経営・企業文化書評

ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則 by ジム・コリンズ 〜 「良い会社」が「偉大な会社」に飛躍するとき

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ジム・コリンズ氏著、「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」を読んだのでご紹介。

この「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」は、同じくジム・コリンズ氏の作である「ビジョナリーカンパニー」の続編という扱いに日本ではなっている。

しかし、オリジナルの英語版では、「ビジョナリーカンパニー」が「Built to Last」というタイトルなのに対して「ビジョナリーカンパニー2」は「Good to Great」と、タイトルも別々で、別の本という扱いだ。

ただ、扱っているテーマはどちらも共通していて、「偉大な会社」という点は同じだ。

僕は「ビジョナリーカンパニー」は、10年以上前、サラリーマン時代に読んだ。

2011年にサラリーマンを辞めて独立し、自分は会社とは関係ない存在になったと思っていた。

でも気づけば、僕は株式会社ツナゲルの代表取締役社長なのだ。

いまは社員はおらず、奥さんと二人の会社だが、会社を率いていることには変わりがない。

そろそろ、会社のことも本気で考えるタイミングなのかもしれない。

そんなタイミングで、受講中の研修「CCL マスタリートレーニング」で、この本「ビジョナリーカンパニー2」が課題図書となった。

これも読むべきタイミングなのだろうということで、手に取ることになった。

さっそく紹介しよう。

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ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則 by ジム・コリンズ 〜 「良い会社」が「偉大な会社」に飛躍するとき

創業者が偉大だったのではなく、普通の会社が偉大な会社に大化けするとき

「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」は、「ビジョナリーカンパニー」と扱っているテーマは同じと書いた。

だが、切り口がまったく違うのだ。

「ビジョナリーカンパニー」は、偉大な企業と言われる会社がなぜ偉大たるのかを多角的に分析した本だ。

しかし、その結論には、一つ多くの読者を困惑させる内容が含まれていた。

それは、「偉大な会社は、偉大な創業者により作り上げられた」という結論だ。

もしそうならば、すでに創業されているが、「偉大」ではない、「そこそこの会社」の経営者や従業員はどうしたらいいのだろうか?

創業当初から「偉大」でなければならないなら、ほとんどの世界中の「そこそこ」や「良い」会社程度の会社は、永遠に「偉大」にはなれないのだろうか?

もし「ビジョナリーカンパニー」の結論が真実ならば、ほとんどの人にとって、「ビジョナリーカンパニー」は、「素晴らしい本」ではあるが、「役には立たない本」になってしまう。

なぜなら、偉大な創業者に巡り合えなかったならば、あなたが経営する、またはあなたが勤める会社は、後から「偉大な会社」になることはできない、という結論になってしまうからだ。

ジム・コリンズ氏は、この問いに対しての結論を出すべく、本書「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」の執筆に取りかかった。

「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」のテーマは、英語版の原タイトルどおり「『良い』から『偉大』へ」と飛躍した会社の、徹底的な調査と分析、そして結論を提示することだ。

最初から凄い会社だったのではなく、途中から凄くなることが可能だという結論を提示できれば、ほとんどすべての「そこそこ」「良い」会社も、偉大な会社に生まれ変わるチャンスを得ることになる。

それがこの本の狙いである。

「第五水準の経営者」との出会いが企業を劇的に変える

「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」では、ある時点から偉大な企業に飛躍した企業を11社選び、それぞれの会社と同じ業界で、飛躍できなかった会社を「直接比較対象企業」に選び、徹底的に分析した。

