記憶は肉体にも宿るのか? “KAGEROU” by 齋藤智裕 [Book Review 2011-011]

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ブックレビュー2011年の11冊目は齋藤智裕氏著、”KAGEROU“を読了。

 

KAGEROU

齋藤 智裕 ポプラ社 2010-12-15
売り上げランキング : 89

by ヨメレバ

 

 

 

今年の読書目標200冊のうち、10%にあたる20冊は文芸書を入れるということで、久し振りに小説を読んでみた。小説を読むのは昨年の村上春樹の”1Q84 Book 3″以来かも。

本書は何と言っても昨年末に大きな話題となっていた、俳優水嶋ヒロ氏のデビュー作であり、第5回ポプラ社小説大賞受賞作であり、今年最初のミリオン・セラー、100万部を売った大ヒット小説である。

今の日本でデビュー作の小説を100万部売るというのは簡単なことではない。もしこの作品がまったく無名の一個人が発表した作品だとしたら、それはとてつもない偉業と言えるだろう。

しかし、本書はそうではない。齋藤智裕というペンネームで書かれているが、俳優水嶋ヒロが書いた小説であるということが発表段階から公にされていて、マスコミの取り上げ方も、「俳優が書いた小説が大賞を取った!」という扱いだった。

芸能人本が売れるのと、純文学が売れるのでは、まったくその扱いが違う。僕は「ホームレス中学生」「上地雄輔物語」なども読んだが、これらは文学として優れているから売れたという側面もなくはないのだろうが、それ以上に「普段テレビで見ているあのタレントの別な側面が見られる」的な興味をそそり、大ヒットするのだと思う。

何故著者水嶋ヒロとポプラ社は、わざわざペンネームを使って投稿させた上で本名を公開するなどという、ややこしいことをしたのか。俳優としての名前を伏せて一般人として応募したなら、発表から発売にかけても俳優であることを伏せたまま勝負するべきではなかったか。

そのような葛藤が、本書を手に取る前にあった。本来このような雑念を持った状態で本を読むべきではないのかもしれない。これらは小説の優劣とは本来関係のないことなのだから。

 

というわけで前置きが長くなったが、”KAGEROU”を読了。

 

面白かったか詰まらなかったかと訊かれれば、間違いなく「面白かった」と答える。著者の心の中にはしっかりと言いたいことがテーマとしてあり、ストーリー展開もしっかりしていて、エンディングには切ない気持ちにさせてくれ、しっかりと心の中に読後感が残った。要は感動したのだ。

では、僕は誰かにこの本を「すっごく良かったから読んでみなよ」と推薦するくらい感動しただろうか。

答えは残念ながらNoだ。

本書を読んで強く感じる違和感。それは主人公「ヤスオ」に対して僕がほとんど感情移入できなかったという点に尽きる。ヤスオは40歳の設定で、僕は41歳。ヤスオとは一歳違いなのだが、全然この主人公に対して思い入れを持つことができなかったのだ。40歳の男として描かれるヤスオが、あまりにも幼いのだ。深みがないのだ。渋味がないのだ。

恐らくそれは、著者の26歳という年齢と、僕自身の41歳という年齢の間にあるギャップのせいかもしれない。一言で言ってしまうと、26歳の若者は40歳の男を主人公にして小説を書くことなど、もともとできないということなのではないだろうか。

人生に疲れて自殺を決意した40歳の男ヤスオ。40歳の男が自殺を決意するという重みや深みが、残念ながら本書からは読み取れない。ストーリー展開がしっかり作られているので最後まで楽しく読めてしまうのだが、「そりゃヤスオが死にたくなるのも分かるよな」という動機付けがされないまま、勝手にストーリーだけが進んで行ってしまうので、徐々に違和感が強くなってしまう。

しかも人間には一人ひとり個性があり、それぞれのキャラクターが全面にある裏側に、長く時代を生きた証し、経験に裏打ちされた深みなどが滲み出てくるものだと思うのだが、ヤスオというキャラクターは、いわゆる「20代の若者が想像する典型的な40代のオッサン」という設定がされていて、その上にペラっと個性が付け加えられているように見えてしまう。

でもそれは、ある意味仕方がないのかもしれない。26歳の若者が40歳の男を描くという行為は、それほど難易度が高いことなのだ。だとすれば、著者の、自分の1.5倍も長く生きている人間を主人公にする、という試みは残念ながら失敗だ。

あと、これはテクニック面で一つ気になったのが、文体が前半と後半で大きく異なっていることだ。冒頭から最初の1/4くらいは、かなり文章に難があるのだが、後半になるに従ってすーっと文章が上手に軽くなっていく。

ポプラ社は、この規模の中編で大賞を取らせるのであれば、というか出版するのであれば、後半のレベルにまで全体のトーンを仕上げてから世に出すべきではないかと感じてしまった。

 

大分辛口になってしまったが、26歳の若者が人間の命という重いテーマを題材に掲げ、小説執筆という地味で苦労の多い作業に取り組み、一つの形に仕上げて100万人もの人々の手許に届けたということは、やはり偉業なのだと思う。

著者には是非これに懲りずに、さらに腕を上げてもらい、素晴らしい第2作、第3作を世に放ってもらいたい。せっかくこうしてデビュー作を読ませてもらったご縁だ。是非第2作も読ませてもらいたいと思う。

期待を込めて。


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