外れない、すれすれのところまで行っては戻ってくる、という形を繰り返しているのだ。

もちろん著者は意図的にそのように構成しているのだ。ならばということで、読み方を自己啓発書的読書からエッセイ的読書に変えたところ、楽しく読めるようになった。目的的に読むと混乱する読書も、楽しみとして読めば不安も不満も出てこないケースというのがある。

そしてもう一つ感じたのが、本書は「脳」が全てのキーワードになってはいるものの、実はそのキーワードを取り除いてしまうと、巷に溢れている自己啓発書が言っていることとほとんど同じことを繰り返しているに過ぎず、期待していたほどは新しい発見がない。

例えばセレンディピティについては勝間和代氏の著書に詳しいし、セルフ・ブランディングで「個人のGoogle時価総額」を上げることについても、つい先日佐々木俊尚氏の著書で読んだばかりだ。

あと難を感じたのは、本書で述べられている脳の働きのうち、どこまでが科学的に立証されていることで、どこからが著者の想像で書かれていることなのかが素人には判断できないという点がある。著者は専門家だから区別できているのだろうが、一般人にはその区別がつかず、若干混乱することになった。

もちろん全体を通して楽しめるし寄り道ついでに語られる著者の個性が濃くて興味深くはあるが、どうも「脳」というキーワードに無理やり結びつけて語っているように感じられなくもない。

というわけで、自己啓発書として読むには、それぞれの項目に対しての深堀も少なく洞察も軽いので消化不良となるように感じた。著者のエッセイ&自伝として読むと、著者に興味がある人は楽しく知識を得られて良いのではないだろうか。

41uddK51VSL.jpgブックレビュー2010年の19冊目として、佐々木俊尚氏著、「ネットがあれば履歴書はいらない − ウェブ時代のセルフブランディング術」を読了。

良い。非常に良い。頭の中にはすでにあったものがまだ形をなさずぶよぶよしていたのが、本書のおかげでスッキリ腑に落ちた。

ネットはバーチャルな匿名世界で現実世界とは繋がっていない。かつて日本ではそのような考えが一般人のネットにおける活動の主流だった。

だが、長引く不況と終身雇用制の崩壊により、社員という雇用形態は縮小の一途を辿り、企業は必要最小限の人員以外は雇用せず、外注を使って処理するようになってきている。

その結果、多くの学生や若者が卒業しても職に就くことができず、結果として世代間における貧富の差が大きな問題となりつつある。

そんな時代には、自分で自分を演出して専門的知識を磨く「職人」としての働き方が求められると著者は説く。そして自分自身をいかに取引先や就職先企業などにアピールするかを考えた時、本書が導く「セルフブランディング」が必要となる。

ネット上での個人の活動を「匿名でこっそりやるもの」から「実名または固定されたニックネームで継続的に行うもの」へと転換させ、ネット上での自らの発言を他者に対するアピールの手段として使おうというのが本書の主題である。

Twitterやブログで日々情報を発信している人の多くは、本書で取り扱っている題材については無意識または意識的にすでに実行している方が多いと思うが、まだ実践できていないという人は、是非本書を読み、まずは自分のブログを立ち上げ、TwitterのIDを取得して呟いてみて欲しい。

一つ重要な補足がある。Twitterやブログがあればなんでもかんでも自己プロデュースになるかといったら決してそうではない。それらの場で「いかに有益な情報のアウトプットができるか」がセルフブランディングの肝である。Twitterで毎日友達とお喋りばかりして、ブログに仕事の愚痴ばかりを垂れ流していては、セルフブランディングどころか逆効果である。日々自分を磨き知識を身に纏うことが大前提である。

人の名前を検索エンジンで検索してその人物のネット上の情報を探す「エゴサーチ」をされることを想定して、ブログ、Twitterをはじめ、オンライン名刺"Card.ly"、Tumblr、delicious、はてななどをどのように活用すべきかを、一つ一つ丁寧に導いてくれる。

僕自身は1995年以来一貫して実名での活動を続けてきたが、これからはまさに実名の時代に突入することになるのだろう。Twitterやfacebookなどの活用が進めば、活動拠点としてのウェブの必然性は増すばかりで、その活動を匿名で行うことに意味はなくなりつつあるのだろう。

10年後には、ネット上の活動は誰もが実名で行うことが当たり前になっているかもしれない。そんなことを予感させる良書であった。

ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)