そして、飛躍する企業に必要な要素を炙り出していったのだ。

そして、飛躍の最初の条件、そして絶対条件として上がってきたのが、「第五水準の経営者」との出会いだ。

ジム・コリンズ氏は、会社に関わるビジネスパーソンを、以下のように定義している。

第一水準:有能な個人、第二水準:組織に寄与する個人、第三水準:有能な管理者、第四水準:有能な経営者

そして、第五水準の経営者に関する定義は以下のとおりだ。

「個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる」

第四水準の有能な経営者と、第五水準の経営者の違いは、端的にいうと、自尊心、野心の向かう対象の違いだ。

多くの成功した経営者たち、良い会社の経営者たちは、自尊心や野心の向かう方向が、自分自身になっていく。

大邸宅に住む、自家用ジェットを購入する、別荘を持つ、本を出版する、テレビに出演するなど、自分の偉大さを誇示し、自分の業績を誇るようになる。

それに対して、第五水準の経営者は、向かう野心の方向性が、まったく違う。

ジム・コリンズ氏はこう述べている。

「第五水準の指導者は、自尊心の対象を自分自身にではなく、偉大な企業を作るという大きな目標に向けている。我や欲がないのではない。それどころか、信じがたいほど大きな野心を持っているのだか、その野心はなによりも組織に向けられていて、自分自身には向けられていない」

企業で経営者にのし上がっていくためには、我の強さ、押しの強さが必要だ。

だが、実際に経営者になったときに、そのままの我の強さ、押しの強さで経営してしまうと、名誉や金などは、すべて経営者個人に向かってしまうのだ。

調査の過程で分かったことは、第五水準の経営者は、驚くほど謙虚であり、質素な生活をしている。

しかし、企業の繁栄に関しては、猛烈な忍耐力と野心を持ち、徹底的に追求していく。

そして、第五水準の経営者とそれ以外の経営者でもっとも決定的な違いが出るのが、「後継者選び」だ。

第五水準の経営者は、自分が引退したあとも、会社がさらに発展していくよう、自分以上に有能な経営者を後継者に選ぼうとする。

しかし、それ以外の経営者は、たとえ本人がどんなに有能だったとしても、それを自分の功績にして後世まで語り継がせるために、後継者に、自分よりも力の弱い者を据えてしまう。

自尊心の向かう先が自分自身の場合、「俺が抜けたら会社がダメになった」がベストなストーリーとなる。

しかし、第五水準の経営者にとっては、繁栄すべきは自分自身ではなく、企業なのだ。

この決定的な違いが、飛躍する企業とそれ以外の企業を分ける、最初の絶対的な条件なのだ。

絶対に大切なのは「どこへ行くか」ではなく「誰をバスに乗せるか」

第五水準の指導者は、企業を飛躍させるために何をしたのか。

次に気になるのはこの点だ。

この点に関して、調査によって驚くべき事実が判明した。

指導者は、ビジョンをや戦略を描いたり、新しい方向性を示すのだと、ジム氏も思ったし、僕も思ったが、そうではなかったのだ。

飛躍した企業の第五水準の指導者は、まず最初に「バスの目的地」を決めたのではなく、「誰をバスに乗せるか」「誰をバスから降ろすか」決めたのだ。

つまり、優秀な人材を確保することを徹底して行い、また、不適切な人物を排除することにも妥協をしなかった。

「何をすべきか」ではなく「だれを選ぶか」から始めることで、以下の3つの真実が浮き彫りになる。

1 「目的地」ではなく「同乗者」ことが気に入っている人たちなので、途中で「目的地」が変わっても、問題が起こりにくい

2 適切な人たちが乗っているはバスなら、動機付けや管理などの問題がほぼなくなる

3 不適切な人ばかりでは、正しい方向がわかっても、正しい行動ができず、偉大な企業になることができない。

そして、同乗者を決めたあとは、方向性を活発に議論し、会社を前に進めていく。

そして、人事考課が厳格であることも特徴だ。

ただ、人事考課に関しては、「厳格」ではあるが「冷酷」ではない。

また、飛躍した企業の指導者たちは、報酬面などで、自らに対して一番厳しく、役員、管理職と、立場が上の人物に対しても、一般社員よりも厳格な評価を行っていた。

いっぽう飛躍できなかった企業の指導者たちは、大きなビジョンを掲げ、変革を叫び、大規模なリストラを行い、そして、人事考課に一貫性がなく、そして何よりも、自分の報酬については聖域としている例が多かった。

