読書記録


本を読み、読んだということを記録するという、何の取り柄もないようなページですが、意外な人が見ていてメイルをくれたりするのでなかなかあなどれませぬ。今年は何冊読めるでしょうか。どんな本と知りあうでしょうか。なかなか楽しみにではあります。


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01024 「JAZZ 最高の愉しみ方」 寺島 靖国 王様文庫

読み始め 011205 読了 0111211

コメント:○

これまた偏ったジャズファンが書いた、熱狂的なジャズ手引書。音を聞いたことがないアーティストへの熱烈な称賛を読んでいると、どれもこれも素晴らしいんだろう、という錯覚に陥ってなかなか素敵である。

自分が偏っていることを認めたうえで、大いに語るというのも、楽しいものだ。


01023 「ブルーノート再入門」 行方 均 朝日文庫

読み始め 011010 読了 011013

コメント:○

実に楽しい。いい歳したオッサンが、嬉々として好きな音楽について延々と語っているところが素敵だ。今後買いたいアルバムについての資料としたいと思って買ったのだが、読み物として楽しく読んでしまった。近々再読して、今後何を聴くかの資料とせねば。


01022 「北回帰線」 ヘンリー・ミラー 新潮文庫

読み始め 011112 読了 011130

コメント:○

10年ぶりの通読。最初に読んだ時は通読しているが、あとは適当にぱらぱら捲ってオシマイって状態だったと思う。プロットがなく、でたらめにばらまかれた玩具箱みたいな本なので、うまくリズムに乗らないと、通読はなかなか難しい。

この本は「小説」なのか、と問われれば、「違う」と答えるしかない。では、この本は何なのだ、と言われたら、「文学だ」と返すだろう。下卑てバカ丸だしな部分もたくさんあるのだが、破壊力があって楽しい。


01021 「20世紀 革命」 読売新聞20世紀取材班編 中公文庫

読み始め 010721 読了 010725

コメント:○

何を今更、という感じがしなくもないのだが、ロシアと中国における共産主義革命と、その後の社会主義国家の歩みをまとめたもの。

ソ連崩壊から10年が過ぎ、ようやく時代としてまとめることができるようになってきたのかもしれない。それに反して中国に関する記述については、現在進行形で書かれる分、いまいち曖昧な部分が残されているような気がする。


01020 「コックサッカーブルース」 村上 龍 集英社文庫

読み始め 010716 読了 010720

コメント:○

ギトギトに脂ぎってエログロな小説が読みたくなって、この作品を再読。期待通り、ドロドロギトギトのエログロで、なかなか満足。ただ、後半だんだん話が経済とかに移行していって、エログロが弱まっているのが残念(一体どんなものが読みたかったんだとは訊かないで欲しい。。。)。


01019 「ツァラトゥストラ」 ニーチェ 中公文庫

読み始め 010621 読了 010715

コメント:○

僕は哲学者でも何でもないので、哲学的なコメントや、学術的なありがた味というのは全く分からない。だから、純粋に読み物としてしかこの本を読むことができないのだ。

で、どうだったかと言うと、前半はなかなかおとなしくて、この前「この人を見よ」を読んだ時と同じように、「何だよお前イイ奴じゃん」と余裕があったのだが、半ばぐらいから、どんどんファナティックな方向に話が進み、読むのが極端にしんどくなってくる。どこまで正気で、どこからいっちゃっているのか、書いてるニーチェがいっちゃってるのか、読んでる自分いっちゃってるのか分からなくなってくる。

まあでも、30過ぎて冷静な頭で読むと、なかなか面白い読物ではあります。


01018 「魍魎の匣」 京極 夏彦 講談社ノベルズ

読み始め 010613 読了 010620

コメント:◎

再読。京極堂シリーズでは僕はこの作品が一番好きだ。おどろおどろしいところもいいし、久保と関口の絡みもすごくいい。あと、久保という人間のキャラクターも突出していてすごくいい。


01017 「姑獲鳥の夏」 京極 夏彦 講談社文庫

読み始め 010606 読了 010612

コメント:◎

再読。夏が来る前に読んでおこうと思い再読。この小説が持つ魅力を言葉で現すのは非常に難しいが、良く出来た交響曲を聴いているような気分、と言えばいいのだろうか。幾つかの主題が複雑に絡み合い、後半に向かいそれらが収束し、大きなテーマを現していく。そんな感じ?


