書評

悪口の技術 by ビートたけし 〜 言葉を研ぎ澄ませ!悪態も芸術になる!! [書評]

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ブックレビュー2010年の110冊目はビートたけし氏著、「悪口の技術」を読了。

今年の4月に読んだ「毒舌の会話術」という本の参考文献として登場していたのが本書である。

ビートたけし氏の毒舌エッセイ。2002年〜2003年頃に書かれた文章のようで、当時日本で話題だった日韓共催のサッカーワールドカップやイラク派兵などがずいぶん話題として描かれている。

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悪口の技術 by ビートたけし 〜 言葉を研ぎ澄ませ!悪態も芸術になる!! [書評]

タイトルのとおり、悪口に関する本であり、書き殴っている内容も原則としては悪口である。

ただ、各章の冒頭に、その章ではどのような「悪口の技術」を発揮するかについてのお題が書かれており、そのお題に沿ってたけし氏が面白おかしく悪口を書きまくる、という流れになっている。

例えば三章の冒頭には「技術3」として、このようなことが書いてある。

「偉い人には上品な悪口を。「裸の王様」のように、おだてて、落とす。」

そしてこのお題に続けての悪口は、マキアヴェッリの著作『君主論』を下敷きにしつつ、芸能界やプロレス界での親分について、そしてストリッパーやプロ野球選手などのプロフェッショナル論について、さらには象徴天皇制にまで話は展開するのだが、オチとしては「結局は権力者の友達になるのが一番気楽でいいね、おごってもらえるし」ということになる。

読む前には「毒舌力を磨け」のような、技術を解説してくれるノウハウ本的要素を期待していたのだが、その意味ではかなり裏切られたと言って良い。

本書はたけし氏が縦横無尽に毒舌の技術を駆使して様々な事象について悪口を言いまくる本であって、僕ら読者がその技術を習得するための本ではない。

だが、それにしても感心するのはたけし氏の驚くべき博識ぶりである。

アインシュタインの話からおかまバーの裏話、それに芸能界の掟について、哲学者から政治家まで何でもござれで見事な話っぷりである。

読んでニヤニヤして気分がすっとする、娯楽エッセイとしては非常に高い水準にあると感心した。

ちょっとだけ残念なのは、著者が意図的にオチに向かって急激に筆の鋭さをなくさせている点で、オチでぼけるからこそのたけし節なのだろうが、ここまでバッサバッサと斬ってきたのなら、最後まで斬りまくって欲しい、という気持ちにもさせられた。

この最後のボケが、たけし氏が政治家になったりせずに東スポのご意見番で居続けられる理由なのだろうし、きっとたけし氏の生き方を強く反映した終わり方なのだと勝手に解釈している。

たけし氏の悪口技術、習得できたら凄いだろうけど、まあ無理だろうね。

楽しく読める毒舌エッセイでした。

「悪口の技術」のチェックはこちらからどうぞ!!

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