思うこと




1997年2月25日(火)


Circle Dance / Yen Chang


出張二日目。昨日の分の日記はここ

昨夜妙に早く眠ってしまったので朝はモーニングコール前に起床。カーテンを開けたままだったので朝もやの中の町並みの真上にぼんやりと昨夜の月が残っている。天気は快晴。

NHKのローカルニュースが見たくてテレビをつける。あ、やってるやってる、山形県議会の話しとか、国道の事故の話しとか、重油の話しとか。

顔を洗っているうちにシャワーを浴びたくなった。しばらく悩んだ末、風邪が抜けきっていないのとボディ・ブラシがないのを理由に朝シャワーは断念。うーむ。

ここのところずっと朝食を食べない習慣がついていたので空腹感はそれほどない。コーヒーが飲みたいのだが、部屋にある「コーヒーバッグ」をいれる気にはさらさらならずぼーっとしながら身支度を整える。何故かネクタイを2本余分に持ってきていたので、両方をシャツにあわせてみて、結局地味な方に決定。

ホテルによってはドライヤーも置いてないところがあるので念のため持ってきていたのだが、部屋に置いてあったドライヤーが僕のものよりはるかに立派で逞しそうなものなので、ちょっとだけ悔しがる。意味もなく意地を張って自分が持ってきたドライヤーを使って髪の毛を固める。うーむ。やっぱ使い慣れたヤツの方がいいねぃ←嘘。

一通り身支度が終わってもまだ電車の時間まで一時間もある。どうやって時間を潰そうかと思っているうちに、駅まで歩いたら気持ちが良いだろうということになり、そそくさとチェックアウトすることにする。部屋を出ようとするとドアのノブに、ビニール袋に入った「山形新聞」の朝刊がぶら下がっていたのでカバンに押し込む。

まだ朝早いのに、フロントにはぞろぞろとオヤジの行列が出来ている。一番短そうな列に並んで支払いを済ませる。フロントのおっさんが妙に気取っていて可笑しかった。何だかBrian Ferryみたい(笑)。

地図も何も持たないでホテルを出る。目の前のバイパスと反対方向に歩いていけば駅に着くはず。

でたらめに住宅地の中にわしわしと入っていくと、犬の散歩のお年よりがこちらを向いて歩いてきた。道を聞こうと思ったら手前の角を曲がっていってしまった。むー。駅前の「αイン」というビジネスホテルの看板が見えると思ったのに全然どの方向を見ても見えない。何となく歩いている方向が間違っているような気がして角を左に曲がる。

てくてく歩きながら時計を見る。まだ電車の時間まで40分ある。あせらずにどんどん歩く。

住宅街の道が左に折れると、目の前に大通りが現れた。すると開けた視界の正面に目標のホテルの看板が見えた。やっぱり曲がって正解だったらしい。ほくほく。

大通りの脇を小川が流れている。橋の上から覗き込むと小さな魚がたくさん泳いでいた。魚の色合いが地味で、いかにも寒そうな感じがした。

方角が確認できたので、安心してずんずん歩いていくと通学途中の高校生の群れに遭遇した。女の子の中にはちらほらスーパールーズを履いてる子もいる。うーむ。去年の秋にはルーズソックスもあまりいなかったのに。。。時代の流れは早まってるぞ、アキラ、などと不明なことを口走りつつ駅に到着。

乗る予定の各駅が出るまでまだあと20分あるので、まだ改札が開いていない。売店を冷やかそうと思ったらまだ開いていなかったので、持ってきた「日経ビジネス」なぞを読みながら企画書の骨子を練る。帰りの新幹線の中でドラフトだけ作ってしまおうと思っているもので、来年度の社内体勢の標準化に関するもの。これがないと受注計画の根本が揺らいでしまうからどうしても今月中に作っておかないとマズイ。

改札が開いたのですぐにホームに出る。殆どの人はサムイのでまだ待合室に残っている。

跨線橋を渡って反対側のホームに降りる。ホームの反対側には陸羽西線経由の快速が止まっている。それなりに人がいるホーム上に一人の怪しいオヤジを発見。実はこのオヤジ、僕にとってはすごく印象の深い、なじみのオヤジ。もちろんオヤジは僕のことを知らないと思うけど。

