書評

自分と大切な人のことを知ろう — エニアグラム 自分のことが分かる本 by ティム・マクリーン & 高岡よし子 [書評]

書評
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「エニアグラム」という言葉をご存知の方は少ないだろう。

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エニアグラムとは、僕ら人間一人ひとりが生まれつき持つ性質を、9つのタイプに分類して判別する、自己成長システムだ。

もともとは古代ギリシャ哲学にルーツを持ち、現代アメリカで最新心理学の成果を採り入れた性格分類法である。

 

 

僕らはしばしば、「あなたのためを思ってしているのに!」「どうしてあの人がこんなことをするのかまったく理解できない」というような、人間関係に起因するトラブルに心を痛めている。

この種の人間関係を巡るトラブルは、その関係が密接で深い時ほど複雑かつ深刻になるものと相場が決まっている。

それはお互いが相手に「これだけ親しい仲なんだから、相手は当然自分のことを正当に理解しているだろう」という依存が働くからだ。

そしてそこに「これだけ親しい仲の相手には、自分の本当に思うことを伝えてもいいだろう」という甘えもあるために、話はややこしくなりがちだ。

しかも、人には一人ひとり個性があり、行動や思考のパターンも違っている。

だからこそ、「あの人が何を考えているか全然分からない」という状況も生まれてしまうのだ。

 

 

そんな時に有効なのが、この「エニアグラム」というシステムだ。

エニアグラムを活用すると、全ての人が元来持っている個性が明確になり、行動や思考のパターンが理解できるのだ。

そのエニアグラムのごくごく分かりやすい入門書がある。「エニアグラム — 自分のことが分かる本」だ。

 

エニアグラム 自分のことが分かる本

ティム・マクリーン,高岡 よし子 マガジンハウス 2009-08-27
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エニアグラムは実に奥が深いものだが、この入門書はとても分かりやすく解説してくれている。

簡単に紹介しよう。

 

 

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エニアグラムとは

エニアグラムは、すべての人を9つのタイプに分類する。

その分類は以下のとおりである。

 

  • タイプ1:完璧を求める人
  • タイプ2:助ける人
  • タイプ3:達成する人
  • タイプ4:個性を求める人
  • タイプ5:観察する人
  • タイプ6:信頼を求める人
  • タイプ7:熱中する人
  • タイプ8:挑戦する人
  • タイプ9:平和を好む人

 

この本の第1章の終わりには、簡易的な診断テストがあり、それに回答することで、自分のタイプが分かるようになっている。

たとえば僕の場合は、「タイプ3:達成する人」だ。

タイプ3の持つ特質を、本書から引用して説明しよう。

 

自信があり、合理的な考え方をします。向上心が強く、「やればできる」という態度を持っています。目標を目指してハードに働き、人にいい印象を与え、高く評価されることを望みます。クールな反面、傷つきやすく繊細なところもあります。

 

この解説には僕自身も奥さんも完全に同意で、笑ってしまうほどだ。

この本には、それぞれのタイプが持つ特質と、行動パターン、思考パターンが詳細に解説されている。

まずは、自分のタイプがどれに当てはまるのか、試してみよう。

 

 

エニアグラムの健全度とグループ

自分がどのタイプか分かると、何が起こるか。

自分のことを客観的に見ることができるようになるのだ。

エニアグラムでは、タイプのほかに、「健全度」という指標を持っている。

人がどの程度人間的に成熟しているか、健全な状態であるかを、9段階に分類するのだ。

一番健全度が低い状態がレベル9、最高の健全度がレベル1となり、9〜7を「不健全」、6〜4を「通常」、3〜1を「健全」とグループ化している。

エニアグラムでは、それぞれのタイプごとに、健全度が高い時、そして健全度が低い時の傾向が分かるのだ。

例えば僕はタイプ3と書いたが、タイプ3の健全度が低くなると、以下のような悪い傾向が出る。

 

健全度が下がると、自分が優れた存在であることを証明しようと駆り立てられ、なかなか能力が活かせないと、周囲の環境のせいにします。目標達成の妨げとなる気持ち(不安や罪悪感、恥など)を、感じないようにします。仕事中毒に陥り、心身の疲労がたまっているにもかかわらず、大丈夫だと自分に言い聞かせ、心身のケアがおろそかになってしまいます。(後略)

 

