あなたの温もり 思うこと  不明編




1997年3月31日(月)


Hey Lula / Yutaka Fukuoka


ボリュームを上げて両眼をきつく閉じる、


バーボンの香りと春の湿気を帯びた停滞した大気を反響させあなたの声が耳に届くように感じる、


この部屋は透明度が低く粘着質の二酸化窒素に満たされ、


口からこぼれるコトバは渦を巻き濁流となり黄砂とともに偏西風に乗り、


攪拌され拡散され希釈され、


散り散りに分解されていく、



上昇する気温と湿度は僕達の脾臓を肥大化させ続け、


両眼から流れ続けるミドリ色の膿は僕達の背丈よりも高くこの街を覆い尽し、


コンクリのビルの上一人踊り続ける唖の老人のひきつるような甲高い笑い声だけが、


春霞に煙るジャングル越しにうつろに現れた巨大な下弦の月の赤さを強調し、


エリダヌスの微かな流れを天空から消し去っていく、




腐った段ボール箱にカーネーションの花を敷き詰めた中に放置されていた赤ん坊のただれた泣き声が、


蒼く灯る水素ガスの光りと融合して、


海王星の軌道を眩く照らし出すとき、


僕達の骨は砕け肉は溶け神経は蒸発し、


無防備なココロは白金色に照らし出された黄道めがけ、


偏西風に逆らうように春霞の中昇っていく。




段ボール箱の中の赤ん坊のすすり泣くような過呼吸のもたらす無酸素状態に、


内臓をコンクリでガチガチにされた僕達の砕け散った骨粉は一斉に涙を流し歓喜の声を上げ、


海王星の軌道を照らし続ける白金色の光りの中、


視力を失ったまま、


子宮への帰り道を求め、


今日も彷徨い続ける。







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