 

 

佐々木 俊尚
宝島社 (2010-01-09)
売り上げランキング: 2864
おすすめ度の平均: 4.0
4 インターネットとセルフブランディングについて簡潔にまとまっています
4 ソーシャルメディアを利用したセルフブランディングの方法
4 直近の未来での処世術
5 ネットでのセルフブランディングを実例を交えて説明した良書
3 視点が斬新なセルフブランディングの手引書


51gMG04gSSL.jpgブックレビュー2010年の18冊目として、大竹のり子氏著、「知っておきたい外貨・FXの常識」をお届けしよう。

初心者向けにシンプルかつ分かりやすく外貨に関連する金融商品の特徴が説明されていて非常に分かりやすく、勉強になる。

もともと勝間和代氏著「お金は銀行に預けるな」で本書を参考書として推薦していたため読んでみたのだが、初心者向けの「説明書」としては必要十分ではないかと思う。

外国為替の仕組みから円高・円安とは何かというような全般的な項目から、日本で積極的に売買されている外貨の種類の説明、外貨預金とFXの違いとその仕組み、その他の外貨金融商品の説明とい流れで、ほぼ初心者向けの疑問は網羅している良書であろう。

だが、本書についても、先日紹介した「10万円から始める投資信託入門」同様、幾つか注意点がある。投資を行う人は自己責任でというのは常識ではあるが、改めて確認しておきたい。

1. 時代は激変している

本書は冒頭で「円安」対する危機感を示すことから投資の重要性に関する説明をスタートしている。そう、この本が書かれたのは2007年、つまり今回の金融危機よりも前のことである。当時の円 = ドルレートは120円台、そして円 = ユーロレートは何と160円台だった。

ところが今では円 = ドルレートは80円台、円 = ユーロレートは120円台にまで激変しており、2007年当時とは、市場を取り巻く環境は大きく変化してしまっている。円安が進むという前提で書かれている箇所を、そのまま鵜呑みしてしまうのは非常に危険なことなので、注意しておくべきだろう。

2. 為替にテクニカル分析が有効か?

本書ではごく手短にテクニカル分析について説明しており、特にオシレーター系の指標を紹介しているが、僕は個人的に外為市場にはテクニカル分析は通用しないと思っている。また、株式のテクニカル分析においてさえ、オシレーター系指標はあてにならないという印象を持っているため、テクニカル分析に興味を持たれた方は要注意だろう。

3.  投資スタンスに関する導きはない

本書では、どのような金融商品があって、それぞれどんなメリット・デメリットがあるかについては説明されているが、それらの商品をどのような戦略で購入すれば良いか、株や債券、投信などとどのように組み合わせるべきかという、投資家の基本スタンスに関する導きは何もない。

つまり目的がないまま方法論だけが語られているため、この点には十分注意が必要だろう。小額でいろいろ試しながら勉強をして、その間にポートフォリオを作ろうというなら良いが、余裕資金を全額FXに突っ込んでしまうようなことは絶対避けるべきだろう。

というわけで、基礎を学ぶという意味では良書だと思うし、必要以上にFXを煽るようなことを書いていない点好感が持てるが、注意すべき点も多いと感じた。

しかしこの手の金融商品本ほど激しく変化している分野はないのではないかと感じている。最新情報を得続けることが必要だ。

あと、本書はサブタイトルが良くない。「小額投資で大儲けする人がいるって本当なの?

このサブタイトルは余分だろう。まあ、売るために仕方がないのかも知れないが、こういうことを書くから、FXは濡れ手に泡だというような間違った印象が広がってしまうのだ。

知っておきたい外貨・FXの常識―少額投資で大儲けをする人がいるって本当なの? (なるほどBOOK!)

 

 

 

大竹 のり子
西東社
売り上げランキング: 132192
おすすめ度の平均: 3.5
4 外貨を始めようと考えている方にはいいかも
2 買ってまで読むには内容不足
1 FXがどんなものかはわかると思います
4 外貨預金やFXの基本的な仕組みを知る本としては最適
4 初心者向けの最初の1冊として良いと思う。
Amazon.co.jp で詳細を見る

51DNTX5CNKL.jpgブックレビュー、2010年の17冊目はマイク・マクマナス氏著、ヒューイ陽子氏訳、「ソース あなたの人生の源はワクワクすることにある」を紹介したい。

