日常日記

桜の森の満開の下にオヤジさんを想う [デ]

日常
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東京でも桜が満開に。

真夜中すぎまで飲んでタクシー帰り。

自宅の300メートルほど手前に大きな公園があって桜の並木がある。

ふと思いついて公園の前でタクシーを下り、真夜中の桜を見上げてみた。

 

 

満開の夜桜を下から見上げると必ず思い出す人がいる。

15年来の友人、せんべいさんことシンヤさんのお父さんだ。もう亡くなって10年以上経つ。

シンヤさんのお父さん(以下オヤジさんと呼ぶ)とは3回しか会っていない。

初めて会ったのはシンヤさんがアメリカでの生活を終えて日本に帰国した時。僕は仕事を休んで成田空港までシンヤさんを車で迎えにいった。

シンヤさんを送り届けると、オヤジさんとタミーさん(シンヤさんのお母さん)が暖かく出迎えてくれ、そのまま宴会になった。

その時がオヤジさんとは初対面。物静かだけれどもすごく暖かくて懐が深く、僕は一気にオヤジさんのことが好きになった。

 

 

僕には父親がいない。

いや、いることはいるのだが、小学校の時に両親が離婚して、離婚の何年も前から父はあまり家にいなかったので、あまり父との交流の思い出がない。

いや、正確に言えば、思い出はあることはある。

大事なのは、人生を左右する決断をする時や、ビジョンを描くといった大きなライフイベントの進め方を、男親から習うことができなかったということだ。

 

 

すべての父親がそういう役割を遂行しているかどうかは知らない。

僕は両親の離婚後も、祖母と母に大事に育ててもらったので、不満という不満はなく育った。

でも、やはり父親の欠落というのは時に感じるわけで。

もっともそれを大きく感じるのが、男としての人生航路を描くという作業を導いてくれるという、男にしかできない仕事を担当する人が家にいなかったということだ。

 

 

そういう欠落感を持って生きていた僕の目には、シンヤさんとオヤジさんは最高の親子に見えた。

オヤジさんは明確にシンヤさんが進んでいく人生を応援していたし、シンヤさんも応援を受けて輝いていた。

一緒にアートについて語り、二人でお寿司屋さんのカウンターに並んで座り、共に人生を歩んでいた。

それまでは漠然とした渇きを感じる程度だった僕が、「ああ、僕の思春期に足りなかったものはこれだ!」とハッキリ認識したのは、オヤジさんとシンヤさんが人生を語る姿を見た時だった。

 

 

また飲みにいらっしゃい。オヤジさんはそう言ってくれた。

そしてシンヤさんは東京に拠点を移したので、僕もオヤジさんと色んな話をさせてもらおう。そう思っていた。

でも残念ながら、それから僕はオヤジさんには2回しか会えなかった。

 

 

丁度桜が満開の時期だった。

シンヤさんからメールがきた。仕事中にオヤジさんが倒れ、意識不明になったという連絡だった。

そしてそのまま意識が戻ることなく、オヤジさんは唐突に旅立ってしまった。

 

 

お葬式に行った時も桜が満開だった。

今まで出たお葬式の中で一番悲しいお葬式だった。

旅立つことに対して周囲の人達が全然準備が出来ていないのだ。だから周囲の人は皆悲しみ、戸惑い、涙を流していた。

 

 

当時僕が住んでいた武蔵野には桜並木がたくさんある。

武蔵野市の「市の花」が桜だからだ。そこら中に桜が植わっている。

 

 

お通夜の帰り、ライトアップされた桜並木の下を歩きながら涙が止まらなくなり、泣きながら満開の桜を見上げつつ歩いた。

その時にふと、桜の一つ一つの花は、過去にこの世界を生きてすでに旅立った人達が、一年に一度こちらの世界に遊びにきている姿なのかもしれないと思った。

長い冬が終わり、空気が春へと入れ替わる時期に、一斉に花が開き、わずか10日も経たずに散っていく。

この花の一つ一つは、誰かがかつて大切に思った人、一人ひとりなんだ。

僕はその時以来、いつもそう感じている。桜が咲くたびに、「あの人やあの人が遊びに来ている」と勝手に思っている。

 

 

金曜日の真夜中にワインに酔った頭で、一人桜を見上げつつオヤジさんのことを思い出していた。

あれから10年以上の時が経ったけれど、桜が咲くたびに毎年必ずオヤジさんのことを思い出す。

 

 

そして今年、というかもう来週だ。シンヤさんが久し振りに個展を開く。12年ぶりとのこと。

そしてトークイベントという形で、僕はついにシンヤさんと一緒に表現する仕事をする時を迎える。

 

 

表現者としてずっと生きてきたシンヤさんに対して、僕はいつも「羨ましい」と思ってきた。

そんなシンヤさんと一緒の舞台に立てる。

こんなに嬉しいことはない。

オヤジさんもきっとよろこんでくれるだろう。

 

 

詳細が決まったらこのブログでもまた報告します。

夢舞台。楽しみにしてます。

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