書評

企業人として生きる 書評「日本型プロフェッショナルの条件」 by 安永雄彦

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先日P.F. ドラッカーの「プロフェッショナルの条件」を読み、書評を書いた。

その書評を読んでくださった方から奨められたのがこの「日本型プロフェッショナルの条件」である。

僕は本書の存在も著者の安永氏のことも知らなかったのだが、興味を持ち早速読んでみた。

 

日本型プロフェッショナルの条件

安永 雄彦 ダイヤモンド社 2009-12-11
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by ヨメレバ

 

読みつつ感じていたのは、本書は「日本企業におけるプロフェッショナルなビジネスマンの条件」と呼ぶべきで、ドラッカーの「プロフェッショナルの条件」とは若干スタンスが異なる視点から書かれている、という点である。

それは悪い意味ではない。終身雇用を前提としてきた日本でビジネスマンとして成功していくには、従来企業に所属することが大前提となってきたし、一度就職したら、転職しないということが当たり前だったのだ。

では、日本型の企業人に、かつては必要なかったが、今、そして今後必要になっていくものとは何だろうか。

それこそが本書で取り扱うテーマである。

数年前までは、日本企業に勤めたサラリーマンの多くは、一度も転職を経験することなく定年まで勤め上げ、そして引退していった。

だが、今日本人ビジネスマンにとっても、転職は珍しいことではなくなり、それに従って自分を市場に売込むというニーズが発生してきている。

三和銀行の銀行員としてキャリアをスタートさせ、ヘッドハンター、コーチ、僧侶など、様々な顔を持つ著者が、現代の日本人が身につけるべきスキル、そして立脚すべき考え方を教示してくれる。

さて、本書を読んでいると、「既視感」にも似た、不思議な感覚を感じることが何度かあった。

それは何か。

それは、既に失われてしまったか、または失われつつある古き良き日本企業のかつての姿である。

著者はバブル期前に三和銀行に入行しているため、日本のバブル期の記述なども多い。その時期の日本企業とそこで働いていた従業員達の姿が、まざまざと蘇るようなのである。

会社という絶対的な枠に守られてきた日本のビジネスマンは、今や守ってくれる後ろ盾を失った。

だからこそ、コーチとして、またヘッドハンターとして、多くのビジネスマンを導いてきた著者の立場から、これあらの日本人がどうやってプロとして生き残っていくかの心構えを説いている。

ただ、「日本型」と銘打ってはいるが、これからの時代に求められる「プロフェッショナル」の条件は、最終的には日本でもアメリカでも変わらない。

独立した「個」としてスキルを持ち、学び、そして「覚悟」を決めることが必要だ。

印象的なのは、「日本型プロフェッショナル」についての本の結びに、Appleのスティーブ・ジョブズの有名なスタンフォード大学卒業式でのスピーチが引用されている点だ。

プロフェッショナルに世の東西の違いはない。ただ、そこに至る過程は歴史や文化によって違う。

両者を読み比べると面白い。

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