自己啓発書は巷に溢れているが、この「ソース」はあらゆる意味で革命的な自己啓発書だ。あまりにも革命的であるため、読んでいる最中に何度も身体が痺れて電気が走るようなショックを受けた。

このような経験は過去にあまりなかったのだが、それだけ素晴らしい論理だし、何よりも読んでいて心からワクワクしてくる点が素晴らしい。

人が取るべき責任ある行動はただひとつ。自分か心からしたいことをすることである。それが人生でもっとも責任ある行動であり、その人が負う最高の責任である

本書の第三章冒頭にボールドで上記の文章が書かれている。そう、この本では、自分にとってもっとも責任ある行動とは、自分がやりたいことをやるということだ、と定義している。

たとえ自分にセンスがあろうと、どんなにその分野で優秀であっても、自分の仕事を心から好きではないならば、その仕事は辞めてしまって、自分がワクワクすることをしなさいと本書は説く。それだけでも大変なことなのだが、著者は人生の成功の鍵を以下のように設定していく。

・自分がワクワクすること、好きなことを全部書き出す

・書き出したワクワクを全部同時に始める。優先順位はつけない

・実行するワクワクには同じ量の情熱を傾けよ(同じ時間を掛けるのではない)

・すぐに小さな一歩を踏み出そう

・目標を立てるな

・信念を持ち、自分の直感を信じよう

とまあ、これで成功できるんだったら誰でもやるよ、という感じの言葉が並んでいるのだが、これが本文を読むと、著者が言っていることがすごく理にかなっていて実践可能であることが分かってくる。ただ、この理論を実践すると、仕事を辞めて無収入という時期が発生するなどの高いリスクが生じるケースがあるため、よくよく自分の環境を見極める必要があることは言うまでもない。

それでも、自分のやりたいことを同時多発的に始めてしまい、しかも目標は決めずに生きるという言葉を聞いてワクワクしない人はいないだろう。僕自身も読んでいる間中ずっとワクワクしっぱなしだった。「カメラをもっと勉強してキレイな写真が撮れるようになりたい」とか「若い頃から憧れだったダンスをやってみたい」など、自分のワクワクを考えるのはとても楽しいものだ。

そしてそこから、「どうして僕はこのことにワクワクするのだろうか」と掘り下げると、自分の内なる願望が少しずつ見えてくるのだ。自分が生きる意味、そう、自らの存在意義を見つめることで、自分の生き方がどうあるべきかが見えてくるのだ。このプロセスは本当に素晴らしいもので、もっと早く本書に出会っていればと後悔しつつも、今日こうして出会えたことに心から感謝している次第。

仕事は辛くて当たり前、家族を養い自分の老後に備えるため、責任、そう言った言葉に押し潰されそうな人は、一度読んでみる価値はあるだろう。

自分のワクワクに向かって小さな一歩を歩み出すだけで、あなたの人生は、そして僕の人生も、もう既に変化し始めるのだから。


ソース―あなたの人生の源はワクワクすることにある。

 

 

 

マイク マクマナス
ヴォイス
売り上げランキング: 960
おすすめ度の平均: 4.5
5 人生の意味を教えてくれた私のベスト1
5 生きていく上での生き甲斐は何かを考えさせてくれる1冊
5 43年間生きてきて、自分を変えることができるヒントをつかめました!すばらしい1冊です。
4 無理のない自然で、科学的なアプローチ
5 宇宙語から地球語に翻訳されたバシャール
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楽天ブックスに愛想を尽かして不本意ながらアマゾンを再び使い始めたわけでが、今日嬉しいニュースが舞い込んできた。

村上春樹の"1Q84"のBook 3の予約がスタートしたとのこと。早速予約した。到着予定日は4月18日〜20日とのこと。

ちなみに1Q84の読後のレビューはこちら

衝撃の完成度 ― 1Q84 (Book 1) by 村上春樹 [Book Review]

無限に折り重なる思考と想いの断片 悠久の愛の物語 -- 1Q84 Book2 by 村上春樹 [Book Review]

前回Book 1とBook2の発売日前後は猛烈に品薄になってしまい、普段は必ず発売日に届くAmazonの予約でも、数日から一週間以上到着が遅れたらしい。僕は前回も予約開始当日に予約購入しておいたので、発売日当日に入手できた。

1Q84 Book 3を待ち望んでいる人は多いだろう。確実に入手するためには、早めの予約をお奨めする。いやー、いまからワクワクしたきたぞ!

