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楽し過ぎる妄想経済論! 書評「もしドラえもんの『ひみつ道具』が実現したら」 by 藤野英人

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「妄想経済論」。今僕が適当に思い付いた言葉だが、まさにそんな楽しい、そして勉強になる本に出会った。

僕と同世代の人や、30代の日本人で、「ドラえもん」を知らないという人は少ないのではないだろうか。

テレビやまんがを見ていなかった人でも、あの可愛らしいキャラクターは、まさに幸せな時代の日本と日本人の代名詞と言っても良いのではないだろうか。

そんなドラえもんの四次元ポケットから登場するひみつ道具。

その道具がリアルに実現したら?

そんなことを大真面目に語る本、それが「もしドラえもんの『ひみつ道具』が実現したら」である。

 

もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら 

藤野英人 阪急コミュニケーションズ 2010-09-01
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by ヨメレバ

 

 

投資のプロが書いた経済入門書

 

 

さて、愉快なタイトルの本書だが、本書の著者は金融のプロ、投資ファンド「レオス・キャピタルワークス」主宰のファンド・マネージャー、藤野英人氏である。

レオス・キャピタルワークスは「ひふみ投信」という投資信託を販売している。

ひふみ投信は、従来の銀行や証券会社が販売する投信とは異なる直販スタイルで、しかも売買手数料も取らない「ノーロード投信」として高い運用実績を誇る。

藤野氏は知る人ぞ知る辣腕ファンドマネージャーなのだ。

そんな藤野氏が書いたこの本は「もしどら経済」と略されている。

タイトル末尾に「経済」と付く通り、まんがの中に登場する架空の道具が実現したら現実の世界はどうなるか?というユニークな切り口で、経済の勉強をしたことがない初心者向けに分かりやすく世の中のお金や企業の動きを説明してくれる本なのだ。

 

 

有り得ないことが起こるとどうなるか?

 

 

本書に登場するひみつ道具のラインナップはこんな感じ

 

  • タケコプター
  • ガールフレンドカタログメーカー
  • フエール銀行
  • アンキパン
  • カラオケメイツ
  • ほん訳こんにゃく
  • お医者さんカバン
  • ガリバートンネル
  • カッカホカホカ
  • どこでもドア

 

文中にも説明があるが、これらひみつ道具の中には、リアルな21世紀に実現できそうなものと、実現不可能と言われるものがある。

だがそこは敢えて本書では考慮せず、とにかく実現してしまったら世の中がどう変化するか、という点にフォーカスしていて面白い。

たとえば誰でも知っている定番道具「タケコプター」が実現するとどうなるか。

もちろんタケコプターは史上空前の大ヒット商品となる。

 

 

予想価格は30万円。販売メーカーや部品供給メーカーに特需が起こるのはもちろんだが、他にも様々な影響が出る。

多くのサラリーマンがタケコプターを使って通勤するようになり、首都圏の空が大渋滞。「白タケ(白バイのタケコプター版)」が登場し、飛んで良い場所の規制なども生まれるだろう。

さらに飛んでいる人同士の衝突による保険が常識になったり、空を飛ぶのに快適なウェアをユニクロが発売して大ヒットするなどの経済効果が見込まれる。

他にも飛んでいる人に覗かれたくない人が高層マンションの窓に貼り付ける特殊フィルムが開発されたり、高層階向け警備保障サービスが盛り上がったりといった変化も出そうだ。

一方で、バイク業界や鉄道、それに駅ナカビジネスなどは打撃を受け、衰退する業種も出てくるだろう。

晴れの日はタケコプター通勤をするサラリーマンや学生が雨の日には一斉に電車通勤に切り替えるため、電車は料金をお天気によって変えるなどの対応が必要となる。

 

 

何と!もう実現できる道具もあった!

 

 

タケコプターはまだまだ当分実現しそうもないが、一方で実はもう技術的には実現可能な道具もある。

それが「ガールフレンドカタログメーカー」だ。

この商品、自分のプロフィール写真を機械に入れると、自分にぴったりの女性を見つけて候補を出してくれる道具。

そう、これ、実はAmazonが積極的に導入している「○○さんへのお薦め商品はこちら」と同じ論理を応用すれば作れてしまう。

さすがに写真だけではダメだろうが、自分のプロフィールや相手に対する条件などを入力しておけばOKというのは、それほど難しい話ではないだろう。

Amazonだけではない。楽天やmixi、Facebookなど、個人情報をストックしてビジネスに活用する業態の会社ならば実現することができる。

個人情報の取り扱いさえ間違わなければ、近い将来に大きなビジネスになる可能性もあるのだ。

 

 

ほん訳こんにゃくが実現すると日本人男性は肉食化!?

 

 

本書は視点がとてもユニークで飽きさせない。

「ほん訳こんにゃく」は、食べると外国語が話せるようになる道具。何語でもOKで完全にネイティブレベルになれてしまう。

そして、このほん訳こんにゃくが実現すると、日本人男性が肉食化するというのだ。

その理由については本書を読んで欲しいのだが、言語の壁がなくなることにより、日本人が英語が出来ないために後れを取っていた海外進出が一気に加速するという素晴らしい現象が起こる。

そして何と日経平均は10万円を突破!日本経済は復活どころではなく、黄金期を迎えるのだ。

 

 

まとめ

 

 

本書は本当に楽しい本だ。子供の頃に楽しく読んだドラえもんの道具を思い出しつつ、その道具が現実の日本に登場して販売されたら、と本気で妄想するのだ。

革新的な新製品が世の中に出ると、それに伴って人々の生活スタイルが変化し、関連商品や関連サービスも伴って大きな経済効果が現われる。

現実の世界でも、かつてSonyがウォークマンを発明して音楽が持ち歩けるようになったように、一つのメーカーの変化にとどまらず、世界中の人々の生活を変えてしまうことがある。

ドラえもんの道具はいまの現実世界にはないものばかりで、「あったらいいな」なものばかり。

これらの道具が実現した場合の影響ははかりしれない。

楽しく読んでいくうちに、世の中の仕組み、経済の成り立ちが何となく分かり、興味を持つ。

学生さんや若い社会人の人にもお薦めの一冊。楽しいよ。

 

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2011年の56冊目の書評としてお送りしました。

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