心・心理・あり方書評

夫婦脳 — 夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか

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黒川伊保子さんの「夫婦脳」という本のご紹介。

人間には男と女がいて、そして僕は男性であるわけだけれど、「男と女ってやっぱりなかなか難しい」と思うことが良くある。

僕は一回離婚していまの奥さんと再婚しているので、人生において二人のパートナーと過ごした経験がある。

恋愛も含めるとパートナーの数はもっと増えるわけだが、今回この「夫婦脳」を読んで、最初に思ったことはこれ。

「もっと早く!できれば学生のときにこの本を読みたかった!」ということだ。

男性と女性の脳の特性の違いが端的に書かれていて、「ああ!これって僕に個人的に欠陥があるんじゃなくて、男性共通の問題だったのか」と感激する箇所がいくつもあった。

さっそく紹介しよう。

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夫婦脳 — 夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか

男性と女性の脳の構造の違い

ご存知のとおり、人間の脳は、直観やセンスなど、「感じる領域」を司る「右脳」と、顕在意識と直結して思考を司る「考える領域」「左脳」に分かれている。

そして、この右脳と左脳をつないでいる神経の束を「脳梁(のうりょう)」と呼ぶ。

この脳梁の太さが、男女で大幅に違うのだ。

女性の脳梁の方が、男性のものよりも遥かに太く、発達しているのだ。

だからこそ、女性は「感じたことをすぐに言葉にできたり」「直観のままに即行動に移す」というようなことが得意なのだ。

また、人間は動物としての本能に従って無意識に行動していることが多々ある。

その人間が持つ本能は、かつて狩をして家族を守ってきた男性と、群れの中で子供を育てることを役割としてきた女性では大幅に異なる。

脳の構造、そしてその脳に埋め込まれている本能の違い。

それらが我々男女の行動の違い、考え方の違い、そして反応の仕方の違いとして現れるのだ。

 

「解決」したい夫と「聞いて欲しい」妻

この本はタイトルのとおり、「夫婦」における男性脳と女性脳の違いを、さまざまなシーンを通じて紹介している。

この本を読んですごく良かったこと。

それは、これまで自分が至らないため、そして自分が劣っているために奥さんやパートナーから怒られたり非難されてきたことが、自分のせいではなく、「男性脳」故の問題であることに気づけたこと。

そして、もう一つは、女性脳の仕組みを体系的に説明してもらえたことで、「ああ、こういうとき女性はこうして欲しいのか」ということが、男性脳的に腑に落ちたこと。

それらの実例については、ぜひこの本を手に取ってもらいたいのだが、あまりにも典型的な「男性脳」と「女性脳」がもたらす夫婦のすれ違いを一つ紹介しよう。

夫は妻の話を聴いて、「解決しよう」と考える。

ところが妻は夫に解決して欲しいなんて、まったく思っていない。

では、妻は夫に何を望んでいるのか。

それは、「話を聴いて、共感して、できれば甘やかして欲しい」のである。

よく女性は男性とくらべて「おしゃべり」だと言われる。

女性同士が食事をしながら、お茶をしながら、とりとめのない話を延々としている姿を見たことがある人も多いだろう。

女性同士は、目に入ったこと、いま体験していること、感じたことを、どんどん言葉にできる脳を持っている。

そして聴いている側は、別に問題解決をする必要などないのである。

必要なことは、「共感」して「受け流す」ことだ。

勝手に問題解決したりしてはいけない。

実際に「相談があるんだけど」とか「どうかたらいい?」と尋ねられるまでは、聴いて共感していればいい。

それが女性脳のプロトコルなのだ。

しかし男性脳は、ただ話を聞き流して共感して受け流すことなどできない。

思考する左脳と右脳の連絡が悪い男性脳は、相手の話しを受け取ると、すぐに左脳で考えて、解決策を提示しようとする。

だから、夫は妻の一見とりとめもない話を途中で遮って、「結論から言え」と言ってしまうのだ。

しかし妻は聞いて欲しいだけなので、話を遮られたことで傷ついてしまう。

これこそが、男女の脳の構造に由来する、夫婦の溝なのだ。

 

