マーケティング・ブランディング書評

1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ by 氏家 健治 〜 4倍に値上げしてバカ売れ!価値を上げぶっちぎりNo.1になる方法

マーケティング・ブランディング書評
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氏家建治さん著、「1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ」という本を読了したのでご紹介します。

こんにちは。ビジネス書作家・ブロガー・心理カウンセラーの立花岳志です。

当ブログでは、皆さんが人生をより自由に、より美しく、より楽しく生きるための情報やメッセージをシェアしています。

学び進化することも、より楽しい人生の構成要素の一つと僕は考えています。

学ぶために読書をし、読んだ本を紹介することも、このブログのメインコンテンツの一つ。

自分で商売をするときに、必ずしなければならないこと。それは「価格を決める」こと。

従業員が何万人もいる会社でも、1人でやっている仕事でも、商品やサービスには必ず価格があります。

無料という場合もありますが、無料の時も「0円」という値段を決めているわけです。

マーケティング論理的には、「値段は高ければ高いほど良い」ということになります。

しかし、購入する人の価値に見合わないほど値段が高いと、買う人がいなくなってしまいます。

かといって、どんどん値段を下げてしまうと、利益がなくなってしまい、ビジネスとして成立しなくなってしまいますよね。

価格を決めるというのは、実はとても難しいこと。

僕はマーケティングやブランディングの本が好きで良く読みますが、その中でも値段決め、プライシングの本は面白いものが多い。

今回読んだ本は、マーケティングの専門家ではなく、実際に商品を製造・販売しているご本人が書かれた本。

それだけにリアリティーが非常にあり、深みもあって良い本でした。

「ケンズカフェ東京」というガトーショコラ専門店のオーナーシェフ、氏家建治さんの「1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ」という本です。

サブタイトルに「4倍値上げしても売れる仕組みの作り方」とあります。

さっそく紹介しましょう。

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レストランのデザートから持ち帰り販売へ

この本の著者、氏家建治さんは、ガトーショコラ専門店「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフだ。

