パラオにて 思うこと


昨日/明日

2001年11月11日(日) 1日目 晴れ

午前4時半に起床。昨夜は前夜祭と称してニナと深酒してしまったせいで、ずいぶん酒が残っている。外はすごく寒い。順番にシャワーを浴びる。ニナが浴びている間に、日記に出かける旨だけ記してアップしておいた。僕がシャワーを浴びている間に、昨日予約したタクシー会社より電話があり、6時にマンションの前まで来てくれることになった、とのこと。何故こんな電話がかかってくるかというと、タクシーの予約は、あくまでも当日の予約時刻の30分前に、センターから街を流しているタクシーに、近くに来ることができる車がいるかどうかを確認するだけで、事前に手当てしておいてくれるわけではないため。雨が降ったりすると、予約してあっても来てくれない可能性があるらしい。

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6時丁度に家を出る。タクシーで吉祥寺まで10分。吉祥寺の駅前は、早起きして出かける健康的な人々と、夜明かしで遊んだ酔っ払いまたは酔っぱらいを相手に仕事していた不健康そうな人々が結構うろうろしている。6時30分発の成田空港行リムジンに乗り込む。このリムジン、今年開通したばかり。最高のタイミングで空港便が出来たことを、多いに喜んでいるのだ。僕達以外にも20人以上が乗り込む。結構繁盛しているようだ。バスの運転手さんも、非常に応対がていねいで気持ちがいい。天気も最高だし、何となく良いことが起こる予感。

成田空港までは2時間、と運転手さんは吉祥寺を出る時に言っていたのだが、日曜の早朝で車が空いていたせいで、1時間10分で空港に着いてしまう。いくら何でも早すぎ(笑)。いつも僕達は空港に、あまりにもギリギリに着く傾向があるので、今回は余裕を持ったのだが、それにしてもなあ。カウンターの召集時刻は9時15分、フライトは11時05分である。うーむ。

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とりあえず両替をし、ニナはコートを一時預かりに預ける。たばこを吸ったり新聞を買ったりしているうちに9時になったので、旅行会社のカウンターへ行ってチケットを受け取り、さらにコンチネンタルのカウンターでチェックインのため並ぶ。が、11時05分のフライトが、到着機の遅れのため、12時50分になるとのこと。文句を言っても仕方がない、と諦めて並んでいると、さらに30分遅れて13時20分に。時計を見るとまだ9時15分である。4時間何をしよう。

ところで、成田のセキュリティーのチェックはずいぶんうるさかったように思う。何度もパスポートとチケットの名前の照合があったし、荷物も開けられた。あれじゃあ長蛇の列ができても仕方がない。

で、荷物も預けて身軽になったので(今回は僕もニナも小さな肩かけ鞄だけにした)、早速堀内さんの教えに従って寿司を食いに寿司田へ。時間が早いので空いていたが、それでもカウンターでお好みで寿司をつまんでる好き者ばかり(僕もだ)。ビールを一杯飲んで、4、5品握ってもらう。なかなか上品で美味しいお寿司だった。

寿司屋を出てもまだまだ死ぬ程時間が余っているので、隣の本屋でMac Fanを購入。たばこの吸える場所でしばらく雑誌をめくり、それに飽きるとまた別の場所に移動して新聞を読んだり。ニナはマニキュアを塗り直しに行ったり。飛行場のアナウンスで日本人の女性が喋ってる英語というのは実にひどいなあ、などとぼんやり考えたり。

そうこうしていると、喫煙所の窓の外を、コンチネンタルのジェット機(後でボーイング737と判明)がビューンと降りてきた。どうやらこの飛行機に乗るらしい。窓の外にはスイスエアーだのエアーインディアだのジャルだのアナだのがずらずらと並んでいる。

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ぼちぼち時間だ、ということで、出国手続をして搭乗口へ。搭乗口のカウンターでパスポートの提示。ちゃんと航空券の名前と照合していた。さらに機内の入り口でも半券の提示。なかなか忙しい。

コンチネンタルは座席と座席の間隔が狭くて大変だよ、と言われていたのだが、乗ってみると実際非常に狭い。かといって737の場合、ビジネスクラスにアップグレードしたとしても、座席の横幅が広くなるだけであまり意味なし。欧米人やミクロネシア人は、太った人が多いからなのだろうけれども、日本人にはあまり関係ない。

