書評

僕らの時代! 書評「フリーエージェント社会の到来」 by ダニエル・ピンク

書評
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先見の明がある凄い人というのが世の中にはいるものだ。

本書の著者、ダニエル・ピンク氏はまさにその急先鋒と言えるだろう。

なぜなら、この「フリーエージェント社会の到来」は、10年も前に書かれた本なのだ。

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10年前の本?

 

 

僕自身が4月にフリーになったから言うわけではないが、2011年のいま、日本ではフリーエージェントという生き方が、選択肢として注目されるようになってきていると思う。

だが、本書「フリーエージェント社会の到来」は、2002年4月に日本語版が出版されており、オリジナルの出版は2001年かそれ以前だ(現在販売されているペーパーバックは2002年5月発売)。

今から10年も前の時期に、「フリーエージェントの時代がやってくる!」と宣言し、自らもフリーとなった人物がいたとは驚きだ。

 

 

しかも全編を読んでさらに驚いた。内容がまったく古くなっていないのだ。

もちろん2002年にはFacebookもTwitterもなく、現代のようにソーシャルなネット潮流が主流となっていないなど、細かい違いはある。

だが、物事の本質は変わらない。フリーエージェント社会がやってきたのだ。

 

 

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終身雇用の崩壊、少子高齢化、長時間労働は日本だけの問題ではない

 

 

「終身雇用制の崩壊」、「少子高齢化」、そして「長時間労働」。

いずれも、この10年の間盛んに喧伝されてきた、現代日本の閉塞感を表すキーワードである。

ところが、この「フリーエージェント社会の到来」を読むと、驚くことに、2001年当時のアメリカでは、この3つがアメリカの閉塞感を表すキーワードとして用いられているのだ。

著者ダニエル・ピンク氏によれば、「アメリカ人は『過労死』という言葉が認知されている日本人よりも、さらに多く働いている」と述べている。

 

 

 

 

IBMや自動車のビッグ3などアメリカ大企業が労働者に約束した終身雇用制は、1980年代までは、確かにアメリカでも有効に機能していた。

だが、その後アメリカで長引いた不況や日本メーカーの進出などにより、アメリカ企業はスリム化に迫られ、結果として終身雇用制度を捨てた。

そして厳しい労働環境の下で、多くのアメリカ人は長時間労働に晒され、結果として出生率が低下し、少子高齢化が問題となった。

これは、まさに日本の現状と同じではないか。

そう、アメリカでも日本と同じ問題が起こっていたのだ。そしてその結果、フリーエージェントという働き方のチョイスが生まれた、と言っても過言ではない。

 

 

3300万人のフリーエージェントたち

 

 

2001年当時、アメリカには約3,300万人のフリーエージェントが存在していたという。

この数値は、アメリカの労働者人口の約1/4を占めており、この数値は恐らくその後も上昇を続けていると思われる。

だが、この3,300万人のすべてが自発的に独立した、フリーランサーばかりではないことは要注意だ。

ここも日本とまったく同じ構図、派遣労働者がこの中に含まれているのだ。

企業は生き残りをかけて人件費を削減し、その結果、大量の雇用を正社員から派遣社員に切り替えた。

その結果、本人は正社員として働きたいと臨みつつもそれが叶わない、望まないフリーエージェントも大量に発生してしまったのだ。

 

 

 

 

だが、多くの自発的フリーエージェントは、企業や組織、そして時間という拘束から解き放たれ、プロジェクト単位で複数の企業と契約を結び、他のフリーエージェントと緩やかに繋がり共同で仕事を行うというスタイルを手に入れた。

これこそが、現代のフリーエージェントであり、新時代の働き方だと著者は説いている。

アメリカは、日本より10年進んでいるということなのだろうか?

 

 

組織の寿命を人間の寿命が超えた時

 

 

アメリカでも日本でも、企業の寿命は年々短くなってきている。

製品やサービスは生き残っても、運営母体が次々と変わるというケースも多々見られるようになってきた。

そんな時代には、僕らは「会社」が明日なくなってしまうことを前提に生きなければならない。

たとえ会社がなくならなかったとしても、昔のように多額の年金を用意してくれたり、住宅や生活の世話を見てくれたりすることはないのだと理解する必要がある。

 

 

 

 

労働環境はますます厳しくなり、会社は社員をさらに酷使するだろう。

だが、昔のように、酷使された見返りの、多額の退職金や子会社への横滑りなどは、もはや期待できない。

そもそも、数十年後に僕たちがリタイアする時まで、会社が存続できる確率はどんどん下がってきているのだ。

それでも僕らは、会社に忠誠を尽し、働く時間や場所、それに生活の中心をすべて会社に捧げ続けるのか。

本気で考えるべき時期にきていることは間違いない。

 

 

まとめ

 

 

著者ダニエル・ピンク氏は、本文中で、この本が出るまでは、アメリカにおいて、フリーエージェントとして働く人々の本格的な調査というのは行われてこなかったと述べている。

日本においても、バブル時代までは、いかに良い会社に勤務するかが人生のステータスであるかのように扱われていて、フリーで働く人々が社会的に注目を浴びることは少なかった。

だが、現代のようなソーシャルネットワークという強い追い風がない時代でさえ、アメリカにはフリーエージェント社会という新時代が到来していた。

 

 

そしてその風はいま、間違いなく日本にも吹いている。

日本社会が抱える根本的な閉塞感を打破するために、やらなければならないことは山ほどあるだろう。

僕ら一人一人が、自分たちが幸せになる働き方を本気で考え行動をすべき時期になりつつある。

そう思えてならない。

 

 

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2011年の78冊目の書評としてお送りしました。

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