書評

使い倒せ!デジタルに使われるな! 書評「吉越式クラウド仕事術」 by 吉越浩一郎

書評
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クラウドやEvernoteに関する本は世の中に大量に出回っている。

だがこの本は他の本とは一味もふた味も違う。

クラウドに限らず、ITやガジェットなど最新の情報は、どうしても若い人の方が得意だ。

従って情報発信している人も若い人が多い。

それ自体は良いことなのだが、一つ問題がある。

若い人が書く本には、どうしても知識や経験の蓄積が少ないのだ。

だから技術やテクニックありきの本になる。それは仕方がないことだ。

マネジメント経験がない人には、マネージャーのための本は書けない。

そんな僕たちの前に、まさに経営・リーダーシップ、そしてマネジメントのプロ、吉越浩一郎氏のクラウド本がやってきた。

吉越式クラウド仕事術」は、まさに僕らが感じていた、従来のクラウド本に足りなかった部分を埋めてくれる、素晴らしい本だった。

 

 

吉越式クラウド仕事術 

吉越浩一郎 著 アスキー・メディアワークス 2011-03-23
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by ヨメレバ

 

 

人中心の視点でクラウドを串に使う

 

 

読み始めてすぐに気づくが、本書は多くのクラウド本とは構成が大きく異なっている。

それは、クラウドやガジェットなどのツールを主役におかず、あくまでも「ビジネスを行う人間」が中心に据えられているのだ。

ビジネスを加速させ、残業をゼロにし、デッドラインを守り、そして家庭や友達との時間を大切にする。

「ワークライフバランス」、いや「ライフワークバランス」を取り、人生を謳歌する。

本来すべての人にとって、コンピュータやクラウドなどのツールは、自分の仕事と人生を豊かにしてくれるものであるはず。

本書はその高い次元からクラウドを見据える、数少ないビジネス書と言っていいだろう。

あくまでも中心に置くべきは人。クラウドはツールなのだ。

 

 

Evernoteでデッドライン管理!

 

 

著者の吉越浩一郎氏は数多くの名著で知られるが、代表的なポリシーが幾つかある。

その中でも最もビジネスマンに浸透したフレーズの一つが「デッドライン管理」である。

そして本書で吉越氏はEvernoteでデッドライン管理を実行するための試行錯誤の過程を公開している。

365日分のノートを作成し、さらにタグも駆使してのデッドライン管理である。

この本が書かれた時点ではまだ、ノートブックのスタック機能(サブフォルダ)がなかったが、今はスタックが使えるのでさらに便利になっているだろう。

使い方は各自工夫すれば良いと思うが、ビジネスのマネジメントという観点からのEvernote活用をここまで突っ込んで公開しているケースは今までなかったのではないだろうか。

リーダー、マネージャーは管理する項目が多くなるため、PM的な仕事術とは異なる視点が必要になる。

本書はまさに、ビジネスリーダー、マネージャー向けのEvernote仕事術なのだ。

 

 

デジタルに使われない!

 

 

本書後半には、多くのiPhoneやiPad向けアプリの紹介コーナーがある。

ここでも他の本と大きく異なるのが、視点が常に人間であるということ。

「このアプリでこんなことができます」という紹介ではないのだ。

「このアプリを使って僕はこんなことをします」という紹介形式になっている。

本書の章タイトルにもなっているが、デジタルに使われてはいけない。

あくまでも我々人間がデジタルを駆使して、使い倒して、生活を便利にし、より豊かに生きるのだ。

それが一番大事なことなのだ。

 

 

まとめ

 

 

吉越氏は1947年生まれである。僕の母と2歳しか違わない。

そして本書で吉越氏は「あまりコンピュータには詳しくない」と書いている。

だが、吉越氏と同年代の人で、ここまで突っ込んでEvernoteを使いこなしている人を僕は知らない。

いや、吉越氏と同世代どころではなく、僕と同世代の人でも、ここまで使いこなしている人は、なかなかいない。

確かに吉越氏はSEではないし、いわゆるGEEKな人々のような専門知識を持っているわけではない。

だが、吉越氏が本書で提示してくれた「クラウド仕事術」は、一部のマニアや特殊な仕事をしている人だけでなく、すべての日本のビジネス・パーソンがすぐに応用して使うことができるものだ。

今後多くのビジネスマンにクラウドの世界は広がっていくことだろう。

マネジメントとクラウドを結びつける大いなるチャレンジの書。素晴らしかった。

 

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2011年の59冊目の書評としてお送りしました。

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