起きていることはすべて正しい by 勝間和代 [Book Review]

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勝間和代氏の「起きていることはすべて正しい」を読了。

勝間和代氏の著作に触れるのは二作目。前回読んだ「無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法」が良かったので、タイトルがもっとも印象的な本作を手に取ってみた。

まず本書が届いて印象的だったのが本の厚みである。350ページ以上あり、これはこの手の実用書としてはかなり分厚い部類に入るものだろう。

で、早速読んでみての感想として、まず思ったことは、これはなんというか、彼女の半自叙伝的成功体験記なのだな、ということ。良くも悪くも。350ページの厚みだけの情報量は確かにあり、価値もある。だが、それを邪魔しているものもたくさん詰まっていて、それが本書の価値を微妙なものにしている。それが僕の感想である。

もう少しノウハウ本的なものだと思って読み始めたので、そういう部分では若干肩すかしだが、成功する人間がまっしぐらに突き進んで行く過程のノウハウを惜しむことなく開示しているという意味ではいかにも勝間氏らしい大盤振る舞いで、その部分では本書に対して好感を感じた。

タイトル「起きていることはすべて正しい」というのは勝間氏の座右の銘だそうで、これは本当に魅力的なフレーズだと思うのだが、本書の内容は必ずしもこのタイトルを中核に据えて進んで行く訳ではない。では何が中核にあるかと言うと、「起きていることはすべて正しい」という言葉を座右の銘に据える『勝間和代』という人物の成功体験と、その過程で学んだこと、感じたことが、参考資料名と共にどばーっと開陳されて渦を巻いている。それがタイトルと内容のギャップとしてある。

何故彼女がこのフレーズを座右の銘とするに至ったのかということや、その言葉を座右の銘としてどのような難局を乗り切ったか、というようなエピソードは書かれていないし、「起きていることはすべて正しい」とは思えていなかった時の自分と、それを思えるようになった自分にどのような変化が起こったかというような視点での述懐も特にない。

そして、前回読んだ本のレビューでも書いたことだが、この人の行動の前提条件に対して、僕はどうしても「うん、そうだよね」と素直に頷くことができない、ちょっと躊躇してしまう部分がある。

本を書く時に彼女はその内容についての思い入れを書くより先に、販売部数についての目標をどのように設定し、それが実際にはどれぐらい売れたかという話をする。「どんな内容だったら売れるのか」をいかに徹底的に考えたかについての記述は繰り返し登場するが、「どんな本を書きたいのか」という想いはあまり登場しない。

交友関係についても、あまりにもストレートに「自分を高めてくれない相手とはそれらしい理由をつけて徐々に距離を置け」と書いてしまう。そして「自分を高められる相手」として女優の黒木瞳氏やカリスマ営業で有名な和田裕美氏らとの交友についてのエピソードが列挙されているのだが、人間が誰かを友人として好きになる時に、その判断基準は「相手が自分を高めてくれるから」と、堂々と言ってしまっていいものなのだろうか?それはすなわち、勝間氏のことを高めてくれる価値がなくなった時には、黒木瞳や和田裕美はバサバサと交友関係から切り捨てられるのが前提であると公言してしまっているのではないか?

勝間氏が「努力するなら成果が出なければ意味がない」と言うのは正論である。確かに正論ではあるのだが、人間そこまで割り切らないと成功できないのか、とちょっと切なくなってしまうのだ。すき間時間を有効活用して勉強することやチャンスをものにする心の持ち方について、彼女が本書で書いていることはすべて正しいし、見習いたい。

だが、前作で「収入が増えると幸せになります」と書いた彼女に違和感を感じたのと同じように、本作でもやはり彼女の行動規範に対する前提条件に、僕は戸惑いを感じざるを得ない。

