心・心理・あり方書評

自己肯定感を高める方法 — 自分を愛する力 by 乙武洋匡

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「私、自己肯定感が低いんです」。「セルフイメージが低くて」。そんな相談を受けることがある。

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以前の僕も、自己肯定感は高くなかった。

「僕がやってもどうせダメ」「今回だって失敗する」「誰も僕のことを好きじゃない」。

そういった声がどこからともなく聞こえ、チャレンジする前から諦めてしまうのだ。

でも、ずっと昔の子どもの頃は、そんなことはなかった。

僕は天真爛漫でオープンで、まさに「全能感」の塊みたいな子供だった。

その「自分には何でもできる」という自信がどんどん失われていき、屈折と怠惰と諦観の時代を迎え、長くその底辺に沈んでいた。

でも僕はそこから再び這い上がる努力を始め、ふと気づけばしっかりと自分の脚で地面を踏みしめているようになり、自分に自信も持てるようになってきた。

ただ、一つ問題があった。僕は「どうして自分は自己肯定感を再び持てるようになったのか」が、さっぱり分からなかったのだ。

自分が変化した理由が分からないと人に説明もできないし、普遍化できないとブログやセミナーで形にすることができない。

どうしたら普遍化できるだろうか?そう思い、心理学系の本を多読し、ワークショップなどにも参加して学んだ。

さまざまなことを学ぶうちに、自分の中で「自己肯定感はこうして育てることができる」という形が見えてきた。

それを先日のセミナーでもお話しさせていただいたわけだが、非常に参考になった一冊の本を紹介したい。

乙武洋匡さんの「自分を愛する力」という本だ。

さっそく紹介しよう。

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自己肯定感を高める方法 — 自分を愛する力 by 乙武洋匡

障害者は不便だけど不幸じゃない

乙武さんといえば、大ベストセラーとなった「五体不満足」が一世を風靡したので、ご存知の方が多いだろう。

乙武さんは重度の障害を持って生まれてきた。両手両脚がほとんどない状態。「一種一級」という、障害者の中でももっとも重度の認定を受けている。

だが、乙武さんは自分のことをまったく不幸だと感じないと繰り返し書いている。

その秘密は乙武さんのご両親の、乙武さんへの接し方に尽きると乙武さんは説明している。

産まれてきた子供には両手両脚がない。その事実を病院関係者は重く受け止めていた。

「黄疸の症状がある」と母親に嘘をつき、産まれてからしばらく親子は対面できない状態が続いていたという。

事実を隠したまま一ヵ月、遂に病院は事実を伝え、親子を対面させることにした。

その時乙武さんの母親が最初に言った一言が、乙武さんの人生を決めた。

「かわいい」。

母はそう言って喜んだという。表面を取り繕ったのではなく、心からそう思い、初めて自分の息子を抱きしめたのだ。

乙武さんはこう書いている。

「もし、彼女がこのとき抱いた感情が、「嘆き」や「悲しみ」といったものだったとしたら、僕の人生はずいぶんとちがったものになっていただろう」

両親に祝福されて産まれてきた。その事実が、両手両脚がないという、とんでもない障害を背負って生まれてきた乙武さんに、強い自己肯定感を与えたのだ。

その後も乙武さんの両親は、義手や義足を付けず、ありのままの状態で幼い乙武さんを近所や外出先に連れて行ったという。

最初は周囲の人たちは皆ギョッとするが、両親が「あたりまえ」と振る舞い続けることで、やがて周囲の人たちも乙武さんを受け入れ、「応援団」になっていったという。

乙武さんは書いている。「障害は不便だけれど不幸ではない」と。

周囲が思い込みで「あの人は不幸だ」と決めつけてはいけない。

特に一番近くにいる親が「こんな姿に産んでしまって申し訳ない」「あなたがかわいそう」と繰り返し言ったらどうなるだろうか。

その子供は「自分は不幸なんだ」「自分は惨めな人間なんだ」と思い詰めて育つことになる。

ありのままを受け入れ前を向いて生きる。その姿勢が乙武さんをまっすぐに成長させることになった。

親として教育者として子供と接すること

ご存知の方も多いと思うが、乙武さんは大学卒業後、スポーツライターとして活躍する傍ら、期間限定で小学校の教諭になった。

そしてプライベートでは結婚して2児の父となった。

「五体不満足」が出版された時は大学生だったので、「あの乙武さんがもうパパなんだ」と驚く方が多いそうだが、彼ももう30代半ばの立派な父である。

父となった乙武さんは、自分が障害のせいで育児ができない、妻を助けることができないという事実に打ちのめされることになった。

それまで自分の体に対して一度もネガティブな想いを持ったことがなかったという乙武さんが、初めて自分の障害を恨み、精神のバランスを崩すことになった。

しかし、その障害故に至った、乙武さんが親として果たすべき最大のミッションは「自己肯定感を育てること」だった。

乙武さんの2人の子供たちは、父が障害を持つということを当たり前のように受け入れ、父をサポートするようになった。

乙武さんは手が短いため、トイレで用を足す際には家族や友人の介助が必要だ。

ある日乙武さんが用を足すために妻と二人でトイレに入り、妻が乙武さんのズボンを下ろした時だ。

まだ一歳でヨチヨチ歩きの長男がトイレにやってきた。

「便器に手をついたまま振りかえってみると、そこに一歳を過ぎ、よちよち歩きができるようになった長男がトイレに「乱入」してくるのが見えた。僕のすぐ後まで来ると、何やら必死に手を伸ばしている。そして、そのもみじのようにかわいい手が僕のパンツにかかったかと思うと、長男はその手を一気に引き下ろした。

「えっ」

「おおっ」

僕と妻の感嘆の声が、せまいトイレ内に響きわたる。あっ気に取られている僕ら夫婦を尻目に、長男は無邪気に声を上げて笑っていた」

当初は偶然かと思ったそうだが、その後も小さい子供たちは、ごく自然に、当たり前のように乙武さんの手伝いをするようになったという。

そして乙武さんは子供に対して、「愛している」「大好きだ」ときちんと伝えることを、自分のミッションと感じるようになったという。

乙武さんが教員になった時も、学校で同様のことが起こった。

子供たちは乙武さんが普通の人と同じようにはできないこと、例えば給食の牛乳のキャップを開けること、などを、ごく自然に、当たり前のようにサポートするようになった。

お仕着せではなく、ごく当たり前のこととして、できないことをできる人が手伝うという心が子供たちに育った。

それはやがて、乙武さんだけではなく、子供たち同士もお互いをサポートし合うようになり、他のクラスの担任からも、「乙武さんのクラスは優しい子が多い」と褒められるようになったという。

子供たちが優しくなれたのは、「自分は先生から愛されている」「先生は自分を見てくれている」という自己肯定感が強いためだ。

だからこそ、自分の心が安定し、他者へのいたわりの気持ちが生まれていくのだ。

 

【次のページ】自己肯定感が低い人はどうすればいいの?乙武さんのアドバイスを聞こう!!

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