生物としてみた男と女の「発情」の違いと夫婦の危機

我々人間は、自分たちが動物であり本能に従って生きているという事実を忘れてしまいがちだ。

しかし、我々はいまでも動物であり、夫婦というパートナーシップも、動物的な本能に従ってコントロールされている部分も多い。

そもそも男性と女性が恋に落ちるのも、動物としての本能に突き動かされているからだ。

そして、恋の仕方も、男性と女性で、まったく違うというのだ。

男性は本能的に、自分の子孫を残すために発情する。

男性は生殖行為に対するリスクがほとんどないので、比較的広く浅く発情する。

いっぽうの女性は男性と較べると、生殖行為に対するリスクが格段に高い。

妊娠して子供を産み、育てるまでにかかる期間と労力を背負うのは女性なのだ。

なので、女性はリスクに対する警戒心が男性と較べて圧倒的に高い。

しかし、警戒してばかりだと生殖行為に至れないので、フェロモンを察知して、「この人!」という相手にだけ、警戒レベルを一時的に下げ、集中的に発情する。

黒川さんいわく、「若い女性から見ると、この世は、希少な「うっとりする男子」と、膨大な「気軽に触ってほしくない男子」によって構成されているのである」。

そして女性が「この人!」と発情する相手とは、生物学的に一番正しい相手である。

一番正しい相手とは、「免疫抗体の型が一遠く離れて一致しない相手」なのだ。

それはつまり、生体反応が真逆にな相手、自分とは全然違う相手を好きになる、ということを意味する。

なので女性は恋をするときは男性と較べて圧倒的に深く強く恋をする。

まさに「あばたもえくぼ」状態になるのだ。

しかし、この一時的な警戒スイッチOFF状態は、永続的なものではなく、発情→妊娠→出産→授乳のサイクルが終わるまでのの約3年しか続かない。

なので、「あばたもえくぼ」状態だった女性が急激に冷めてしまうのは、女性の本能の仕様で、ある意味仕方がないことなのだ。

女性が恋の終わりに「彼は変わった」ということが多いそうだが、実際に変わったのは女性の「脳」なのだ。

だからこそ、女性の発情期が終わったあと、夫婦はお互いにその違いを認め、人生の真のパートナーとなるべく、歩み寄っていかないといけない。

 

脳科学的には人間のピークは50代後半から

本書で感激したことの一つに、人間の脳のピークについての話がある。

人生で一番頭がいいのはいつか。

その問いに、著者の黒川さんは「50代の半ば以降」と答えている。

これには正直ビックリした。

今まで読んだり聴いたりしてきた情報では、25歳くらいから脳細胞が死に始め、どんどん頭は悪くなり、記憶力も落ちていくと思っていたからだ。

黒川さんの解説はこうだ。

脳の記憶力には、「単純記憶力」と「連想記憶力」の2種類がある。

いっぱんに「記憶力」と言われるのは、単純記憶力の方。

単純記憶力とは、「たくさんの情報を素早く仕入れて、長くキープする力」。

この単純記憶力のピークは、15歳から二十代後半までで、いわゆる世間で言われている「記憶力のピーク」と一致する。

しかし、単純記憶力というのは、「数多くの経験から、コツをつかむ力」であり、すなわち「がむしゃら」であり、自分の経験から取捨選択するようにはできていない。

黒川さんはズバリ言っている。

「単純記憶力で生きているうちは、人生の基礎工事をしているに過ぎない」。

それに対して「連想記憶力」とは、「本質を見る力」「取捨選択する力」などだ。

単純記憶力から連想記憶力へのシフトが30代に始まり、40代くらいから上手く機能し始める。

そして50代以降、年を重ねるにつれ、単純記憶力は落ちていくが、連想記憶力は「死ぬまで進化と成熟を続けていく」のだ。

まさに孔子の「四十にして惑わず」である。

脳はずっと進化する。

なんと勇気をもらえる言葉だろうか。

 

まとめ

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僕たち人間は、自分が男性脳や女性脳、つまり動物的本能に従って行動していることを普段意識していない。

だから、夫婦間、パートナー間でケンカをしたり衝突したりすると、お互いの個性の問題、性格の問題だと思ってしまう。

だから、相手を責めたり、自分を責めたりしてしまう。

でも、この本を読んで「女性脳」「男性脳」の成り立ちと仕組み、そして反応に対する作用の仕方を知ることで、僕たちは気付くことができる。

自分たちがぶつかるのは、お互いの性格が悪いからではなく、男性脳と女性脳の違いからくるものなのだと。

そこが腑に落ちると、僕たちは相手に優しくなることができるし、無駄な衝突を回避することができる。

そしてそれは、夫婦間だけの問題ではなく、会社などの組織での人間関係にも、多いに役立つことだと思う。

本書でも女性部下の活用法など触れられているが、女性が活きる言葉や行為を男性上司が知っているだけで(逆もしかり)、職場はずっと活性化するだろう。

どちらが優れているかを比べるのではなく、違いを知り、お互いを承認し合う。

この「夫婦脳」を読むことで、男女のパートナーシップのあり方が見えてくる。

とても面白く文体も活き活きとして、楽しく読めた。

オススメです!!

 

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