村上春樹の"1Q84" Book 3の予約はこちらから。

 

 

51VZw9bUXJL.jpg2010年16冊目として吉越浩一郎氏著、「吉越式利益マックスの部下操縦術」を読了。

この本は良かった。すごく良かった。


吉越氏は僕が現代の経営者の中で最も尊敬する方の一人で、著書はほとんど全て読んでいる。同氏の本は毎回必ず新しい発見がありとても有り難いのだが、本書もとても新鮮で勉強になり、気合いも入る内容だった。

過去の吉越浩一郎氏著作レビューへのリンクはこちら。

時間ではなく集中力と成果で勝負! "ムダな仕事はもう、やめよう!" by 吉越浩一郎

仕事が速くなるプロの整理術 by 吉越浩一郎

「残業ゼロ」の仕事力 by 吉越浩一郎

この本は対象読者を中間管理職や経営者候補に限定し、企業でいかに部下を効率良く組織化して最大の利益を上げるか、という点にフォーカスして書かれている。

もちろん、「最大の利益を上げる」大前提として、吉越氏が提唱し続けている「残業ゼロ」と「デッドライン管理術」が前面に押し出されていることは言うまでもない。

この本はタイトルこそ「部下操縦術」となっているが、実は部下を操縦するマネージャーはいかにあるべきか、ということを中心に構成されており、実際はマネージャーの自己教育のためのテキストとして機能するべきものである。

僕自身の日常の仕事と絡めても、もう膝を打ちまくり、頷きまくり、付箋貼りまくりで、納得しまくりつつ読了した。


心に響く言葉や僕自身が信念にしていても誰とも意識を共有できておらず孤独感を感じていた点に対するフォローとなる激励の言葉に満ちていて、一生手元に置きたい本となった。

「仕事は教えてもらって覚えるものではない」、「飲み会に連れ回す上司は下の下」,「帰宅時間の早い上司こそ有能だ」など、僕が常日頃考え、感じ、実践していることが間違っていなかったのだと思え、とても励まされたし、勇気ももらった。

念のため書いておくが、吉越氏は残業せずに早く帰るからその分売上や利益が下がっても仕方がない、と言っているのではない。むしろその正反対で、どうやったら残業せずに利益を最大にできるか、どうすれば日本のビジネスマンの労働生産性を高め、せめて欧米並みに豊かに時間を使って生きられるかを提唱しているのだ。

対象読者がマネージャー以上となっているため、従来の吉越本よりも厳しい内容となっているが、経営者候補の方、マネージャーの方、そしてこれから将来マネージャーになろうという意気込みの若者にも、是非読んでもらいたい一冊だ。


余談だが、吉越氏の著書へのリンクを貼ってみて、氏の代表作のレビューを書いていないことに気付いた。このブログを書くより前の時期に読んだためだ。ここはやはり全て再読してレビューを書かねば気が済まない感じだな(^-^)。

吉越式利益マックスの部下操縦術
吉越 浩一郎
幻冬舎
売り上げランキング: 3836
おすすめ度の平均: 4.5
5 新任・中堅の中間管理職バイブル
4 中間管理職は、経営者マインドをもて。リーダーたれ。

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41JMEAK7EGL.jpgブックレビュー今年の15冊目は、稲葉精三氏著、「10万円から始める投資信託入門」を紹介しよう。

本書は勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」の中で、投資信託に関する学習に役立つ参考資料として書名が挙がっていたもの。

正直言って、役に立った部分が2割、役に立たなかったと感じた箇所が8割というところだろうか。もちろんこれは僕の個人的主観だ。

役に立った部分としては、投資信託という金融商品の仕組みや成り立ち、そして特性に関する一般的な説明部分で、自分なりに知っているつもりだったことをきちんと学べた点は非常に有意義であったし、読んで良かったと思わせてくれた。

一方で本書があまり有効ではないと感じられた箇所については3つの問題がある。いずれも本に問題があるのではなく、外部環境のせいと言えよう。

第一に、本書は投資信託について書いている本ではあるが、投資信託による資産形成を指南するガイドとしては機能していない。要はミッション主導ではないのだ。

僕が知りたかったのは、例えば60歳までに投信への投資で一定額以上の資産を構築するための商品選びのコツやリスク、そしてアドバイスなどである。

だが本書はそのような購入者側の立場に立った指南書ではなく、単なる解説書となっていて、初心者向けとは言い難い内容となっている。「ナンピン買い」などという専門用語を何の解説もなく出してきても初心者の読者は戸惑うだろう。この点は残念だったし拍子抜けでもあった。