厳しい現実を認識しつつ「針鼠の概念」で突き進め

飛躍した企業の指導者たちに共通していることは、「偉大な企業」になるための方向性を決めるときに、決して楽観的ではないことだ。

時としてリーダーは、自分の意向に沿わない報告や現実を、受け入れることを拒否してしまいがちだ。

たとえば自社の主力製品には魅力が乏しく、現状のまま改善していっても、大きな飛躍は臨めない、というような不都合な事実だ。

しかし飛躍した企業のリーダーたちは、そのような厳しい現実を直視する勇気と忍耐力を持っている。

その指導者たちの姿勢について、著者は、ベトナム戦争で捕虜になった、ストックデール将軍の言葉から、「ストックデールの逆説」として、以下の言葉を紹介している。

ストックデールの逆説

どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。

そして同時に

それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。

厳しい現実を直視しつつ、「最後には必ず勝つ」という不屈の信念を曲げない。

そして、もう一つ大切なのが、圧倒的に単純明快な戦略だ。

飛躍した会社に共通するのは、戦略が圧倒的にシンプルで、そしてそのシンプルな戦略を、厳しい現実を直視して適宜修正しつつも、「最後には必ず勝つ」という信念のもと、貫き通したことだ。

本書では、このシンプルな戦略のことを、アイザイア・バーリン氏の随筆「針鼠と狐」から、「針鼠の概念」と名付けている。

この随筆の中で、狐はずる賢くたくさんのことを知っているが、針鼠はたった一つ、肝心要の点を知っている、という紹介をされている。

賢い狐は、さまざまな作戦を立て、針鼠をやっつけようと躍起になる。

しかし、針鼠は毎回必ず、自分の身体を丸くしてトゲだらけの身体になるという、シンプルな先方で、常に狐に勝つ、というものだ。

飛躍した企業は、狐のようにさまざまなことにチャレンジしたりしない。

シンプルで持続可能な戦略を立て、愚直にそれを繰り返すのだ。

飛躍した会社は、「情熱をもって取り組めるもの」「自分が世界一になれる部分」「経済的原動力になるもの」という3つの円が重なる部分に焦点を当て、方向性を決め、そしてあとは、ひたすら突き進むのだ。

まとめ ビジョナリーカンパニーへの道

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本書は400ページを超える大作で、もちろんこの書評ですべての概念を紹介することはできない。

だが、本書を読んで深く理解し、腑に落ちたことは、以下のシンプルな法則性にまとめられる。

  • 第五水準の指導者を得ること
  • 誰をバスに乗せ誰を下ろすかを決めること
  • 厳しい現実を直視しつつも不屈の精神であきらめないこと
  • シンプルで持続可能、かつNo.1を取れる戦略を立て、針鼠の概念でひたすら継続すること

もちろん、第五水準の指導者を得ることは簡単なことではないし、自社が世界一になれる分野を見つけることも容易ではない。

しかし、これらの要素が揃ったとき、普通の会社、そこそこの会社は、偉大なる会社へと変化を遂げることができる。

この法則性を理解しているのとしていないのとでは、会社を経営する視線や、企業に投資する見方も変わってくるだろう。

そして何よりも、企業に勤める人たちにとって、自分が勤める会社の経営者が、果たして第五水準のの経営者なのか、それを見極めようという目で会社を見るだけで、働き方、会社の選び方も、大きく変わってくるのではないだろうか。

日本は世界でも永続する企業が多いことで知られる。

長く繁栄する企業の作り方に法則性があり、それは、後からでも作れる。

そのことを世の中に示した本書は、まさに名著といえるだろう。

そして本書が扱った「普通の会社が偉大な会社に飛躍する法則」は、そのまま、個人が「普通の人」から飛躍するための法則としても、応用可能だろう。

山岡洋一さんの翻訳も読みやすく、深遠なテーマのこの本を、楽しみながら読めたことを嬉しく思う。

骨太の一冊。オススメです!!

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