1Q84 Book 1〈4月 – 6月〉by 村上春樹 〜 春樹2.0の幕が上がる [書評]

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ブックレビュー2010年の56冊目は、村上春樹氏著「1Q84 Book 1」を読了。一年ぶりの再読である。

彼の小説とエッセイは単行本の形になっているものは全て所有しているし読んでもいる。

初期の代表作であるところの「羊」四部作、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」、そして「ノルウェイの森」はどれも最低でも10回は読み返している。

そんな僕なので、1Q84は去年予約をして発売日に買ってすぐに読み、レビューも書いた。

バックナンバーはこちら。

そしてBook3も予約開始日に予約して、発売日にはもう手に入れていたのだが、せっかく届いた本をすぐには読み始めず、ぐずぐずしていた。

理由は簡単。まとめて物語の最初から一気に読みたかったからだ。

そして今回のヨーロッパ出張には、重いハードカバーの1Q84三冊セットを(実はそれ以外にも3冊の本も)スーツケースに詰めて旅立ち、そして早速12時間の旅を1Q84 Book1との一年ぶりの邂逅に費やすことになった。

1Q84 Book 1〈4月 – 6月〉by 村上春樹 〜 春樹2.0の幕が上がる [書評]

久し振りに1Q84を最初から読んで改めて感じたのは、この作品は村上春樹にとって完全に新しいチャレンジであり、彼自身が目指していると公言している「総合小説」への試みの結実の結果であり、ある意味今までの彼の集大成的作品だということだ。

流行りの言い方をすれば、この小説によって村上春樹は春樹2.0へと変化したのだと思う。

具体的に大きな特徴は3つ。

一つ目は何と言っても三人称での語りである。

短編を除くと村上春樹は従来「僕」を語り部とした一人称小説の大家であった。

「風の歌を聴け」でも「ノルウェイの森」でも「海辺のカフカ」でも「ダンス・ダンス・ダンス」でも、常に主人公は「僕」であり、世界は「僕」が見たままに写り、「僕」以外のナレーターは小説には原則として登場しなかった。

だが、この1Q84では、主人公とは別のナレーターが存在し、小説は三人称で語られ、進んでいく。

「アフターダーク」など一部では試みられていた手法だが、本格的な長編で三人称が用いられたのは今回が初めてだ。

二つ目の特徴は、彼がこれまで取材してきた多くの題材がふんだんに作品に盛り込まれ、キャラクターや場面設定に活かされているという点である。

もっとも大きな特徴は、宗教団体「さきがけ」「あけぼの」の原形となっているオウム真理教である。

これは彼が地下鉄サリン事件の被害者を取材してまとめあげたノンフィクション・レポート「アンダーグラウンド」、そして加害者となったオウム信者を取材した「約束された場所で」での経験が活かされている。

そして主人公にスポーツのプロを据えたのは、シドニー・オリンピックのレポート「シドニー!」での経験や、自らのマラソン、トライアスロン経験を綴った「走ることについて語るときに僕の語ること」のエッセンスが十分注ぎ込まれている。

そして三つ目の特徴として、彼の今までの作品の集大成として、「世界の終り〜」に見られたパラレル・ワールド的世界、そして「羊」四部作の「羊」的役割を担う「リトル・ピープル」、「ねじまき鳥クロニクル」でもたらされたダークで強い世界観と強さ、そう言ったものが物語にぎっしりと詰め込まれている。

これらの特徴を備えた時、僕らはこの1Q84が、従来の彼の作品とは明らかに異なる文体で書かれていることに気付く。

従来の彼の作品は良くも悪くもツルリとした質感であっさりとして文体を持ち、すいすいと読み進むことができた。

「やれやれ」という言葉に代表されるモラトリアム、ニヒリズムがクールさと相まって彼の世界観を作り出していた。

だが、この1Q84では、文章はざらざらとした硬質の質感を持ち、言葉は密度を高められた結果重厚で熱を持ち、今までのクールさは陰を潜めている。

この傾向は「ねじまき鳥」頃から見え始めてはいたが、本作によって決定的な変化となったように思う。

そのような大きな変化を伴いつつ、1Q84の世界は村上春樹2.0として幕を開いた。

二つの世界は交互に訪れつつ、僕達に何を伝えようとしているのだろうか。

あまりにも多くのギミックが立体的に積み重なり、Book1を読み終えた僕らは、ここから先どこに向かっているのか、想像すらできないでいる。

とても深い森の奥で。

1Q84 Book 1のチェックはこちらから!

村上春樹作品レビューはこちらにもたくさん!もう1記事いかが?

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