第二に、本書が書かれた時からの時間の経過による金融環境の変化に伴い、情報の鮮度が落ちてしまっている点。

本書のタイトルは「10万円から始められる投資信託入門」で、本編で著者も述べているが、この本が書かれた2004年当時は、投信は10万円が最低単位だったのだ。

ところが2010年には、投信は1,000円から買える時代となっている。購入単位が6年の間に1/100になってしまったのだ。また、この当時は売買手数料が掛からない「ノーロード型」投信などはまだ存在しておらず、手数料が3%程度かかることが前提とされているなど、全体的に情報が古いのが痛かった。

そして第三に、この本は上げ潮の時期に書かれており、長期運用を前提としていないという点。

2003年までの長期低落相場を終え、2004年から2005年に掛けて、日本の株式市場は数十年に一度といわれるような大型上昇相場だったたわけだが、本書はまさにその時期に書かれており、短期売買でキャピタル・ゲインを得ようというムードがムンムン漂っている。

長期運用で安定したリターンを得たいと思って読み始めた本で、短期売買の話を書かれると(しかも売買手数料が高いため、相当の利益を目指しているように思える)、正直何の本を読んでいるのか分からなくなってしまう。

というわけで、残念な点もいろいろ出てしまったが、投信の仕組みや種類とその特性など、しっかり抑えておきたい部分の勉強にはなったと思う。目的意識をしっかり持って読めばOKだろう。

10万円から始める投資信託入門―初心者のための買い方・売り方ガイド
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稲葉 精三
日本経済新聞社
売り上げランキング: 78434
おすすめ度の平均: 1.0
1 初心者には不適
4 参考になる部分もあるが・・・・
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51q1ADdX+HL._SS400_.jpgブックレビュー2010年14冊目は勝間和代氏著、「効率が10倍アップする新・知的生産術 — 自分をグーグル化する方法 —」を紹介しよう。

本書は勝間氏が大ブレイクすることになった「10倍シリーズ3部作」の3作目であり、勝間氏の著書が自己啓発本の代名詞にもなっている「勝間本」と呼ばれる完成形となったと言っても良い、総合的に非常に優れた作品である。

10倍シリーズについては前2作についてもレビューを書いているので以下にリンクしておこう。

無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法 by 勝間和代

無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法 by 勝間和代

個人的には本書は勝間氏の著作の中でベスト3に入る優れたものと感じている。氏の全ての作品を読んだ訳ではないが、「やればできる」と「お金は銀行に預けるな」、そしてこの「効率が10倍アップする新・知的生産術 — 自分をグーグル化する方法 —」が僕の中ではベスト3だ。

もう3年近く前に出された本で、その後勝間氏は本書に書いたことと類似した主張を繰り返しているので、今となっては新鮮さは失われつつあるが、この本が出た当時には、相当の衝撃があったであろうことは容易に想像できる。

何が素晴らしいかをまとめると、以下の3点に集約されるのではないだろうか。

・学習や読書、コンピュータによる効率化などだけではなく、食事、睡眠、運動といった普段なかなか意識的に取り組みにくい事項も含め、人間の生活全てを網羅して効率化・最適化させようと提案している点

・ネットやガジェットなどのデジタル機器を最大限活用しつつも、書籍や自転車などのアナログ機器・情報も最大限取り込むことで、人間にしかできない形での効率化・最適化を提示しており、中心がデバイスや情報ではなく、あくまでも人間である点

・本を読んだだけではスタートを切りにくい人達向けに、最終章に具体的なスタート方法が示されていたり、参考になると著者が考える資料情報が大量に含まれるなど、作りが親切である点

といったところだろうか。

「効率を10倍にする」というタイトル自体は刺激的だが、一つ一つの提案はごく当たり前のことも多く、だがその当たり前のことが現実にはなかなか実践できていないことに、本書によって改めて気付かせられる。例えば「煙草を吸うな」「テレビをぼんやり見るな」といった事柄は、頭では分かっていても、実行できていない人も多いのではないだろうか。