このお店は現在ではガトーショコラの専門店だが、オープン当初から約10年の間は、イタリアンのレストランとして営業していた。

レストランのデザートとして出していたガトーショコラが評判になり、「持ち帰りたい」というリクエストが出るようになったという。

当初は希望者にだけ「仕方なく」販売していたが、やがてその評判があまりにも高くなったため、持ち帰りを前提とした販売を開始。

その過程で、何回かに分けて、当初よりもサイズを半分に、そして価格を2倍以上に改訂した。

つまり、4倍の価格を設定したわけだ。

当時2008年は、世の中はデフレの真っ只中。大手の牛丼チェーンなどが10円単位の値下げ合戦で消耗戦を繰り広げている時代。

そんな時代にレストランをガトーショコラ専門店へと転換させ、しかも価格を4倍に上げる。

そんな決断が、なぜ氏家さんにはできたのだろうか。

詳しく見ていこう。

「本当に美味しい」モノがないからこそのチャンス

氏家さんによると、日本は「高級チョコレート後進国」なのだという。

氏家さんはチョコレートの一番美味しい食べ方は、ガトーショコラだと信じている。

しかし、日本で販売されたりレストランで提供されたりしているガトーショコラの多くは、チョコレート味のパウンドケーキのようなもの。

薄っぺらく味わいもない。

そんな中、自らのレストランでデザートとして提供していたガトーショコラは、本場の味に日本人好みのローカライズを加えたこだわりの味だった。

本当に美味しいガトーショコラが日本にはまだなかった。

だからこそ、「買って持ち帰りたい」という顧客のニーズが生まれ、それが評判になったのだ。

誰も手がけておらず、競争相手がいない「ブルーオーシャン」。

氏家さんはそこに目をつけたのだ。

何もかも最高級でダントツを目指す

氏家さんがガトーショコラの値上げを断行したのは、店を潰さずに不動のブランド力を手に入れるためだった。

当初はレストランのデザートを希望者だけに販売する程度だったので、利益を考えず500gで1,300円で販売していた。

しかし、ガトーショコラの人気が出て、ビジネス化を考え始めたとき、利益がない状態では立ち行かないとすぐに1,500円への値上げを断行した。

そしてその時点で容量を半分の250gにした。

そしてその後商品の人気が出て販売量が増えるにしたがって、2,000円、3,000円へと値上げを行った。

中途半端な値段では、材料やパッケージなどに十分なコストを投入できず、単品で勝負するには不十分と考えたのだ。

圧倒的な品質と高級感でお客様にファンになってもらう。

ファンの人たちが離れないような改善を行い続けるのにもコストがかかる。

そのために4倍という値上げを断行したのだ。

デザートとして提供していた時よりも大幅に値上げをすることで、徹底的に商品をブラッシュアップすることができるようになった。

素材のチョコレートも最高級のものを使う。

そしてパッケージとなる化粧箱、手提げ袋などにも徹底的にこだわる。

何もかもを最高級にすることで、圧倒的なブランド力を手に入れる。

そして、「1本3,000円もするガトーショコラってどんな味なの?」という評判も生みやすいと睨んだ。

氏家さんのその決断は見事に当たり、ケンズカフェ東京のガトーショコラは、不動のNo.1の座を手に入れることになったのだ。

単品主義でNo.1を不動のものに

前述したとおり、ケンズカフェ東京はガトーショコラ1商品、単品で勝負している店だ。

以前はイタリアンレストランとして、さまざまなメニューを提供していたのを、ガトーショコラの店頭販売だけに切り替えたわけだ。

その理由は、単品にすることで、味の追求を徹底して行うことが可能になるからだ。

レストランのように多くのメニューを掲げていれば、当然それぞれのメニューに意識は分散する。

しかしガトーショコラ一品に商品を絞り込めば、氏家さんは一年中ガトーショコラのことだけ考えていればよい。

多品目を扱う店と較べて、圧倒的な高品質の商品を提供できるのだ。

また、たくさんのメニューを掲げるのに較べると、材料のロスなども圧倒的に少なくなる。

さらに、材料となるチョコレートなどの仕入れが多くなるため、メーカーとの価格交渉もしやすくなる。

多品目を扱うと、材料の廃棄量が増え、仕入れも多くなり価格交渉力はなくなり、さらに売れ残りのリスクも出てくる。

単品主義こそが、ビジネスの観点から見ても、モノづくりの観点から見ても、正しい選択だったのだ。

徹底したローカライズ

氏家さんのガトーショコラは「本場の味」を標榜しているわけだが、ヨーロッパのレシピをそのまま持ってきているわけではない。

以下引用しよう。

「じつは本場フランスのレシピでは、私のレシピの2倍くらいの砂糖を使います。冷蔵庫での保存方法がなく、砂糖が贅沢だった時代に誕生したスイーツですから、驚くほどたっぷりの砂糖を使うのです。

バターの配合比率も高く、どっしり濃い味です。日本人が食べると、甘すぎ、濃すぎで、閉口するくらいの味です。そこで私は日本人が食べても甘すぎず、濃すぎない味わいに砂糖とバターの分量を調整しています。この味を「ガトーショコラの21世紀東京版」と密かに命名しています」

また、「最高級」を目指してはいるが、高ければ使うということではないと氏家さんは強調している。

あくまでもガトーショコラの美味しさをもっとも引き出してくれる素材にこだわる。

だから、必要ない高級ブランド素材を使うのではなく、一つ一つシェフ自身が試し、もっとも良いものを使っていくのだ。

ブランドを強化し続ける仕掛け

氏家さんのガトーショコラは圧倒的なブランド価値を手に入れた。

しかし、現在も氏家さんはそのブランドをさらに強化する仕掛けを続けている。

この本「1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ」も、もちろんブランドを強化する戦略の一環だろう。

また、世の中のインフルエンサーを巻き込んだり、SEO対策を講じたり、SNS、メルマガを通じて情報発信をするなど、ブランド強化のための取り組みを怠らない。

また、シェフ一人での手作りにこだわり、「限定生産」であることをWebで謳うなどの「希少性」を訴えることも忘れない。

毎朝ネットのエゴサーチやアクセス解析も行い、自分の店と商品がユーザーにどのように評価されているかをチェックしている。

氏家さんの言葉を引用しよう。

「時代から半歩だけ進んだ味を追求し、進化し続けるのが、多くの方から愛され続ける秘訣だと私は思っています。そのために「自分の味はなにがあっても変えない」と意固地になるのではなく、時代に合わせて味を変える変える勇気を持ちたいと思っています」

ブランドは一度構築したらそれで完成なのではなく、進化させ続けること。

その大切さを認識し、つねに改革を続けることが、ブランド力を強化し続けるために必要なことなのだろう。

まとめ

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この本の表紙には氏家さんのお店「ケンズカフェ東京」の名前が入り、帯には商品のガトーショコラがドーンと写真に写っている。

この本が書店に並ぶだけで、本と同時にお店と商品の宣伝にもなってしまっている。

ここまで効率の良いブランディングはなかなかできるものではない。

氏家さんを見習って、僕もさらにブランド力を強化していきたいと思う。

この本に書かれていることは、多くのビジネス領域に応用可能だ。

モノが売れないからとやみくもに価格を下げて消耗戦に突入してはいけない。

むしろ、しっかりとした料金をいただき、その分商品の価値を徹底的に上げていくことが大切だ。

自分の持つ商品やサービスを磨きたい方は必読の一冊。

面白くて勉強になる。そして思わずガトーショコラをお取り寄せしたくなる一冊。

お取り寄せした結果はこちらの記事に↓

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