野心はないとダメなのか? 林真理子さんの 「野心のすすめ」を読んで

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林真理子さんの「野心のすすめ」を読んだ。恥ずかしながら、林真理子さんの著書を読むのは初めてだった。

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林真理子さんというと、どうもテレビに出ているバブルっぽいタレントさん、というイメージが強かった。

この本は自叙伝的エッセイなので、林さんがその後どのような活動をされてきたのかやっと理解できた。

タイトルにもあるとおり、本書は「野心」について、もうすぐ還暦を迎えられるという林さんご自身のエピソードを中心に語られている。

当然ながら野心について肯定的に語られていて、僕などは頷く箇所ばかりだったのだが、Facebookにこの本のことをポストしたところ、面白い反応をいただいた。

「この本を絶賛しているのは40代以上の人ばかり」という内容だ。

そこで、今回は少しだけ冷静になって、2013年に「野心のすすめ」というタイトルの本が書かれる状況について、できるだけ客観的に見てみようと思う。

 

野心のすすめ (講談社現代新書)林 真理子 講談社 2013-04-18
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前進する社会における不足感こそ野心の源

「野心のすすめ」というタイトルで本が出て売れている、ということは、「世の中には野心が足りないヤツが多い」と感じている人が多い、ということだろう。

では、この本を買っているのは「僕(私)には野心が足りないな。この本を読んで勉強しよう」と思った若い世代だろうか。

それとも、「おれたちが若かった頃、もっと皆ギラギラしてたもんだ」と昔を懐かしむ、バブルを謳歌した世代のひとたちだろうか。

 

 

「草食化」という言葉もあり、若い世代の人々には明確な野心を持たない人も多いように感じる。

本書では、林さん自身がいかにダメな若者だったか、そしてそこから屈辱をバネに「有名になりたい」「テレビに出たい」「作家になりたい」と、野心を全面に出して生きてきたかが綴られている。

読んでいて僕は同意する部分が多かったのだが、やはり2013年の今と当時で違うんだろうな、と感じる部分が幾つかかった。

そのうち最大のものは、やはり、社会の環境の差が大きいのではないかと感じる。

人間一人ひとりが野心を持つための前提として、社会全体が「昨日より今日、今日より明日はもっと良くなっているだろう」という空気に包まれている必要があるように思う。

僕自身はバブル絶頂期には大学生だったが、それでも中学から高校、大学と進学するにつれ、テレビのニュースでは「Japan as No.1」と騒ぎ、世界の土地や企業を日本企業が買い占めるさまが報じられていた。それは、一種異様ではあったが、間違いなく高揚感に包まれた時代であった。

 

 

そもそも日本は第二次世界大戦の敗北による壊滅的なダメージを「底」として、そこから奇跡の復活を遂げ、そのまま高度経済成長期を突き進んできた。

石油ショックや円高不況などの停滞期は経験しつつも、バブル崩壊までは、原則として右肩上がりの時代が40年以上ずっと続いてきたと考えていいだろう。

そのような、社会全体が前に進んでいるムードの中で、「自分だけが取り残される」という不足感というか欠落感が生じた時に、個人は野心と呼ばれるものを自然と抱きやすいメンタリティになるのではないだろうか。

2013年は自民党に政権が戻り、アベノミクスで景気は回復基調ではあるが、まだ「デフレ終息宣言」も出されておらず、1990年代前半までのような好景気にはほど遠い状態だ。

日本社会の明日が今日よりも良くなるであろうというムードがないなかで、「この世の中で成り上がってやろう」という野心を持てない人が多いというのは、むしろ当たり前のことなのではないか。

「頑張って成り上がれば良い暮らしができる」「テレビに出て有名になりたい」

そう思えるだけの根拠を持てないから、若者たちは野心なんかに興味がないのではないだろうか。

 

 

 

情報発信はマスメディアしかできなかった時代

個人的に「野心」とマスメディアは深い相関関係があるように思う。

僕らが子供の頃には、「有名人」とは「テレビに出ている人」だった。

歌手、野球選手、政治家。みなテレビに出て人前で歌ったり走ったり喋ったりしている人だった。

もう少し年齢が上がると、テレビだけはなく、雑誌や書籍に出ている人、文章やマンガを書いている人も有名人に加わることになる。

皆が同じテレビ番組を視て、同じ雑誌を買っていた。ピンクレディーを知らない同級生はいなかったし、ほとんどの男の子は「コロコロコミック」を読んでいた(買ってもらえるかどうかは別として)。

