書評

本当の成功への長い道のり “成功者の告白” by 神田昌典 [Book Review 2011-008]

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ブックレビュー2011年の8冊目は神田昌典氏著、「成功者の告白」を読了。

 

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

神田 昌典 講談社 2004-01-27
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by ヨメレバ

 

 

過去の神田昌典氏の著書に関するこのブログのエントリーはこちら。

 

視点が新鮮な成功手引書! ”非常識な成功法則” by 神田昌典

 

成功法則本の大家神田昌典氏による成功体験本で、小説として書かれている。読み始めてすぐに世界に引き込まれ、一気に読了してしまった。

物語としても良くできているが、ストーリーのリアルさに驚かされた。1万人以上の経営者に対してコンサルをしてきたという著者ならではの洞察力ということなのだろう。

多くのサラリーマンはいつの日か独立し、自ら会社を立ち上げて大きな成功を体験したいと願っているのではないだろうか。そして起業して大きなお金を得ることが、すなわちそのまま「幸福」に直結すると漠然と夢見ているのではないかと思う。

だが、そんなおぼろげな夢を本書は見事に打ち砕いてくれる。独立して会社を作り、その会社が大きな利益を上げて大金を得る。人生はそこで終わりではなく,むしろそこがスタートポイントなのだ。

本書では、独立・起業した経営者が、会社を軌道に乗せていく過程で、会社や家庭、それに経営者本人にどのような予想外のことが起こり、それをどのように克服していくかが、鮮明に描かれている。

主人公「タク」が勤務先の会社をリストラされたことをきっかけに独立・起業するところから物語はスタートする。タクに対して様々なアドバイスを与える会計士「神崎」がメンターとして登場し、タクは神崎のアドバイスを受けつつ一歩一歩成長していく。

自宅の一室からスタートしたビジネス。当初は集客ができず資金も底を尽きそうになるが、やがてタクのビジネスは徐々に軌道に乗り始める。ところがせっかく仕事がうまくいき始めると、それまでタクを応援してくれていた妻との関係がぎくしゃくし始める。

オフィスを構え従業員を雇い一心不乱に働くタクに対して冷たくなる妻。「せっかく家族のために働いているのに」と苛立つタクに対し、「仕事のことしか考えていない」とタクを責める妻。そんな中タクの一人息子が急病で入院してしまう。

そんなタクに対して神崎は、仕事と家庭は必ず連動しているということ、名起業家や名経営者が必ずしも円満な家庭を持っているとは限らないことを説明したのち、タクが経験している家庭のトラブルは、多くの起業家が独立して成長していく過程で陥る典型的な問題であると指摘する。夫が苦しみもがいている間は応援してくれた妻が、仕事が軌道に乗ると冷たくなるのも、子供という家庭内で一番弱い立場の人間が病気になることも、起業家の家庭で発生する典型的なことなのだ、と。

息子は無事退院し、タクの会社は引き続き成長を続けるが、妻との関係はさらに悪化して、ついに妻は子供を連れて実家に戻り、そしてタクは学生時代の女友達と不倫関係に陥る。

家庭問題で悩むタクに追い討ちをかけるように、会社でもトラブルが頻発する。従業員が次々と原因不明の病気で倒れる。豊富にあったはずのキャッシュが底を尽き、資金ショート寸前に追い込まれる。そして自分の右腕と信頼していた部下の裏切りとクーデター。急成長を続ける会社は、「家業」から「企業」へとの変貌を求められていたことを、タクは心から思い知る。

「成功とは何なのか、幸せとは何なのか」。自分の城を持ち、家族が幸せに暮らし、お金を稼ぎ不自由なく暮らす。夢は単純化すればそのように語ることができるだろう。

だが、本書を読めば、人が本当の幸せを掴むためには、越えなければいけないハードルが幾つもあり、そのハードルを無事越えることができた人だけが、本当の成功と幸福を得ることができるのだということが分かる。

これから自分で起業しようとしている人はもちろんだが、自分の人生を自らコントロールできるようになりたいと願っている全ての人にとって、この物語は非常に有効なアドバイザーとして僕らの成功を手助けしてくれることだろう。

本書を読んだからといって、成功と幸福へのハードルが下がるわけではない。だが、今後の僕らの人生に、こんなハードルが待ちかまえているのだ、ということを事前に知っているのと知らないのとでは、対応の仕方は大きく変わってくるだろう。

正しい知識を持って、敢然と立ち向かうべし!

素晴らしい本だった。お奨め!

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