心・心理・あり方書評

自分の小さな「箱」から脱出する方法

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自分の小さな「箱」から脱出する方法。

あなたは心の中の「箱」の存在を意識したことがあるだろうか?

僕の中にも、もちろんあなたの中にもある箱だ。

多分誰も自分の中に箱があることなんて考えたこともない。

だって僕自身、この本を読むまで、自分の中に箱があって自分がその中に入ってしまうなんて、考えたこともなかったから。

だけど、僕らの心の中に「箱」があって、この箱がとってもやっかいだということを知っているのと知らないのとでは、僕たちのこれからの生き方は全然違ってくると思う。

傷つける必要のない人を傷つけることもなくなるだろうし、会社や組織の中で無意識に誰かを傷つけたり嫌な思いをさせることもなくなるだろう。

それぐらい、この「箱」というのはやっかいなんだ。

自分の小さな「箱」から脱出する方法」という本に、その正体が詳しく書いてある。

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詳しく解説しよう。

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そもそも「箱」ってなんだろう

僕らの中にある「箱」とは何だろうか。

自己欺瞞」。この本ではそう定義している。

でも、突然「自己欺瞞」なんて言われても、なんのことだか分からない。

多分この本の著者チームも同じことを考えたのだろう。

だから、この本は物語仕立てになっていて、著者と読者が一緒に「自己欺瞞」とは何か、「箱」とは何なのかを勉強する形をとっている。

そして、そのために幾つかの例が挙げられている。

ある会社にヘッドハントされて上級マネジメントとして入社したトム。

彼が会議室で一人戦略を練り、ホワイトボードにビッシリ書き込んだメモ書きを、部下の一人が彼の了解を得ずに消してしまった。

激しく怒るトムは、メモを消した部下ジョイスを呼びつけ激しく叱責した。

トムはジョイスに、「次にこんなことをしたら、次の仕事先を探さないとならなくしてやる」とジョイスを罵った。

上司がメモ書きしたホワイトボードを勝手に消すことは良くないことだ。

トムには300人の部下がいたが、多くの人はその会議室はトムが個人的に戦略立案をするために使い続けていることを知っていた。

ジョイスは誰かに、このメモを消してもいいかと確認すべきだったのかもしれない。

少なくとも、びっしり書かれたメモの内容見れば、簡単に消してしまってはまずいものと気づくべきだったのだろう。

そしてトムに激しく叱責されたことで、ジョイスは恐怖心から、二度と会議室には近づかないだろうし、勝手にメモを消すことも、もうないだろう。

上司として部下が間違ったことをしたことを叱責し、二度と同じ問題が起こらないようにする。

目的は達せられたのか?

これでいいのか?

実はちっとも良くない。

何故か。トムが箱の中に入った状態でジョイスに接していたからだ。

トムはジョイスを叱ったときに、ジョイスの名前すら知らなかった。ジョイスが握手しようと差し出した手を無視して怒鳴りつけた。

トムはジョイスを部下として見守り、ジョイスの成長を促すという意識をまったく持たず、「出来の悪い我慢ならない」「モノ」として扱った。

その時のトム心理には、「こんなダメな部下のせいで自分の仕事がまっとうできないじゃないか」という被害者意識が生まれる。

自分が正しくて相手が悪い。だから怒鳴ったっていいんだ」という自己正当化がはじまる。

「自分は被害者だ」という想いから自分を守るために、トムは「箱」の中に入り、箱の中からジョイスを攻撃した。

だからトムはひどく冷たく容赦なく、権力を利用してジョイスを叩きのめすことができた。

トムはジョイスを指導するふりをして攻撃していたのだ。

自分は正しい。お前が悪い。お前のせいで俺の大切な仕事が台無しになったじゃないか!どうしてくれるんだ!と。

さあ、ここで問題なのは、果たしてトムのジョイスに対する態度は、会社にとって、組織にとって、良い影響を皆に与えたか、ということ。

トムの仕事の効率は上がっただろうか。ジョイスやその周辺の人たちの仕事に対するモチベーションは上がっただろうか。

部下の皆は、トムを上司として尊敬し、トムのためなら一肌脱ごうと思っただろうか?

答えは分かると思う。全部Noだ。

ジョイスはひどくショックを受け悲しんだだろう。

メモを消したのには理由があったかもしれない。

急な来客があって部屋を使いたかったのかもしれない。

別の上司から消すよう指示されたのかもしれない。

理由の説明の機会も与えられず、一方的に叱責されたことで、ジョイスは恐怖心とともに怒りを感じたかもしれない。

そして、そんな上司トムのことを、果たしてジョイスは尊敬するだろうか。彼のために必死で働こうとするだろうか。

心が箱の中に入った人間は、自分のことしか考えない。他人の心の痛みや悩みを無視する。

そして、多くの人が、箱の存在にすら気づいていない。

 

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