書評

我らノマドの時代! 書評「仕事するのにオフィスはいらない」 by 佐々木俊尚

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最近ずいぶんと知名度が高くなった「ノマド」という言葉。本書はノマドについての解説書である。 僕が大学を卒業する頃は、日本はまさにバブル絶頂だった。

株価は1989年にさっさと弾けて暴落していたが、不動産バブルその後も続き、狂乱景気と呼ばれていた。

 

 

あの頃は多くの人が、「会社がブランド」だと信じて疑わなかった。

「良い会社に入る」ことが、「良い人生を生きる」ことと、限りなく近かったのだ。

だから、皆自分が入った会社を自慢したがったし、良い会社に入るために必死になっていた。

 

 

だが、時代は完全に変わった。

いまや、どんな大きな会社でもちょっとした変化であっという間に倒産の危機に瀕する。

そして雇用体系も変化した。終身雇用制は崩壊し、復業禁止規定も撤廃されるなど、「企業戦士」という名前すら古くなってしまった。

そんな時代に現われたのが「ノマド」である。

僕も4月から、一応ノマドの端くれになった。

本書「仕事するのにオフィスはいらない」は、サブタイトル「ノマドワーキングのすすめ」のとおり、ノマドな人々とその仕事スタイルを紹介した本だ。

 

 

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by ヨメレバ

 

 

改めて、「ノマド」ってなんなのさ

 

 

そもそも「ノマド」とはなんのことだろうか。

最近ずいぶん浸透しているが、改めて説明しておこう。

「ノマド」(nomad)とは、「遊牧民」のことを指す。

北アフリカや中央アジアなどで、1ヶ所に定住せずに、馬やラクダに乗って季節ごとに場所を移動していく生活スタイルを採る人々のことをノマドと呼んだ。

 

 

だが、いま本書で言っている「ノマド」は、遊牧民を直接指すものではない。

企業に属さずフリーで活動をし、ノートパソコンを片手に日々場所を移動しながら仕事をするスタイルを採る人々を指す。

企業に直接は属さずプロジェクト単位で複数の企業と契約して働く人々のことなのだ。

本書では、元新聞記者である著者佐々木氏による丁寧な取材により、多くの「初期ノマド」な人々のリアルなワークスタイル、そしてライフスタイルが紹介されている。

 

 

クラウド、モバイル、ブロードバンド

 

 

冒頭では日本経済と企業の変質かノマドを生んだという書き方をした。

だが、「ノマド」はそれだけでは生まれることができなかった。

ノマド・ワークスタイルを可能にしたのはテクノロジーの進化である。

代表的なのが、「クラウド」「モバイル」「ブロードバンド」である。

カフェに入り、MacBook Airを起動し、無線LANに接続して仕事してファイルをDropboxにアップロードする。

この一連の作業には、見事にクラウド、モバイル、ブロードバンドが関わっている。

この三種の神器がなければ、ノマドはノマド足りえないのだ。 まさに現代の働き方ということになる。

 

 

本書では後半1/3以上のページを割いて、さまざまなクラウドツールの紹介をしている。

本が出てから2年近く経ったため、この部分の情報は若干古くなりつつあるが、それでもモノの考え方の原則は変わらない。

むしろ、本書を読んで情報が古いとおもったら、自分で最新情報をゲットしてみよう。 それもノマドに必要な情報収集力の一つだと思う。

 

 

大人じゃなければ勤まらない

 

 

ノマドで働くことは、「自由」であることは間違いない。

だが、その「自由」を得たうえで、社会人として仕事をしていくためには、企業で働く以上の強い心を持っている必要がある。

上司も同僚もいない。オフィスもない。仕事をさぼっても誰にも何も言われない。

だが、さぼっていれば困るのは自分なのだ。

「アテンションのコントロールは究極の個人パワーだ」

個人として働くからには、必要な時に集中し、誰から命令されなくても、監視されなくても、高い水準で仕事をやり遂げる力が必要なのだ。

 

 

ノマドは情報強者だ

 

 

ノマドで働く人たちは情報に対して貪欲であり、そして情報を得るために、テクノロジーで武装している。

会社という組織に属さないからには、自分から情報を取りに行かなければ、一人ポツンと取り残されてしまう。

しかし情報は何でもかんでも集めれば良いというものではない。

重要な情報、自分に必要な情報だけをいかに効率良く集め、取捨・選択できるか。 これもノマドの生命線の一つだ。

そしてその情報には、人脈も大いに含まれる。

ノマドは一人ひとりは独立した存在だが、自分一人では何もできないことを熟知している。

だからこそ、高いレベルのプロ同士での連携に対して積極的である。

 

 

まとめ

 

 

本書が出版されたのは一昨年の7月だ。

一昨年といえば、iPhone 3GSが夏に発売されてはいたが、まだPocket WiFiは出ていないし、最新型のMacBook Airもまだなかった。

それを考えると、佐々木氏が本書を書いた時点から2年近い時間を経て、ノマド・スタイルはさらに進化しているのだ。

2009年当時と比べると、ノマドという言葉も働き方も、大分一般に知られるようになってきていると思う。

だが、やはりノマドとは何なのか。そして最前線で働く人たちはどのような問題を抱え、それをどのように解決してきたのか。 本書から学ぶことは非常に多い。

自分の働き方に疑問を持ち始めている方は、是非一読をお薦めする。

情報による武装は、ノマドへの第一歩なのだから。

 

 

追記: 本書「仕事するのにオフィスはいらない」のレバレッジ・メモ僕のFacebookページで公開しました。

 

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2011年69冊目の書評としてお送りしました。

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