マーケティング・ブランディング書評

バイラル・ループ by アダム・ペネンバーグ 〜 流行は光の速さで伝播する!! [書評]

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ブックレビュー2010年の111冊目は、アダム・ペネンバーグ氏著、「バイラル・ループ」を読了。

良い。凄く良い。刺激的で洞察力鋭く、さらに分かりやすく時流をうまく説明している。

バイラル・ループという現象についてももちろん良く理解できるのだが、それ以上にアメリカの若者達が一発狙って起業する姿勢が鮮明に描かれていて実に面白い。

日本にもこういう若者がどんどん出て欲しい。

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バイラル・ループ by アダム・ペネンバーグ 〜 流行は光の速さで伝播する!! [書評]

そもそもバイラル・ループとは何か。

「バイラル」は英語の”Viral”で、「ウィルスの」という意味である。

そして「バイラル・ループ」とは、巻頭の佐々木俊尚氏の説明によれば、インターネット上でブログやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアを経由して、情報がウイルスのように伝播していく現象のことを指す。

要はネットを媒介した口コミのことなのだが、ネットが普及する前の井戸端会議的リアル口コミと較べて、ネットを介するバイラル・ループはその伝播の速度が半端ではない。

本書ではバイラル・ループ発生の仕組みの説明から、バイラル・ループに偶然乗って世界を代表するメディアに育ったサイトの例や、バイラル・ループ現象が人口に膾炙した後に、意図的にバイラル・ループを狙って成功した人々などについて、詳しく鋭く描かれている。

歴史的にはバイラル・ループはインターネット普及前からマーケティグ手法として確立されてはいたとのこと。

最初の大ヒットとしてタッパーウェアのパーティー商法が挙げられている。

口コミを広めるために販売員が近所の主婦を自宅パーティーに招いてその場で商品の説明をして売上を上げ、さらに参加者達を新たな販売員として獲得していくという手法である。

1950年代に全米を席巻したタッパーウェアのパーティー商法だが、実はいま現在でも健在で、まだ商品が飽和状態に至っていない南米や東南アジアなどで活発に実施されているとのこと。

しかしタッパーウェアが元祖だとしても、やはりバイラル・ループといえばネットである。

もともとWebをブラウズするためのブラウザさえも、口コミで伝播していくバイラルでMosaicが広まり、その後Netscapeが全世界を制覇するなど、まさにバイラルを象徴するような商品やサービスが続出している。

Flickr、Hotmail、YouTube、eBay、PayPalなどの巨大サイトを本書ではバイラルによる急成長の成功例と位置づけその成立から急成長の過程をつぶさに解説しているのだが、そこには猛烈な勢いで増大するデータ量との闘いが常にある。

最初から巨大なシステムでビジネスを始めることにリスクがあるため、皆研究室や大学の貧弱なサーバでサービスを開始し、サービスが認知されバイラル・ループが発生すると、とにかく不休不眠でサーバを増強し爆発するアクセスを何とか制御するために奔走する。

この時データが消失したり個人情報が漏洩したりすれば、バイラルの伝播は断絶し、成功への上昇カーブも途切れることになる。

アメリカの若者達はそうしてバイラル・ループを狙って続々と新たなサービスを作り出し、成功者は最も良いタイミングを狙って大きく育ったサービスを売却して巨万の富を得る。

そしてその資金を元手にさらなるバイラル・ループを求めて次のアイディアを実現させていくのだ。

バイラル・ループはネット特有の現象と捉えられがちだが、本書では最後、我々人類の人口も長い時間をかけてゆっくりと増加する段階から、18世紀頃からバイラル係数が1を超え、爆発的増殖段階へと突入していると説く。

我々自身のDNAにもバイラルの種が仕込まれているのだと。

だから、今日ネット上に現われたバイラルな企業達は、突然変異などではなく、バイラルな存在である人類がその活動を凝縮できるネット上に最速のバイラル・ループを構築し、その姿を僕らに見せてくれたに過ぎないのだ。

僕らの前に、次ぎにどのようなバイラル・ループが巻き起こるか、固唾を呑んで見守ろうではないか。

もしかしたら、その主役は僕かもしれないし、あなたかもしれない。

「バイラル・ループ」のチェックはこちらから!

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