経営・企業文化書評

一勝九敗 by 柳井正 〜 ユニクロの歴史がギッシリ!! [書評]

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ブックレビュー2010年の95冊目は、柳井正氏著、「一勝九敗」を読了。

柳井正氏といえば、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングの会長兼社長であり、日本で一番の資産家とも言われる実業家である。

本書は柳井氏が一時的に社長から退任し会長となっていた時期、2003年に書かれた、ユニクロとファーストリテイリングの歩みをまとめた自叙伝的色彩の強い成功体験本である。

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一勝九敗 by 柳井正 〜 ユニクロの歴史がギッシリ!! [書評]

柳井氏が、父親が創業した紳士服店を拡大して組織化し、日本を代表するカジュアル・ファッションブランド「ユニクロ」で大成功するまでの歩みが淡々と語られていく。

タイトルの「一勝九敗」は、柳井氏が自らとユニクロの歩みを振り返った時、他人からは一直線に成功したように見えたとしても、実際は一勝九敗くらいのペースであり、様々な失敗をしてはその中から学んでここまできた、というメッセージである。

そして実際本書の中では、成功した事例についても失敗した事例についても同じ調子で、実に淡々と語られているのが特徴で面白い。

ユニクロを最初に首都圏に出店した時の失敗についてもまったく感情的になることなく、ただ淡々とその時の状況が語られ、失敗の要因が分析され、その失敗から何を学び、次にどのように軌道修正して成功を収めたかが書かれていく。

あまりに淡々と語られるので、成功事例については思わず「誰でもできるのでは?」と、失敗事例については「分かってたんだったらなんで失敗したんだよ!」と言いたくなるが、現実はそんな単純なものではないことは分かっている。

これはあくまで柳井氏の文章スタイルであり、思考スタイルの問題なのだ。文章が淡々としていても、事例は実にダイナミックであり、猛スピードで物事は動き続けている。

セルフ・ブランディング書やライフハック書など、成功をミクロの側から語る書物に注目が集まる傾向にある今日この頃だが、本書はそういった書物とは対極的な場所に位置しており、世界に進出する大ブランドとなったユニクロを、常にトップの位置で指揮してきた指揮官がマクロに語る視点である。

ユニクロが産声を上げてから2003年までの動きを時系列でダイナミックに追体験できるという意味で非常に面白いし、ブランド力がまったくない企業が、いかにブランド力を獲得していくかについても、幾つかのエポック・メーキングな出来事を通じて、活き活きと知ることができる。

一方で少しだけ残念なのは、柳井氏のビジネスに対する情熱の根源的な源が何なのかが、あまり語られていないことだ。

彼が何に突き動かされてビジネスの舵取りをしてきたのか、ユニクロというブランドにどのような想いを込めてきているのかについての記述が、もう少しあってもいいような気がする。

本書が出版されたのは7年前で、ユニクロはフリースブームが終焉を向かえ、マスコミからは「終わった」と見なされている時期だった。

だが、2010年のいま、ユニクロは2003年当時よりもずっと大きく力強くなり、ブランド力にも磨きがかかり、僕たちの生活にがっちりと食い込んできている。

もはやユニクロはフリースの会社ではなく、老若男女問わず、気軽に着られるカジュアル・ウエアの代表となった。

柳井氏が今何を思い、今後ユニクロがどのように展開していくのか。

いずれ本書の続編を読んでみたい。楽しみだ。

「一勝九敗」のチェックはこちらからどうぞ!!

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