最近は良く飛行機に乗るようになったので(今年はこれで3回目)、昔ほどではないのだが、僕は飛行機が怖い。どんなに科学的に説明されていたとしても、やはり「あんなもんが空を飛ぶなんて不自然だ」という思いが強いし、落ちたら、まず死んでしまう、というのも嫌だ。「飛行機は一番事故率が低い乗り物なんだよ」と何人かの人に説明されたが、それでも事故が起きた場合の致死率は断然高いだろう、と思ってしまう。

でも、今日はあまりに空港で待たされたため、やっと移動できる、という気持ちが強くていつもほど怖くなかった。何よりなにより。我々の後ろの席の家族連れ、母親が高校生ぐらいの子供(男子)のチケットの半券を持ったままさっさと先に登場してしまい、しかもその半券をなくしてしまったらしく、スチュワーデスに「このままだとあちら様は御搭乗できません」とまくしたてられている。結局半券は見つかって子供は何とか登場できたのだが、半泣きである。気持ちは分かる。親も親だが、ああいう言い方をするスチュワーデスもスチュワーデスだ。今回は全部コンチネンタルだったのだが、日本人スタッフの質は、決して高くなかったと思う。

そうこうしているうちに離陸である。コンチネンタル961便、グアム行きである。離陸の瞬間は掌が汗でべったりになる。「頼むからうまくやってくれよー」と何度も思う。オーバーランするんじゃないか、とか、途中で脚が折れるんじゃないか、とか、飛び上がってすぐに失速して成田の田んぼに墜落するんじゃないか、とか、エンジンに鳥が飛び込んで止まるんじゃないか、とか、機長が発狂して逆噴射させるんじゃないか、とか。でも飛行機は無事離陸。飛び立って5分ぐらいすると、何となくちょっと安心する。別に5分経ったから落ちなくなるわけではないのだが、離陸時が一番事故が多い、といううわさが耳に残っているので、やはり安心する。

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ギューンと飛行機は上昇を続け、水平飛行に移る。しばらくして機内食が配られる。チーフ・アテンダントのベリンダさんというスチュワーデス、すごくきれいな人(40歳前後のアメリカ人か)なのだが、キャラクターもなかなか凄い。大口をあけて客や他のアテンダントとギャハハハと大笑いしながら、すごいスピードで仕事をしていく。英語と日本語のちゃんぽんなのだが、この人のおかげで最初の緊張感はずいぶんなくなった。機内食はハンバーグかポークカレーのチョイス。僕はカレーを、ニナはハンバーグを。ポークカレーは米がカリフォルニア米みたいな細長くてポロポロしているもので、なかなかうまかった。ハンバーグはイマイチか。飲み物に二人とも赤ワインをもらう。フルボトルの1/4サイズのボトルが出てきた。カリフォルニア・ワインでまあまあ。

食事を平らげ、ワインをちびちびやっているとずいぶんリラックスしてきた。飛行機という(僕にとっては)非日常的な環境で、食事という非常に日常的な行為をすることで、ずいぶん人間はリラックスするものなのだ、と実感。ただ、気圧の関係か、アルコールを飲んでしばらくしたら頭が少し痛くなった。

食事が下げられ、しばらくするとまた飲み物を薦められる。今度はウィスキーをロックで注文したら、Crown Royal(Canadian Clubの12年もの)のミニボトルをくれた。「ロックだとこちらの方が美味しいですから」とは日本人スチュワーデスの言葉。なかなか嬉しい(さっき質が高くないなんて書いてごめんよ)。

3時間半ぐらいでグアムに到着。飛行機から見る夕焼けはきれいだった。ベリンダさんと大騒ぎしながら飛行機から下り、アメリカのイミグレーション・オフィスへ。テロの影響で、トランジットだけの乗客も全てイミグレのチェックを受けることになったそうだ。イミグレはとにかく無駄に広い。1/5のスペースで十分用が足りると思うのだが、とにかく広い。イミグレだけでなく、空港全体がすごくガランとしている印象がある。天井のライトも半分ぐらいしか点いていない。冷房だけが強烈に効いている。成田よりもよっぽど寒い。本当にここはグアムか。

イミグレの係員は女の子が通過する時にはとっても時間がかかる。色々下らない質問ばかりしているからだ。質問といっても、職務的な質問ではなくて雑談なのだ。僕の場合は「Hello」と「Bye Bye」だけ。10秒もかからない。アメリカよ、テロでやられたのは君の国なんだぞ。本当に大丈夫なのか、それで。

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イミグレの中にあるトイレを借りる。汚い。日本のトイレの汚さとは根本的に何かが違うのだが、日本の空港には、こんなにトイレが汚いところはないだろう。水もほとんど流れない。