逆に、健全度が高まり、人間的に成長していくと、この傾向がどのように変化するかも書かれていて、とても興味深い。

各タイプごとに、「基本的特質」「健全度」「親子関係」「とらわれ」「陥りやすいパターン」「成長」などが、かなり詳細に書かれているのだが、これが見事に当たっているのだ。

それぞれのタイプごとに、健全度が上がると現れる特性、健全度が下がると現れる特性が異なるが、現れる特徴は、別のタイプがもともと持つ特性に近い。

たとえば僕は健全度が上がると「タイプ6」がもともと持つ特性が現れるようになる。

つまり、元々は自分一人が目標達成してよろこんでいたものが、タイプ6が持つ「人と協力して何かを達成する」ことへの喜びを持つようになるのだ。

そして健全度が下がると「タイプ9」がもともと持つ悪い特性「内向きになって人に心を開かず自分の殻に閉じこもる」が現れる。

 

 

また、エニアグラムは、9つのタイプを「本能グループ(タイプ8、9、1)」「フィーリンググループ(タイプ2、3、4)」「思考グループ(タイプ5, 6, 7)」に分類している。

それぞれのグループごとに行動パターン、思考パターンが分かれているので、この点も興味深い。

 

 

 

エニアグラムを実生活に活用しよう

エニアグラムで自分のタイプを理解し、自分の特性を知ったら、次にするべきことは、自分の近くにいる人のタイプを知ることだ。

夫、妻、子供、親、上司、部下、同僚など、距離が近い人がどのタイプに当たるかを調べよう。

直接この本を読んでもらうのがベストだが、無理な場合は相手の行動パターンや思考回路から推定することもできるだろう。

例えば僕の場合、奥さんはタイプ5の「観察する人」だ。

タイプ5の人には、タイプ3とはまったく違う特性があり、また、健全度が高い時の特徴や健全ではない時の状態が書かれている。

さらには、「タイプ5の人とのつき合い方」まで書かれいる。たとえば「干渉されることを嫌がるので、不意に訪ねたりしないなど、テリトリーやプライバシーを尊重しましょう」や「親密な身体接触を好まない人が多いため、気をつけましょう。また、気持ちを無理に聞き出そうとしないことが重要です」など。

 

 

エニアグラムを理解すると、自分がもともと持っている特性、良い時、悪い時の傾向が分かり、さらに相手のことも分かる。

タイプ5の奥さんはどんな人で、どんなことを嫌がり、どうされると嬉しいのかが、客観的に理解できるようになるのだ。

 

 

例えば僕は健全度が下がるとタイプ9が持つ、自分の殻に潜り込んで人に心を開かない、という悪い癖がある。

このことを自分自身と家族が理解していれば、「あ、自分はいま殻に閉じこもっているな」と客観視して、会話を持つよう努力できるし、奥さんも僕が黙り込んでいたら、「何か心配事があるらしい」と気配りすることができる。

多くの人間関係は、お互いの健全度が下がっている時にトラブルになりやすい。

そんな時、相手のタイプを理解することで、相手が何を嫌がっているのか、どうしてそのように行動しているのかが、手に取るように分かるのである。

 

 

 

まとめ

エニアグラムは自分を知り、相手を知るのに有効なツールだが、気をつけなければいけない点がある。

それは、エニアグラムのタイプで他人に勝手にレッテルを貼ってはいけない、ということ。

「あの人はタイプ8だからあんな直情的なモノの言い方をするんだ」

「あの人はタイプ1だから、あんな完璧主義なんだ」

このように他人の性質を勝手に決めつけて、ラベルを貼ってはいけないのだ。

エニアグラムはあくまでも相手を知るための助けであって、万能のツールではない(当たり前だ)。

タイプ3の人が全員同じように行動するわけではないし、思考も人それぞれだ。

あくまでも人間関係を円滑にするためのサポートツールであることを忘れてはいけない。

 

 

自分のことが良く分からない人、大切な人との関係がうまくいかなくて悩んでいる人は、一読してみると良いと思う。

この本は最初の入門書であり、もっと専門的な本も色々出ているようなので、興味を持った方はそちらも当たってみると良いだろう。

正しく使うとかなり素晴らしいツールになる。おすすめです(^-^)。

 

 

エニアグラム 自分のことが分かる本

ティム・マクリーン,高岡 よし子 マガジンハウス 2009-08-27
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