あなたの温もり 思うこと  不明編




1996年10月24日(木)

Both YenS/ Yeng Chang





October 22th, 1996





駅からずいぶん歩いた。迷っているかと錯覚するほど。



階段を降りる。空間が広がる。



予想以上に、無機質な空間。





開演一時間前、まだ席には余裕がある。



どうやら僕が一番乗りだったらしい。



テレビカメラの下の、一番良い席に陣取り、まずはエビスビール。





何となく落ち着かない。喉が渇いて、ビールを流し込む。



あっと言う間に一本空いてしまった。もう一本。



真っ赤な髪に、手首まで入れ墨の入った兄ちゃんが、妙に慣れたてつきでビールを注ぐ。





正面にはリアルなワニと、マーシャルとオレンジのアンプ達。





そうだ、ここはクロコダイル。



スーツを着ているのは僕と、もう一人だけ。





改めてワニと向き合い、息を止めてみる。







Bon Voyage / Yutaka Fukuoka



夏の風が入り口から入り込んでくるのを感じて顔を向けてみる。



ひさしぶりだねげんきさんじゅっぷんもまよっちゃってさきもちわるいたくしいのろうかとおもっちゃった





ネオン管が走る。カウンターの上下に張り巡らされている。真っ黒な髪を逆立てたおにいちゃんが、常連っぽいお姉ちゃんに必死に話しかけてる。夏の終わりにあなたがみたのときっとおなじのはずのあなたの顔にこんばんわした。





Lovin' Us (Earth) / Yen Chang

案内係の説明がどうも路地裏みたいなこと言ってておかしいからきっとあなたとおなじように迷っててなかなかこれないからまだきっとすごくあとにくるとおもうからでもえきからすごくはなれてたからなかなかみつからないからきっとまちがってるからどうしてもそんなとおくまであるかないとおもうからひきかえしたほうがきっとすぐにつくからほうこうおんちじゃないとおもうけどきっとまだまだこないとおもうよって言ってたらあなたがきた。





Shakti / Yutaka Fukuoka

僕は二人を知ってるけど、二人は初対面だから、まずは初対面の挨拶から。



ハジメマシテ。コンバンハ。



あ、はいはい、僕は誰でしょう。



一通り日記巡りの話しが続き、天井の照明が落ちる。





まずはバーボンをロックにしてもらい、タバコでも吸ってみる。





Hey Lula / Yen Chang

青と赤のスポットが融合してスモークとハレーションを起こす。



脇役にまわったネオン管が虚しく存在感をアピールしている。





ヴァイオリンとピアノとヴォーカルの荒らした後のステージにすうっと現れる。



中心に照らしだされる髪の短いどこにでもいるような男がガバッと口を開き、眼を閉じ、満面の笑みのまま、僕とあなたとあなたを吸込むように歌い始める。





歌詞なんてない、だから、ヴォーカルではなくて、ヴォイスだ。



ギターが繊細な音をヴォイスにからませていく。





容赦なくガンガンと土足で踏み込んでくるから、僕も必死に応戦するけど、屈服するしかないような、透明感と繊細さとチカラと強引さと美しさと。





右からはゴンゴンぶつかってくる。左にもそのゴンゴンが伝わっていく。三位一体か(笑)。



バーボンをどんどん飲みながらタバコを吸い続けると、徐々にチカラに押されていることを実感する。



生を歌う、声という楽器。




オルガンだ。Organだ、organicだ、背中からチカラが抜けていくから、右手の自由が奪われていくことが心地よく、左手が自分を支えることができない。





聞かれることを無視して螺旋階段をくるくると進んでいくアーティストに、必死にすがりついて守ってもらいたくてこっちを見てもらいたくて僕のために唄って欲しいから、バーボンをごくごく飲む。青のスポットが彼の背後から僕達をスモーク越しに照らし、僕は目が眩み、彼の叫びに身を任せる決心をすると、急にカラダが楽になって、リズムがカラダの中に生まれてくることを感じ、自然とリズムが血管の中に入り込んできて、それが不整脈を生みながら、僕は海と空と星とヴァギナを見たような気がして気が遠くなり、うつむいてタバコを吸う。





赤かった髪が金色に染まり、エレキヴァイオリンが表層的狂気を演出してカヴァーを外したピアノから落ち着きのない不協和音が奏でられるとき、ギターが満を侍してディストーションのボタンを踏み込み、あなたのヴォイスに戦いを挑んできた。





僕はもう完全に降参しているのに何度もいかされるようにダメを押してくる。バーボンとタバコとスモークと赤い髪のウェイターとエスプレッソマシーンと眼鏡と唄とギターとキーダとピアノとヴァイオリンとエンチャンとむかしはおれもぴんくってばんどでろっくやってたんだぞと。



不協和音の中に狂気がにじみ出てくるのを感じるのはきっと僕が狂気を内面に包含しているからだと思うからきっと僕のそういう面を露出させたがる音というのは極端に狂気を持った人間か極端に幸せな人間か極端に悲しい思いをした人間か極端に辛いことがあった人間か極端に暴力的な人間かどんな人間か分からないけど僕は彼の声に屈服して声を出して僕はもうあなたに夢中だということを告げたくてもバーボンと不整脈とディストーションとピアノとエレキバイオリンと右手と左手のせいで声がでないからせめて眼に涙をためてみたけどきっと誰も気付かなかった。



照明が上がったとき、始めてゆっくりと呼吸ができて、でもそんなはずかしいぢゃないか、みんながみてるんだから、らいぶだからって、みんなとんでるからって。あ、でもうれしい。





徐々に覚醒する自分を自覚しながら表に出る。免許証が人質になった。明日もくるぞ。





地上にのぼると大気が新鮮で、冷たかった。笑顔が二つ並んでいると、僕も笑っていた。





強烈な時間の後の、ヒーリングの時間が足りないから、3人して何かを探すようにゆっくり歩く。





きっとまた、すぐ、会えるから、こんどは、彼も一緒にに。きっと、帰ってきたときに。







あのの、記憶と共に。
















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