グアムの空港はほぼ全面禁煙なので、事前に調べておいた喫煙コーナーで煙草を吸い、7UPを飲む。甘い。喫煙コーナーにいた人間のうち半分ぐらいが日本人。どうもあまり外国に来たという気がしない。

コロール(パラオ共和国の首都の名前。空港の名前もコロールだが、実際空港はコロール島にはない。成田を「新東京国際空港」って言うのと同じことなんだろう)行きの前のカウンターでしばらくぼんやりする。ここも日本人が半分ぐらい。東京→グアムが遅れたおかげで、本来4時間だったトランジットが2時間になった。これは正直ありがたかった。成田はそこら中で煙草が吸えたし、ぶらぶらしていれば店もたくさんあってそれなりに時間がつぶせるが、グアムの空港はまだ夜の7時だと言うのに店はほとんどしまっているし煙草も吸えないので、やることが何もないのだ。

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そうこうしているとコロール行の搭乗が始まる。グアムまでと同じ737。もっと小さい飛行機になるかと思っていた。ビジネスクラスは前の方の5列ぐらいだけなのだが、団体客のアメリカ人が占拠していた。みんなデブばかり。

グアム→コロール便は日本語のアナウンスは入らないが、フィリピーノ(またはグアムの現地人かな)とおぼしきスチュワーデスは、一応カタコトの日本語を喋る。サービスのランクは東京→グアム便よりも3ランクぐらい下がる。ドリンクサービスの時に赤ワインを注文したら、2ドル取られた。何だか怪しい。東京→グアムと同じ銘柄のワインだぞ。しかも料金を取るなら何で2ドルなんだ。2ドルじゃ原価割れだぞ。そのままお前のポケットに入るんじゃないのか?などと想像してみる。真相は不明。2ドルだし。まあいいか、って感じ。

グアムからの便はとにかく良く揺れる。縦揺れがないので全然怖くはないのだが、ずっとシートベルト着用のサインが着きっぱなしだった。ずっと着きっぱなしなので、乗客も無視してトイレに行ったりコンパートメントを開けて荷物を取り出したり、勝手にやっているし、アテンダントも一通りサービスしてしまった後は、後部の乗務員室に閉じこもってギャーギャー騒いでいる。座席も空席があればガンガン移動しているし、非番のアテンダントは制服のまま座席に座ってグーグー眠っていたりもする。かなりワイルドな感じである。

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グアムは日本より1時間時間帯が早く、パラオは日本と同じ時間帯。グアム発が19:50でコロール着が21:00なので表面上は1時間10分だが、実際は2時間10分である。コロールにはほぼ時間通りに到着。ドアを出ると、むっとした湿度の高い空気と森の匂いに包まれる。クリントン大統領とかが日本から帰ったりする時とかに使う、昔懐かしいタラップを下りて、そこからイミグレまでは徒歩。ちょっと歩いただけで汗が出てくる。本物の南国だ。

イミグレの中は冷房が効いている。窓枠は木製だったりして、なかなか古くさい感じがいい。でもイミグレの職員が使ってるコンピュータのOSはWindows 2000 Professionalだった。ふむ。女性の職員の使っていたPCのモニタの上に、東京タワーの金色の置き物が、すごく大切そうに乗せてあった。

イミグレに続いては、預けた荷物の受け取りである。これがまたなかなかワイルド。とにかく全然出てこないのだ。僕らは成田で預けたきり、グアムでのトランジットでは荷物を受け取らなかったので、元々若干の不安がある状態だったのだが、5分経っても10分経っても最初に出てきた数個の荷物が空しく回転を続けているだけ。暇な回転寿司屋みたいな状態。10分ぐらい経って、壁の向こうががたがたと騒々しくなったかと思うと、続々と出てきたのは生魚を入れるクーラーボックスばかり。それも1個や2個ではない。続々と出てくる荷物は全部クーラーボックスばかり。それを焦げ茶色の肌をした、パラワンだかグアム原住民だか分からない人々が続々と受け取って、悠々と引き上げていく。クーラーボックスの中には、何だかはたから見てもぐっしょり濡れているものがあり、本当にきちんとパックされているのだろうか、と不安になる。

立ち尽くす観光客らが本気で不安になり始めた頃、ようやくスーツケースがごろごろと出てきはじめる。我々の荷物も何とか無事に出てきたが、黒いバッグ(Kさんからもらったサムソナイト)が真っ白になって出てきた。何で?