実はこのオヤジ、駅弁売りのオヤジなんだけど、昼間に特急に乗るといつも必ず余目から乗り込んできて酒田で降りていく。普通特急の駅弁売りと言えば、お姉ちゃんがカートに駅弁やジュースやコーヒーを積み込んでコロコロ押しながら何度か行ったりきたりするんだけど、このオヤジ、いつもスーパーの買い物カゴに駅弁だけ詰め込んで、青のジャージの上下に野球帽という姿で小声でボソボソ言いながら早足で駆け抜けて、あっという間に降りていってしまう、いかにも怪しいオヤジなのだ。

今回出張する前に、部下の杉本君と、「絶対あのオヤジの駅弁食べる」と決意表明していたほど我々にとっては「噂のオヤジ」だったのだ。

昨日の特急は夜だったので車内販売が乗らないことは知っていたので、今日の帰りに賭けていたのだが、まさか朝っぱらからこんなところで会えるとは思いも寄らなかった。

いつもの買い物カゴではなく、スタンドのようになった弁当入れにたくさん弁当を詰め込んで、オヤジはその前に野球帽に青のジャージの上下で立っていた。ヨロコビの余り見つめる僕と目が合うと、弁当を指さすような仕草を見せた。

さすがにまだ駅弁を買う気にはなれなかったので目をそらし、近くにそのままつったっていた。徐々に快速に乗り込む乗客が増えてくる。僕が乗り込む秋田行きの各駅もホームに入ってきたが、乗り込む人が殆どいないので、僕はしばらくそのままホームにつったってタバコを吸っていた。

ホームにどんどん活気が出てきて、人の流れが顕著になってきたとき、オヤジが唸り始めた。「べんとう〜、べんとう〜、お〜べんとう〜に、おちゃ〜、」

晴れ渡った空には鳥海山が雪を被り目の前にそびえていて学生達は少しだけ頬を赤くしてでも鼻ピアスとかしてたりもしていかにも東京からの出張組のサラリーマン達はトレンチコートの襟を立て地元のオバサン達はワハハと声高らかに笑ながらすれ違うホームの上にオヤジの声が溶け込んでいく。

カートに乗せられてお姉ちゃんの愛想笑いと共に運ばれる弁当よりも遥かに重厚感のある駅弁。きっとオヤジはまだ羽越線が電化される前の蒸気機関車とかがまだ走っていたころから駅弁を毎日売っていたんだろうと確信してしまうような冬の透き通った空気にあっと言う間に溶け込んで昇っていくオヤジの駅弁売りの声。

じっと見てしまうと恥ずかしいので僕の乗る二両編成の列車が出るまで、僕はずっと後ろ向きにオヤジの声を聞いていた。



Rhythm / UA


今日は北西の風は全く吹いていない。車窓に映る鳥海山も心なしか穏やかに見える。

防風林の松は風が吹いていなくても曲がったまま立っている。何十年もずっと北西の風に吹き付けられ続けたんだろう。痛々しさを感じる。

ようやく日本海と出会う。真っ青な空に真っ青な日本海。水が冷たそうだ。鉛色の空に鉛色の海を予想していたのでちょっとだけすっぽぬけたような気分。

遊佐を過ぎると単線区間になる。常用樹にすれすれに電車が走る。何となく今が冬であることを忘れる。

30分もすると目的地「象潟」に到着。一緒に降りたのは、数人の学生と疲れたサラリーマン1人。

改札を出て帰りのきっぷを買う。駅を出ると駅舎越しに鳥海山がバカでかく見える。しばらくボーゼンと眺めていると、女子高生の群れにジロジロ見られていたので電話ボックスに入ってカイシャに電話を入れる。この辺りはDoCoMoの電波が届かないのだ。よい場所だ。

尿意を催してきたので電話ボックスを出て駅のトイレに入る。サムイ〜〜。

アポの時間までまだ20分ほどあるのでとりあえず駅前から国道まで意味もなく歩く。朽ちかけたような素泊まり宿や日に焼けてしまってグレースケール状態になったサンプルの並ぶ中華料理屋。商店街と言うには余りに寂しいメインストリートを15分かけて往復する。レコード屋が一件あるが、まだ閉まっていた。

アポの時間が迫ってきたので客先へと向かう。駅前にはやはり除雪された雪が高く残っているが、道路に雪は全くない。

高い雲がちらほらと見えたが、真冬の東北とは思えないほどキレイな青空だった。担当者が僕の顔を見て、「立花さんはホントに晴れ男だなあ」と言った。

やっとありつけたコーヒーを飲みながら、意味もなく嬉しくなってわははと笑った。







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