また、彼女の本がどうしてここまでブレイクしたのかというと、彼女が大きな全体像をブレイクダウンして細分化し、それを整理する「フレームワーク力」が高いからなのだということも、本書でいやというほど実感させられた。これについては彼女自身が本書内でも「自分の一番得意な分野」と書いている。

他の人が書いた自己啓発本と同じようなことが書いてあるのに、何故か勝間氏が書くとすごく魅力的に感じたり、実行に移せそうに思えるのは、彼女の切り口と項目建てが斬新で魅力的なためで、これこそがフレームワーク力なのだと感心した。

本書に書いてあることをいきなり全て実行すると、おそらく全てが三日坊主になってしまうと思うが、まずは出来ることから取り組み始め、徐々に自分自身の生活と人生のチューンアップを目指してはどうだろうか。

 

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勝間 和代
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 2182
おすすめ度の平均: 4.0
4 タメにはなるけど。
4 むしろおっさんなんじゃないかと。。。思うくらいオトコらしい。
4 どのように情報を扱うかがわからない人にはよい本だなと感じました
4 フレームワーク力
4 著者の効率良い生活スタイルの紹介
51E+rl6mFNL.jpgブックレビュー今年の13冊目は、桑原正守氏著、「強運を呼び込むツキまくりの法則」を読了。

桑原氏は元カリスマ・フルコミッション営業マンで、現在は営業・経営コンサルタントとして活躍している方なのだが、僕はちょっとしたきっかけで氏の経営者向けセミナーのDVDを見る機会があり、なかなか面白かったので、著賞を時系列順に読んでいて、これが3冊目となる。

ちなみに過去の桑原氏のレビュー記事はこちら。

シンプルで心に響く言葉たち "絵に餅を描け" by 桑原正守

成功の反対は失敗ではなく『平凡』だ! "世界一のセールスマスターが明かす 売れまくりの法則" by 桑原正守

桑原氏の教えが、このエントリーのタイトルにもある通り、『反復練習』に重きを置いていることもあり、著書でもある程度同じ話しが繰り返しでてくる。これを「前にもその話は読んだ。もう知ってるからつまらない」と感じるか、「大事なことだから繰り返し訴えかけているんだな」と考えるかは読者次第だが、確かに3冊目となると、若干繰り返しが気になってはくる。

だが、大事なことを分かりやすく説明しようという桑原氏のスタンスはとても勉強になることは間違いない。特に、20世紀と21世紀では、日本のビジネスパーソンが置かれている環境が全く異なることを説明する際に用いる「ビニールハウスの時代」と「野生の時代」の比喩は、毎回必ず出てくるが、それだけ大切なことと思って頭に叩き込もう。

本書は基本的には若い営業マンをターゲットにした自己啓発本として書かれているが、彼自身が営業コンサルと平行して経営者コンサルもしていることからも分かる通り、経営者や自営業者にとっても非常に有益な考え方が詰まっている。僕も営業出身なので良く分かるのだが、営業担当が力を伸ばすというのは、すなわち『人間力』をトータルで伸ばすことが求められるわけで、それは若い間の営業成績だけではなく、そこからマネージャーになり、そして将来一国一城の主になろうという意志のある人は、永遠に人間力を高め続けなければならないと僕は信じている。

本書で書かれている「自分の磨き方」や「壁を乗り越える発想」などは、決して目新しいものではないが、人間が高い次元で生きるために大切なことを、たくさん教えてくれているのだ。

本書で気に入ったフレーズは、「3日坊主は悪くない」というもの。3日坊主は悪とされているが、それはそのまま止めてしまうからで、4日目にできず三日坊主になったとしても、5日目に再開できれば良い。そして三日坊主を100回繰り返せば,300日も実行できているのだ、というもの。

とにかく諦めては絶対にダメ。そして何かを身につけるには反復連勝しかない。これは徹底しているが、決して精神論を振りかざしているのではなく、いかに無駄なく強運を呼び込むかについての工夫が詰まっている。

強運になるためには、まずは自分が強運だと思い込むことかは始める必要がある。それは本当にそうだと思う。元気に楽しく生きずに、強運なんて身に付くはずがない。

 

強運を呼び込むツキまくりの法則―世界No.1のセールスマンが書いた
桑原 正守
マネジメント社
売り上げランキング: 333355
おすすめ度の平均: 3.5
4 とにかく実行
3 ツキまくるかも!この本で。スッキリとしていて読みやすい。
4 スキルというより、メンタル本
3 桑原さんのまとめ本
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