01016 「ごろごろ」 伊集院 静 講談社

読み始め 010526 読了 010605

コメント:△

僕は伊集院静氏の小説はかなり好きなのだが、この作品は何となく拍子抜け。展開が良く見えない部分があったり、ダンディズム的表現が鼻についたり、登場人物に全然共感できなかったり。ちょいと残念であった。


01015 「りんごの木の下であなたを産もうと決めた」 重信 房子 幻冬舎

読み始め 010523 読了 010525

コメント:○

日本赤軍の重信房子が逮捕された後、自分の娘に宛てて書いた手記。僕はリアルタイムで彼女のテロリストとしての活動を知っているわけではないのだが、読んでいて意外に感じたのは、彼女が自分の過去をかなり冷静に見つめ、反省もしているというところ。逮捕直後に、報道の前で手錠をかけられた両手の親指を突き上げてアピールしていた姿とは、ちょっと違う。

淡々とした文章と、諦めに近いようにも思える清々しさのようなものが漂っており、不思議な感じがした。


01014 「ジゴロ」 伊集院 静 角川文庫

読み始め 010516 読了 010522

コメント:○

渋谷のストリップ劇場に育った、「ブヤのゴロー」と、母親のストリップダンサー、ラビアン・ローズ。そう言ってしまうとやたらと陳腐だ。いや、実際陳腐なんだが、それでも結構どきどきしたり、わくわくしたりしてしまう。やっぱりこれって才能だよな、と思わず思わせられてしまう、なかなかの秀作。


01013 「吾輩は猫である」 夏目 漱石 新潮文庫

読み始め 010502 読了 010515

コメント:○

夏目漱石の作品はずいぶん読んでいる方だと思うんだけど、「猫」は遅ればせながらの初読。たしか中学生ぐらいの時に、ちょろっとだけ読んで、すぐに飽きてやめちゃった記憶があるんだけど。。。

何というか、偉大なる世間話集と言うか、ストーリーなき大作というか。メインに流れる主題というのは、要は時代なのだろうな。後はたくさん出てくる賑やかな登場人物達のわき道的挿話が延々と続き、なかなか愉しい雰囲気を醸し出してはいる。


01012 「閉じたる男の抱く花は」 図子 慧 講談社

読み始め 010426 読了 010501

コメント:◎

このところ現代の小説をほとんど読んでいなかったのだが(興味もあまり湧かなかった)、本屋で平積みになっていたこの作品は、タイトルとカバーが極端に気に入って、衝動買いしたもの。「閉じたる男の抱く花は」って、すげえカッコイイ。

内容も、期待を裏切らず、素晴らしかった。緊張感のある文章と展開、華やかさもあり、軽く癖もあり。僕としては、久々に読んだ現代作品がこんなに素晴らしくて、すごくいい気分になった。この作者の本は、幾つか探して読んでもいいな、と、思った。


01011 「大王から天皇へ 日本の歴史03」 熊谷 公男 講談社

読み始め 010416 読了 010425

コメント:○

00巻から数えると日本の歴史もいつの間にか4冊目。タイトルが示すとおり、この巻では古墳時代から飛鳥時代を扱っている。読んでいてとにかく思ったのは、この時代の政治家は、みんな殺したり殺されたりの権力争いばかりしているってこと。やれ腐敗だの汚職だのと騒がしい現代の政治家だが、簡単に殺されたり殺したりしなくていいんだから、やっぱり現代は楽な時代なのかな。あと、自分の記憶のいい加減さも今回実感。推古天皇だの中臣鎌足だの、ぼんやり憶えていた記憶と本に出てくる年代がバラバラ。たまにこういう本を読んで、せっかく15年も勉強したことを思い出し、補足するようにすると、効率が宜しいだろう。


01010 「万延元年のフットボール」 大江 健三郎 講談社文芸文庫

読み始め 010328 読了 010415

コメント:○

大江の作品には、彼の出身地である四国の山村を舞台とした神話っぽい物語が多数あるが、この作品はそれら作品群の源流的なもの。タイトルだけ見るといかにも珍妙だが、作品はタイトルよりもずっと深みがあり重厚でもあり、僕はとても好き。

登場人物のメリハリも非常に効いていて、彼独特の世界に吸い込まれていく。この作品を読んでおくと、後の「同時代ゲーム」や、ノーベル文学賞受賞作「燃え上がる緑の木」なんかが、多少理解しやすくなるかもしれない。

