エッセイ

秋の夜長に読書に没入する快感

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先週10月6日にFacebookに以下の投稿をした。

タイトルは「秋の夜長とジャニー喜多川の亡霊」だ。

全文を引用する。

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【秋の夜長とジャニー喜多川の亡霊】

ある方のジャニーズ事務所に関するFacebook投稿にコメントしたあと、僕のなかに不思議な余韻が残った。

余韻がどこから湧いてくるのか自分の心を探っていたところ、村上龍氏の長編小説「コインロッカー・ベイビーズ」に行き着いた。

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この作品は1980年に刊行された村上龍3作目の小説で、野間文芸新人賞を獲得している彼の出世作だ。

僕は20代の頃に初めてこの作品に触れ衝撃を受け、それから何十回も読み返している。

最初は文庫本で読んでいたが、あまりに読み返すのでボロボロになり、単行本を買い直してまだ読み続けているくらい好きな作品だ。

この作品の主人公は2人の若者、キクとハシだ。二人は別々の場所で産まれた直後にそれぞれの母親によってコインロッカーに捨てられたが生き残り、同じ施設で兄弟のように育てられた。

成長したハシは音楽の才能を持ち、キクと共に引き取られた里親と暮らしていた九州の離島にあった家を飛び出し、東京のスラム街で歌手を目指す男娼(ゲイ)として暮らしていた。

ハシを見出す天才プロデューサーとして「D」という男が登場する。

このDなる男は今思うと、ジャニー喜多川をモデルにしているとしか考えられない。

Dは男とも女とも関係を持てるバイセクシュアルだったが、美少年の歌の才能を見抜いてスターに育てる天才だった。

Dは東京のスラムを黒塗りの車で巡り、立ちん坊をしている若い男娼に声をかけ、才能ある美少年を犯したあとに歌を歌わせた。

Dは豚の脂身が大好物で、豚の脂身だけを腹いっぱい食べた後に目当ての少年を犯して射精し、胃もたれと倦怠感で最悪の気分の時に歌を歌わせた。

最悪な気分の時に聴いた歌声に痺れたとき、Dはその少年の才能を確信して育てることにし、デビューさせスターへとのし上げていった。

Dのこの才覚はカリスマ的であり外れたことがなく、多くの美少年がDの手腕によってスターになっていった。

ハシもDに才能を見出されデビューしスターダムにのし上がっていくが、そこから彼の転落人生が始まり、精神を病んだハシはDによって精神病院送りにされてしまう。

というのがこの作品におけるDの設定。

作品が出たのが1980年ともう43年前のことだけど、Dは明らかにジャニー喜多川をモチーフにしていると思う。

美少年発掘のスペシャリストで少年専門のゲイで業界に強い人脈を持つ影の大御所なんて、他にモデルにする人物がいないだろうw

もちろん本作は小説だし当時の村上龍はまだ若手で芸能界に深く入り込むコネはなかったと思うので、噂をベースに創作したものだとは思う。

でも、本作におけるDが持つリアリティは突出している。

若いころに噂で出回っていた「芸能界って危ないところ」というイメージを全部具現化したキャラクターが、この作品におけるDなのだ。

ここまで掘り下げてしまったので、今日から久し振りに「コインロッカー・ベイビーズ」の海に潜ろうと思う。

秋の夜長にふさわしい長編。

「ダチュラだよ、ダチュラ」

(引用はここまで)

秋の夜長に小説に没入する快感

上の投稿をした日から、「コインロッカー・ベイビーズ」を少しずつ読み進めている。

もう何十回も読んでいるが、直近で読んでからずいぶん時間が経っているので、一部ストーリーの展開の記憶が曖昧になっているところがあって新鮮な気持ちで読めている。

そして43年前に出版された本ということで、今の本と装丁がずいぶん違うことにも最初戸惑うことになった。

冒頭にも書いたとおり、僕は当初文庫でこの作品を買い、後からハードカバーの単行本で買い直した。

文庫より単行本の方がサイズは大きいのだが、43年前の本は今の本よりずっと文字のサイズが小さく行間も狭い。

さらに改行も少ないためページにビッシリ細かい文字が並んでいて真っ黒に見える。

今の本は文字サイズが大きく行間も広く、そして改行も多くページ全体に占める文字数が圧倒的に少なくなっている。

つまり同じ厚さの本でも当時の本の方が文字数がケタ違いに多く、密度が濃いことになる。

最近は古い小説を読む機会がなかったので、読み始めた当初はこの文字の小ささとビッシリ詰まった感じに戸惑った。

幸い1時間くらい読み続けたら文字のつまり具合にも目が慣れたが、昔はこれぐらい文字が詰まっているのが当たり前だったんだと思うと、今の本はずいぶん密度が薄くなっているんだと感じた。

あと、最近はビジネス書や実用書ばかり読んでいたので、久し振りに小説の世界にどっぷり没入する快感を感じている。

この作品は主人公たちがハッピーな時期が短い。

上巻の後半に一部主人公たちがハッピーな「凪」の部分があって、そこを読んでいると登場人物たちが愛おしくて、先に進むのが切なく感じたり。

後半は怒濤の展開になっていくので、ストーリーは分かっていてもやはりハラハラ・ドキドキする自分を感じたり。

いずれにしても、動画や映画にはない、小説ならではの没入感が楽しい。

ビジネス書ももちろん良いけど、小説体験もやはり良いものだなと改めて感じる秋の夜長である。

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