書評

集計ではなく分析せよ! “入門ウェブ分析論” by 小川卓 [Book Review 2011-018]

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ブックレビュー2011年の18冊目は小川宅氏著、「入門ウェブ分析論」を読了。

 

入門 ウェブ分析論~アクセス解析を成果につなげるための新・基礎知識~

小川 卓 ソフトバンククリエイティブ 2010-10-01
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by ヨメレバ

 

 

自分でブログを書く人なら誰しも、アップしたエントリーが一人でも多くの人に読まれればと願うだろう。そして、ただ読まれるだけではなく、読んでくれた人に何らかのプラスの影響を与えたいと願うはずだ。

「プラスの影響」というと大げさだが、例えば「この本面白そうだから読んでみよう」や「iPhoneのこのアプリ入れてみよう」といったことで十分なのだ。

自分が良いと思って薦めたモノやサービスを、ブログを通じて他の人が気に入ってくれて使ってくれる。情報発信者としてはとても嬉しいことだ。

ブログを書くようになって読者の人からの反応が返ってくるようになると、最初のうちはそれだけで嬉しくて舞い上がりテンションとモチベーションはうなぎ登り。永遠にブログを書き続けられるのではないか、という全脳感を感じたりずるものだ。

だが、それは長くは続かない。ブログを大きく育てるのは短期勝負ではないのだ。ずーっと続く長距離走と同じで、いつまでもどこまでもコツコツと続けていく、持久力のいる作業なのだ。

自分自身をブロガーと名乗るには、3ステップの試練があると個人的に考えている。まず始めるという試練。ほとんどの人は「何となくやってみたいな」と思いつつもスタートすることができない。

そし手2つ目の試練は、始めてから読者がつき軌道に乗るまでの日々だ。最初はほとんど読者がいない状態から、一人、また一人と読者を獲得していく過程を楽しめる人だけが生き延びることができる。この過程でも多くの人が脱落していく。

そして最後の試練は、読者を獲得し勢いに乗ったブロガーに訪れる最大の試練だ。

それは、最初の勢いが尽きた、いわゆる「ネタ切れ」の試練。短期間で人気を得た多くのブロガーが、最初の息切れの試練を乗り越えることができず更新が止まり、そしてそのまま消えていく。

そして恐ろしいことに、この3つ目の試練は、一度だけやってくるものではなく、ブロガーを続ける限り何度でもやってきては僕らを苦しめるのだ。

大きなイベントがあった時や新製品の発表があった時など、僕らは知らずしらずのうちに通常以上にテンションを上げてブログ更新をしていたりする。そして僕らはえてして、自分が通常のテンションではないことになかなか気づかない。

やがて大きな波が去った時、僕らは自分の中にはもうネタが残っていないと気づき、呆然とするのだ。

多くの人は、この段階でブログの更新を止める。それはある意味聡明な判断なのだ。世の中にはブログの更新よりもずっと楽しいことがたくさんある。一日Macの前に貼り付いて湧いてこないアイディアを練る必要は全然ない。

だが、自身を情報発信者と自覚してしまった人間は、この「枯渇の地獄」を乗り切らなければならない。

そしてこの段階になった時、僕らは「情報」という強力な武器が必要であることを初めて知るのだ。

「いつ」「誰が」「どの記事」を読みに来てくれたのか。そしてその記事を読んだ後に別の記事にジャンプしてくれたのか、それともそのまま帰ってしまったのか。

どこの誰が僕のサイトを読んでリンクを張ってくれたのか、そしてそのリンクからは何人の人が遊びにきてくれたのか。

これらの「情報」という武器は、素手で闘っていた僕らに鎧と兜、そして剣を与えてくれる。

本書「入門ウェブ分析論」は、僕ら個人のブロガーはもちろんだが、ECサイトや企業ホームページなど、ビジネスでWebを活用する人々が、本気で売上や顧客満足度をアップさせ自社の利益を向上させるために読む「本気の本」である。

従って、中には個人ブロガーには関係のない込み入った内容の箇所も含まれてはいるが、大部分は僕らブロガーにも多いに役立つ徹底的な情報となっている。

例えば多くのブロガーはGoogle Analyticsを使ってアクセス・ログを取得しているだろう。そしてそのログを定期的に眺めている人も多いと思う。

だが、本書を読むと、そこから先に僕らが何をしなければならないかが明確になってくる。

例えば、自サイトの前月アクセス数のページ別ランキングを見て、1位と2位のページを比較する際には「滞在時間」と「直帰率」を一緒に確認をする。

アクセス数が多いページの滞在時間が長く直帰率が他のページよりも低めなら、読者がそのページを一生懸命読んでいることを示し、内容への満足度が高いと仮定することができる。

一方で、アクセス数は多いのに、滞在時間が短く直帰率が高いページは、キーワードに興味を持って検索エンジンからやってきた読者の多くが、サイトの内容では満足せず、短時間で閲覧を切り上げて別のサイトに行ってしまった可能性を示す。

その場合、僕らがするべきことは、そのキーワードを用いてより読者のニーズにマッチする内容なエントリーを書くことだ(もちろん本人に書く気があればということが大前提になる)。

上述したのはほんの一例で、本書にはこのように、アクセスログや解析ツールが吐き出したデータをいかに分析するかの手法が詰まっている。

必要なのは「集計」ではなく「分析」だ。

著者のメッセージは金言として僕らブロガーの心に響く。

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