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荷物を受け取り、空港の外に出ると、何やらやたら人が多い。予約しないで熱海の駅で夕方降りると、あちこちの宿の勧誘や予約担当がうじゃうじゃ寄ってくるのだが、コロールの空港もそれと一緒。目の前に「Palau Pacific Resort」と書かれたカードを持ったパラワンがいて、ニナがその人に我々の担当を聞くと、背が高くて、痩せ過ぎて哲学に目覚めた佐竹雅昭みたいな日本人の男の子(sさん)がやってきて、我々の荷物をさっさとどこかへ持っていき、続いて我々をバンに案内してくれた。バンは日本車で、日本なら20年前に廃車になっているような代物で、おまけにフロントガラスに思い切りヒビが入っている。

バンは日本人ばかり10人ほどを乗せて出発。運転手はパラワン。道中は40分ほどだが、道は悪く、車もひどいので、ちょっと不安になる。僕はひょっとして、大金を払って、とんでもなく間違った場所に、間違った時に来てしまったのではないだろうか、と。

途中別のホテルで4人ほどが降りる。まあまあのホテルだが、魅力的ではない(後でこのホテルはパレイシアホテルであることが判明する)。そこからさらに20分ほどで、我々の滞在する、Palau Pacific Resortに到着。

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僕が感じた不安は、リゾートへの到着とほぼ同時に消える。たいまつが焚かれている入り口から、リゾートのロビーまでは車で1分ほど走ると、ロビーに到着。バンを降りると、ドアのないあけっぴろげなロビーの入り口でパラワンがウェルカム・ドリンクを手渡してくれる。トロピカルなフルーツのジュース。チェックインは旅行代理店のsさんがやってくれたので、我々はロビーの椅子に座って煙草を吸い、ウェルカム・ドリンクを飲んで待っているだけである。荷物もすぐに別のバンで届く。立ち上がった時に後ろを振り返ると、ハリウッドとかで見るような、夜でもライトアップされたプールが見える。うぉー、どうやらここは、すげえ場所らしい。朝のいい予感が、道中の不安な予感を制覇した瞬間である。

まもなくパラワンのポーターがやってきて、我々の荷物を運んでくれる。我々が英語を喋ることが分かると、英語でリゾートの施設を色々と説明してくれる。ちなみに、Palau Pacific Resortは、名前の通りResortであり、ホテルではない。どう違うかというと、ホテルみたいに一つの建物がどーんと建っているのではなく、2階建ての棟が幾つもあり、一つの棟に4部屋から16部屋ぐらいが入っていて、それらの棟とレストラン、バー、プール、テニスコート、プライベートビーチ、マッサージルーム、売店などが通路によって繋がっている状態になっている。従ってロビーから我々の部屋までは、のんびり歩くと10分ほどかかる。

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で、10分ほど歩き、我々の部屋に到着する。ポーターがドアを開けてくれる。涼しい空気と柔らかい光が入ってくる。我々の部屋は、はりこんで、ジュニア・スィートである。部屋は予想以上に広い。無意識に歓声が上がる。ポーターのパラワンが、「very good?」と聞き、ニヤリと笑う。Very Goodどころじゃないっすよ、これは本当に。

ポーターにチップを渡し、ニナと二人になる。テーブルの上には、花とフルーツ、それに白ワインがボトルで一本、さらに総支配人からの手紙と、今回の旅行を手配してくれた菊地からのメッセージ、さらに自家製のクッキーが置かれていた。

ベッドはクィーン・サイズを二つ並べたもので、僕が手を伸ばしても、端から端まで届かないぐらいに広い(すげー)。枕の上には、ホイルで個包装されたチョコレートが1個ずつ乗っている。天井にはファンが2つ回っている。全ての窓と、バルコニーに出るドアは、白木のブラインドで隠されている。

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バス・ローブに着替え、さっそく頂いたワインを飲み、フルーツを食べる。フルーツはマンゴーとパパイヤ(多分)とオレンジだった。広いソファーに二人で半分横になりながら、部屋の灯りをスタンドだけにして(部屋には実に4つのスタンドがある)、ゆっくりと白ワインを飲む。ああ、何と言う極楽。家を出てからリゾートに着くまで16時間もかかったけど、それだけの価値があった。実に。

朝一番で感じた、いい予感が現実のものになることを確信しながら、ワインをちょっと残したまま、我々は広い広いベッドに潜り込み、眠った。

長くて短い一日、旅行一日目はこのようにして、暮れたのでした。さて、明日からのパラオ滞在が、どのようなものになるか、どうぞお楽しみにー。

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