本当は強い日本の農業! 書評「日本は世界5位の農業大国」 by 浅川芳裕

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あなたは日本の農業についてどれだけ詳しいだろうか。

僕はまったくといってよいほど何も知識を持っていない。

新聞やテレビのニュースが報道する範囲のことしか知らない。

「今年は米が豊作だ」とか「長雨で野菜の価格が上がっている」とか、その程度だ。

そして報道されるニュースで良く聞くのが、「日本の食料自給率は低い」というものだ。

実際日本の食料自給率は40%で、食べ物の半分以上を輸入に依存しているというニュースは見たことがあるし、農家が高齢化して耕地面積も減少傾向にあり、農業従事者も減っている、という記事を読み、危機感を抱いたことを覚えている。

本書「日本は世界5位の農業大国」は、そんな新聞報道をベースにした僕らの常識を打ち砕いてくれる問題作だ。

 

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率

浅川 芳裕 講談社 2010-02-19
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by ヨメレバ

 

 

食料自給率は日本だけが使う指標だ

 

 

まず、我々がこの問題を語るに際して絶対に確認しておくべき問題がある。それは、農林水産省が使う「食料自給率」という指標を採用しているのは、世界で日本だけだ、ということだ。

アメリカもイギリスもフランスもブラジルも、このような指標は用いていないし、計算すらしていない。

日本以外の国の食料自給率が示されることがあるが、この数値は農林水産省がわざわざ海外の数値まで計算して公開しているとのこと。

なぜ海外では食料自給率が使われないのか。それは食料自給率が、その国の農業の成熟度を測るのに不適切だからだと著者は説く。イギリスでは、食料自給率を指標として用いることは不適切である、と公言しているという。

食料自給率では、輸出する農産物、つまり国民の口に入らない食料もカウントされてしまうため、自国民の胃袋を自国産の農産物でどの程度満たしているか、という計算は、そもそも成り立たないのだ。

 

 

カロリーベースと畜産飼料のワナ

 

 

次に重要なことは、日本の食料自給率は、「カロリーベース」で計算されている点と、畜産物については「国産の餌を食べて育った動物」だけが「国産」として計算されるという点だ。

カロリーベースというのは、収穫された農産物や畜産物を生産高や重量などで計算するのではなく、その食品を人間が摂取した場合のカロリーで計算するということ。

これが何を意味するかというと、もともとは米を作っていた農家が、減反政策に従って野菜を作るようになった場合には、同じ作付面積で生産高も高く高収益化しても、摂取カロリーは大幅に低くなるので、自給率は下がってしまうことになる。

さらに畜産について、とてもおかしな指標が用いられている。牛や豚が食べる飼料については、多くの農家が海外の安いトウモロコシなどの輸入飼料を使用している。
この輸入飼料を使って飼育された畜産物は、日本で飼育されたものでも海外産扱いとなり、自給率のカウントから除外されてしまうのだ。

どうも食料自給率についてはおかしなことが多いようだ。

 

 

兼業農家の実態と少数精鋭のプロ集団

 

 

日本における農家の軒数は一貫して現象を続けている。しかし、これは日本だけに限ったことではなく、国民あたりの農家の軒数は先進国になればなるほど少なく、ヨーロッパ諸国と比べると、むしろ日本の農家軒数は突出して多い。

そして日本の場合、全農家の7%にあたる優良な専業農家が、全生産高の60%を産出しているのだという。

そして全農家の90%が年間の売上高が100万円未満の、「週末だけ農業をする兼業農家」であり、廃業していく農家もほとんどがこれらサラリーマン農家であるという。彼らは農家数としては90%を占めるが、売上高としては全体の5%しかカバーしていない。

そして、農家数は減少しても、生産高は大幅に増加しているという事実を農林水産省は語りたがらない。
実際日本の基幹的農業従事者数は1960年の1200万人から2005年には200万人に、1/6にまで減っている。

しかし、農業従事者一人あたりの生産高は1960年の約4トンから2005年には6倍以上の25トンへと激増しているのだ。

「農業従事者が減り食料自給率が下がる」というと、生産高が減っているように誤解しがちだが、実際は効率化が進み、大規模経営者による大量生産が可能となったにすぎない。

 

 

生産高では世界5位

 

 

そして決定的なのが、本書のタイトルにもなっている、自給率ではなく生産高における世界ランキングである。

このランキングで、日本は中国、アメリカ、インド、ブラジルに次いで5位。食料自給率が100%を超える農業大国フランスの6位よりも上位なのである。

この数字が何を意味するのか。著者は、日本の農政が過当な保護政策を採り続け米や小麦に対する関税などを設けるなど、自由競争が行われない状況を作っているため、農産物を輸出する環境がないことが問題だ、としている。

そして、なぜそのような管理農政が行われているかといえば、政治家や官僚の利権、カネと権力の問題だと断じている。

海外との自由な競争が行われれば農家はより強くなり、商品は磨かれていく。だが、自由競争になると多くの農業関係の役人の存在意義がなくなり、関係機関の予算は縮小される。

「国民と日本の農家を守る」という旗印のもと、本来は多いに競争力があり強い日本の農業を「弱い」「守らなければ」と騒ぎ多額の予算をつけてPRを行い、結果として関税がかかって高い小麦から作られる高いパンを買うのは国民なのだ。

 

 

まとめ

 

 

本書で書かれている内容は、今まで僕が漠然と感じていた日本の農業の実態から大きくかけ離れていた。

あまりの違いに驚くと同時に、「どちらが本当なのかな?」と戸惑っているのが実際のところだ。

だが、これからは新聞やテレビが流す「日本は食料自給率が低くて大変だ」というニュースを鵜呑みにせず、両面からとらえ考えることが必要なことは確かだ。

同じ数字でも、使い方によって武器にも凶器にもなる。ビジネスでは鉄則なのだが、農政においてもさまざまなからくりがありそうだ。勉強になった。

 

 

2011年49冊目の書評としてお届けしました。

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