書評

「女のしあわせ♡」がなくなる日

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衝撃的なタイトルの本を読んだ。

タイトルはこのエントリーのタイトルそのまま。

「女のしあわせ♡」がなくなる日」である。

 

「女のしあわせ」がなくなる日―“本当にハッピーな人生”を手に入れるためにすべきこと

ももせいづみ 主婦の友社 2011-02-05
売り上げランキング : 24687

by ヨメレバ

 

そもそもここでいう「女のしあわせ♡」とは何を指すのか。

それは、「結婚・子ども・家庭」の「しあわせの3K」のことだ。

日本人の価値観が大きく変化するなか、時代の波に翻弄される女性の姿を浮き彫りにし、問題提起をしている。

 

 

何がいま日本人女性の周りで起こっているのか、簡単に整理してみよう。


 

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「しあわせの3K」の実態は「苦しみの3K」だった

女性にとっての「しあわせの3K」を表す「結婚・子ども・家庭」。

本当にこの3つは女性にとってのしあわせを代表しているのだろうか。

 

 

1970年代まで、日本人は99%が結婚していた。要は全員が結婚すると言っても差し支えない状態だ。

ところが現在では、1990年生まれの女性の4人に一人は生涯独身、男性に至っては3人に一人が一度も結婚をしない一生を送ると予測されている。

さらに、結婚した人が離婚する確率も30%を超えており、これらの統計から導くと、結婚をして、生涯パートナーとともに生活をし続ける人は、日本人の2人に1人ということになる。

 

 

なぜここまで結婚しない人が増えてしまったのか。

答えは簡単だ。結婚という行為に魅力を感じない人が増えているからだ。

著者は、「結婚・子ども・家庭」という「しあわせの3K」の実態を以下のように表している。

「家事・子育て・高齢者介護」=「苦しみの3K」

 

 

結婚をしてマイホームを持ち、子どもを二人産み育て、そして家庭を守る。

これが「日本の標準的家庭」となったのは、高度経済成長期以降だ。

そしてこのシステム自体が、社会が右肩上がりで夫が一社に勤め続け、給与が上がり続けるという前提で作られている。

夫が安心して働けるように、家のことをすべて担い社会的地位を捨て、子どもと親の老後の面倒を見続ける。

 

 

このような生き方を「素敵」と思わない女性が増えたとしても、何も不思議ではない。

そもそも「夫が元気で働き続け」たいと願っても、会社が存続できないケースも多くなり、給料も頭打ちなのだ。

日本人はもう、「しあわせな家庭」幻想から脱却すべき時を迎えているのだ。

 

 

親の世代の「しあわせ」価値観が若者を不幸にする

現代の大学生や20代の若い女性の価値観を縛っているもの。

それが、若い女性の「母親」である、と本書では指摘している。

今の20代の親世代なので、40代半ばから50代であろうか。

 

 

この世代はまさに高度経済成長期生まれ、幼少時代を典型的な「日本の家庭」で過ごしてきた。

その時代に自分が子供として育ち嬉しかったこと、大切だと感じたことを、自分の子供に伝えようとしている。

 

 

ところが、時代は変化してしまっていて、実際にはもう典型的日本家庭は存在しなくなりつつある。

しかし、親世代からの刷り込みにより、若い女性は「わたしも結婚して子どもを産まなきゃ」という価値観に縛られるようになっているのだ。

 

 

そしてここで一つ大きな問題になるのが、「婚外子出産」と「パートタイム」だ。

厚生労働省の調査によると、日本人の婚外子出産の比率は1.9%だ。

それに対してスウェーデンの婚外子出産比率は何と56%、出産する女性の半分以上が「シングルマザー」なのだ。

スウェーデン以外でも、デンマークが44%、フランスが42%、アメリカが33%など、欧米では「結婚」と「出産」はリンクしていないことが分かる。

 

 

ところが日本では結婚せずに子どもを産むことがまだまだタブー視されている。

その結果乱発されるのが「できちゃった結婚」だ。

できちゃった結婚のカップルは離婚率がそれ以外のカップルの2倍も高く、年齢が若いのが特徴だ。

そして彼女達若い母親達は結婚と出産を機に仕事を辞めてしまう。

そして育児が落ち着いた頃にパートで社会に復帰するのだ。

 