情報発信がマスメディアの専売特許だった時代には、「情報発信者になる」ためのハードルは高く、マスメディアから認定されないと情報発信はできなかった。

だからこそ、作家になりたい人はせっせと作品を書いて出版社に送り、歌手になりたい人はタレント事務所のオーディションを受け、何とか関門を突破しようと必死になったのだ。

関門を突破できないと情報発信ができない、という厳しい制限があるからこそ、「どうしても突破したい」「一部の選ばれた人になりたい」という野心が生まれたのではないだろうか。

 

 

しかし、インターネットの登場がすべてを変えた。

いま、情報発信はマスメディアの専売ではなくなった。

文章を書きたいならブログを書けばいい。僕もそうして文章を書き始めた人間の一人だから良く分かる。

僕のブログには毎日何万人もの人が遊びに来てくれるが、ハッキリ言ってこの人数は、売れない雑誌よりもずっと多い。

もちろん何万人もの人に毎日来てもらえるブログに育てることは大変なことだが、「とりあえず情報発信」をしようと思えば、今日からでも明日からでも、誰にでも1円もかけずにできてしまうのだ。

歌を唄ってる姿を発信するのだって簡単だ。iPhoneで動画を撮影してYouTubeにアップして公開すれば、1円もかけずにあなたの歌を全世界に公開することができる。

トークイベントを生中継することだってUstreamなどを利用すれば簡単だ。

100万人に見てもらおうと思えば大変な運と努力と才能が必要かもしれないが、500人に見てもらうくらいなら、ちょっと頑張れば何とかなるかもしれない。

インターネットの登場により、情報発信、自己表現のハードルはほとんどなくなってしまった。

ハードルがないところに野心は生まれない。

もちろんメジャー志向の人はい続けるので、全員の野心がゼロになるわけはない。

しかし、インターネット時代には、20年前のような野心を持つ人の数が減っているのは、時代の変化として当然のことなのではないだろうか。

 

 

 

野心がないとダメなのか?

バブル期を学生の立場で見てきた僕としては、野心はないよりあった方がいいようには思う。

テレビに出たい。高級外車を乗り回したい。著作を大ベストセラーにしたい。

そういう想いが正しい方向に機能したとき、人は強い内的動機付けをされ、目標に向かって邁進する推進力を持つことは確かだ。

でも、その一方で、野心に満ちた世界というのは、普遍的にある状況ではなく、人間の歴史の中で、ごく限られた時期に限定されるものなのではないかとも思う。

どんな時代にも野心家は存在するだろう。ただ、その時代ごとに野心家の比率は変化して当然だろう。

バブル期のように誰でも濡れ手に粟で大儲けできる、というような状況であれば、「俺も億万長者になってやる」とギラギラした人が増えるのも当然だろう。

いっぽうで、バブルが崩壊して、バブル期にギラギラ野心的に活動した人のほとんどが破産し、堅実な経営をした人たちだけが生き残ったという「寓話」を聴かされて育った世代は、「野心なんか持つとロクなことがない」と判断してコンサバに生きても不思議はない。

バブルでいい想いをした人たちの尻拭いをさせられ、「生まれてからずっと日本は不況」という世代の人たちに、「野心を持て」と言っても、それは無理な注文なのではないだろうか。

野心とは根源的な人間の本能によって生じるものだ。

まずは多くの日本人が健全な野心を持てるようなオーラが街に溢れるよう、僕たち一人ひとりが空気を変えていく必要があるのではないだろうか。

 

 

 

まとめ

高望みをするためには、高いところに「望む場所」がなければいけない。

ところが、現実には、高望みするべき場所が、消滅しつつあるようにも思える。

歌手を目指しても、いまはCDも売れないし、昔みたいなヒットは出ない。

力士を目指しても、日本人の横綱なんか何年も出ていない。

億万長者を目指すと色々因縁をつけられて逮捕されたり国外に追放されたりする。

 

 

僕自身は健全な野心を強く持つタイプの人間だと思うが、日本に野心が足りないのには、足りないなりの理由があるのだろう。

冒頭に書いたとおり、この本を絶賛している人の多くが40代以上なのだとしたら、それは単に「あの頃は良かった」的称賛が集まっているだけなのかもしれない。

この本を若い世代の人たちが読んで、「よし、俺ももっと上を向いて突き進んでみよう」と思っただろうか。

その点が気になる。

日本の景気回復が持続的なものとなり、前回のバブルのようなバカな失敗をせず、着実な歩みができるようになったとき、再び野心に満ちた人々が、街を肩で風を切りながら歩くようになるのではないだろうか。

そんな時代の到来を、ちょっと鬱陶しそうだな、と眉を潜めながらも期待して待ちたい。

 

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