あなたの温もり 思うこと  不明編




1996年12月5日(木)

Je t'aime moi non plus / Serge Gainsbourg

海を見ていた。


雪が舞い、波が雪と交じりあい、エメラルド色の中にグレーが溶けていく。


窓を見ていた。


うつむく自らの顔を映す窓越しに羽ばたく鳶達の姿。


寄り添うように雪から自らを守る集落。


ねじ切れるように悲鳴を上げる防風林の松の群れ。


唸りをあげすれ違う除雪車のオレンジ色の車体。


あと少しでニナの国だ。


ふと、そんなことを思ってみた。




La Decadanse / Serge gainsbourg




首筋を伝う熱情に唇を添え、


吐息が大気に触れ白濁する時に発生する生命の、


一瞬のうちに凝縮しつつ反発する冬の長い夜の、


ほんのわずかな煌めきの中に、


うずくまり涙を流すあなたの姿と、


包むように唄い続ける黒い川の流れは、


僕とあなたの全てを含有し拒絶し融合し、


湿度を徐々に上げ続けるロンドンとダブリンの、


ヘンリーの悲鳴がジューンの空ろな瞳に投げ掛ける、


粘膜の摩擦を待ち望んだ人々の喝采により、


裸のまま昇華していく。




微笑む瞳の放つ暴力的な衝撃に、


コンクリは冷えアスファルトは融解し、


足下を掬われた僕はすがりつくように、


泣きながらあなたの乳房をむさぼり、


子宮への帰り道はないかと唇を這わせる。




瞼の皮膚を貫くような、

ハレーションの中に構築されゆく、


幻想の城と慟哭の中、


雪の幻想と灯る水銀灯に全てを、


預けてみた。




Bonnie and Clyde / Serge Gainsbourg avec Brigitte Bardot



爪を食い込ませる、


腕の血管が裂ける、


鮮血が迸り視界を遮る、


降りてきたのは鷹か鷲かコンドルか、


両腕をチカラの限り開き断続的な脈を捧げる、


碧の世界、橙の雪、紫の唇。





祈るようにカラダを丸める僕を蹴落とすように、


上空を舞う粉雪と彗星の軌道が、


ゆっくりと、静かに、黄道を横切り、


天王星の反射光の眩しさに、


眼を閉じたまま、あなたを犯す。





Climb Baby Climb / Pink



カタマリがぶつかってくる、


有機的化合物である生命の無機的な分裂の象徴である僕の中に、


美しく紅潮した皮膚の中に溶け込むように、


螺旋上に墜ちていく。




Climb, Baby, Climb!







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