 

欧米では結婚せずに子供を作ることが特別なことではないので、女性は出産を機に仕事を辞めたりしない。

だが、日本には子育てをしながらフルタイムで働き続けられる環境の整備がまだまだ少ないし、あったとしても「結婚」が前提なので、シングルの女性にはとても冷たい状況となっている。

その結果、女性はせっかくのキャリアを捨て、スーパーのレジ打ちのような単純労働で安い給料を得ることしかできない仕組みになっている。

 

 

いまの若者のの親世代、特に女性は「男女雇用機会均等法」の第1世代だと著者は指摘する。

法整備がされたばかりで、働きたくても働けなかった自分の若い頃のリベンジを、娘を通じてしようとする。

だが、現実にはいまの日本の雇用環境は厳しく、満足な働き口も見つからず、条件も厳しい。

 

 

いまの若い世代の女性は、さまざまな角度から追いつめられている。

著者はそう指摘している。

 

 

真の意味で自立せよ!

追いつめられている現代の日本女性はどうすれば幸せになれるのか。

著者はここに「自立」というキーワードを投げ掛けている。

 

 

「男性と女性、稼ぐ責任があるのは男性だと思うか?」

この質問に対して、日本人女性の95%がYESと答えている。

 

 

ところが、同じ質問に対して、フランス人は30%台、スウェーデン人は10%台の女性しか、YESと答えていない。

要は、欧米では「男が稼いで女は食わせてもらう」と考える人の方が少数だが、日本人女性は95%が「男に食わせてもらう」ことを「是」としているのだ。

 

 

夫婦であっても、メインで稼ぐのは男性で、サポートするのが女性という考え方が日本では圧倒的だ。

だが、今の日本では男性が家庭を十分維持できるだけの稼ぎを得られないケースが多い。特に「できちゃった婚」のメイン層である若年層の場合。

稼げない男性と、稼ぐ環境がなく精神的にも依存する女性、この状況で家庭は維持できなくなり崩壊して離婚、という負のスパイラルが働いている。

 

 

日本の社会が働くシングル女性に対してほとんど機能していない現状をすぐに変えることは難しい。

であれば、女性自身が積極的に変化することから始めるべきだ、と著者は説いている。

 

 

そこで提言しているのが、「3Kから3Sへの移行」だ。

「結婚からシェアへ」、「子どもから育てるへ」、そして「家庭から住まうへ」の移行。

するべきことは一緒だと著者は説いている。

ただ、価値観を変化させる必要があるのだ。

 

 

「結婚すれば幸せになれる」「子どもは2人」「マイホーム」といった、紋切り型の価値観はもう通用しないのだ。

離婚をしても地域や近所で子育てを支援できる仕組みを作る。

子どもは産んでおしまいではなく、育てることが一番大切だということをきちんと認識する。

マイホームという幻想を捨て、こんな時代に大きなローンを背負う安易な決断をやめる。

 

 

一つ一つの価値観を変えて行くことで、古くなり機能しなくなった女性の幸せに対する意識を変えて行く。

それが日本を変えて行く地道な努力なのだ。

 

 

まとめ

現代日本の女性を取り巻く状況に関する説明はとても分かりやすく、説得力があった。

どうしてこうなってしまったのかも良く分かったし、放っておくとこれからどうなってしまうかも理解できた。

ただ、残念ながら、最後の提言には説得力が弱い部分を感じた。

 

 

だが、それはこの本の問題ではまったくない。

それは、この問題が日本という仕組み自体が抱える問題の根深さと深刻さと一致しているからだ。

 

 

シングルマザーが増えないのは、社会がシングルマザーを認知していないからだ。

認知していないから仕組みも整わない。そもそも今の日本は政治が機能しないから、いつまで経っても仕組みは整わない。

そんな状況のなかで、親世代から上の人々は、自分たちが育った時代の成功体験を若者に語る。

そんなことにはまったく意味がないのだ。

 

 

簡単に答えがでる問題ではないのだが、「幸せの幻想を捨てよ」というのが第一歩であることは間違いない。

勇気を持って現実を見て、前に進む。それしかないのだろう。

 

 

 

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