だが、その一方で、勝間和代氏は「とても素直な人間」なのだろうとも思う。僕が「不快」や「怒り」ではなく「戸惑い」や「躊躇」という言葉を使っているのは、「利用できない友達を切り捨てろ」と言う勝間氏の言葉は、本当に成功したい人間からすれば、極めて正しい解釈なのだということを、僕自身も本音では納得しているからなのだと思う。

成長することを止めてしまった友人と愚痴話ばかりして過ごす時間は、成長を求めて上昇する努力を惜しまない人からすれば無駄な時間と感じることもあるだろうし、実際それを「無駄」と感じて疎遠になっていくケースというのもあるだろう。

だが、それを堂々と「無駄」と言い切ってしまっていいのか。その部分がどうしても僕には割り切れないし切ない。だが、勝間氏のような成功を求める人にとっては、それを「無駄」と割り切ることも、成功の一要素なのだろうし、実際この手のノウハウ本をどんどん出版して印税を稼ぐ人達同士の交友関係というのは、相手の利用価値がなくなったら関係も終了するのが当たり前なのかもしれない。

色々と考えさせられることが多い本であることは確かだし、有益な情報もたっぷり詰まっている。そういう意味では、勝間和代氏の持つエゴイズムという「毒」を一旦横にうっちゃってから、もう一度この本を読むと良いのかもしれない。勝間氏が本当に伝えたいメッセージは素晴らしいのだと思う。ただ、それを素直に出せない雑音が、ちょっと多い。

 

起きていることはすべて正しい—運を戦略的につかむ勝間式4つの技術
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著者:勝間 和代
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2008-11-29
価格:¥ 1,575
ランキング:826位
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在庫状況:在庫あり。
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コメント(4)

ども。
Blog 拝見して、何も書かずにはいられなくなりました。
自分は彼女の別の本を前書きだけ読んで、それ以上読まなかった人間です。
そんなおいらのコメントなので、だいぶ脱線してしまうと思います。
おいらは言いたい、おっきい声で言いたい。
お金は目標の指標になりにせよ、手段でしかなく、絶対に目的になってしまってはいけないと。
自分が本を読まないで、GG さんの違和感みたいなところに見いだしてしまったのはそこです。
そのお金で何するの?
そりゃいくらいくら稼ぐことは何かすることの目標にしてもいいけど、目的じゃないよね?
だから日本には本当の意味でのセレブレティって考えが植え付かないのかな?って思ってしまいます。

どもども〜、

コメントありがとうです。うん、よしてつさんの言いたいことはとても良く分かる。

目標設定の仕方とか効率良い達成方法とかといった個別の事項はとても良く書かれていて立派なんだけど、一番の根っこにある核みたいな部分がどうも見えにくいんだよね。

ただ、なかなか興味深い人物なので、評判の良いものをもうちょっと読んでみようかな、とは思ってます。

こんにちは。ふらっと、勝間和代キーワードで検索して、立ち寄りました。
実は、私彼女と一緒に仕事をしたことがあります。
何度かお会いして、いつも感じるのは、彼女、本当に人付き合いが下手なんです。
なのに、有名になって、行く先先で声を掛けられる。
それがうざったくて、どこでもパソコンをひらいて、人を遠ざけたりするほどです。
「ああー本当に不器用な人なんだなー」と、彼女を好意的に見ている人は思えるのでしょうけど、社会人ですから、場合によっては「挨拶ぐらいしろよ!」と不快に思う人もいるでしょうね。
で、私は、彼女の著書は全て読みましたし、彼女の訴えていることにはとてもうなづけ、同感しています。が、
そんな私でも、会えば、あの態度の悪さに、おえーっとなります。
自分に無用な人間は、人として認めないくらいの勢いで無愛想で、本当に腹が立つものです。
一緒に仕事をしていて、買出しや食事などの用意をしても、「ありがとう」の一言もありませんでした。もっと気を配って欲しいものです。

こんにちは。コメントありがとうございます。

そうですか、一緒にお仕事されていたんですか。なるほどー。

人それぞれ、様々な側面があるものですね。参考になりました。ありがとうございます!

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