それにしても、講談社文芸文庫、文庫なのに1,500円は高すぎ。ハードカバーだって1,500円で買えるぞ。


01009 「地図から消えた東京の町」 福田 国士 祥伝社黄金文庫

読み始め 010323 読了 010327

コメント:○

一つ前に読んだ本と同じシリーズで、こっちは「町名」にこだわったもの。

最近この手の本を読むことが多いのだが、まあ扱う町は似たり寄ったり。もうちょっと突き詰めて、マニアックな部分に入り込んだ方が、もっと楽しいような気がし始めている。それにしても、町の名を無闇に変えるってのは、ほとんど犯罪に近い行為だよね。まあ、今だからそう思えるのであって、高度成長期頃には、古いものは全部捨てたいって風潮だったのかもしれないけれど、それにしてもね。


01008 「地図から消えた東京遺産」 田中 聡 祥伝社黄金文庫

読み始め 010320 読了 010323

コメント:○

鹿鳴館、淀橋浄水場、吉原遊廓など、かつては東京を代表するような施設や地区だったものが、時代の変革と共に姿を消し、そしてその痕跡さえもなくしていこうとしている。この本は、江戸、明治、大正、昭和と、かつて東京に君臨した庶民の名所を集め、その痕跡が失われることを防ごうと試みている。なかなか読み応えがあった。僕としては、「ムーラン・ルージュ」や「玉ノ井遊廓」のあたりが面白かった。あ、あとは「菊富士ホテル」もね。


01007 「この人を見よ」 ニーチェ 岩波文庫

読み始め 010315 読了 010319

コメント:◎

読み始めてから比較的すぐに、僕はこの作者に好感を持った。ああ、すごく大変だったんだろうなあ、という感じで。彼の書いていることは明確で的を射ていて、それでいて自信たっぷりなのだが、必要以上に扇動的なのは、彼が幸福ではなかったからなのではないか、などと思ってみたり。

発狂してから死ぬまでの11年間は、彼にとって幸せな時間だったのだろうか。そうであって欲しい。そうでなければ、あまりにも救いがない。


01006 「二百十日・野分」 夏目漱石 新潮文庫

読み始め 010307 読了 010314

コメント:○

「二百十日」。これがなかなか変な中編ですごく面白かった。二人の若者が、阿蘇山の麓の湯治場に逗留していて、あーだこーだと会話しながら、風呂に入ったり飯を食ったりビールを飲んだり、翌日阿蘇山に登ったりする話。ほとんどが会話だけで構成されているのだが、この会話に妙な味があって実にいい。漱石らしくないが、すごく楽しい。

「野分」。こちらは漱石特有の神経症気味の人間が何人か出てきて、大学は出たものの、という、三部作シリーズでもお馴染みの設定。意地悪がいたり、裕福なのがいたり、と、やっぱりなかなかの設定なのだが、やっぱりこの設定だったら、「三四郎」や「それから」なんかの方がしっくりくる。でもたっぷり楽しませてくれるところが、やっぱり漱石のすごいところ。


01005 「タナトス」 村上 龍 集英社

読み始め 010303 読了 010306

コメント:○

キューバを舞台とした、村上龍お得意の、セックスドラッグ&エログロ小説なのだが、ちょっと今までとは一味違う。まあ、嫌いな人にとってみれば大同小異なんだろうけど。

セックスとドラッグに溺れた女が、「傷つく」という言葉を言っている。今までの彼の小説には、「傷つく」なんて言葉は一度も出てこなかったと思うので、彼としても何かしら思うことはあるのだろうか、などと想像してみた。


01004 「縄文の生活誌」 日本の歴史01  岡村 道雄 講談社

読み始め 010225 読了 010302

コメント:○

講談社の「日本の歴史」シリーズの第二冊目だが01巻。せっかく世の中にでたというのに、出版された直後に上高森遺跡の捏造問題で藤村某氏の件が大きく報道され、そのとばっちりを受けて、この本の内容も近日中に大幅に書き換えられることになったという。まったく迷惑な話だ。この本の中で、特に前半実に藤村氏の業績について触れているから、まあ仕方があるまい

この本の面白いところは、途中に何個所も「物語」なる創作が挿入されていることだろう。この物語というのが、縄文時代や旧石器時代の遺跡等の検証によって解明されている史実に基づいて、作者が勝手に当時の生活を創作したもので、これが妙におかしい。縄文人はやたらと人なつっこかったり、恥ずかしがり屋だったり、祭で踊っている女の服がはだけて下半身が露になったりと、なかなかのできばえです、はい。

でも、この時代のことって、僕が学校で習った頃とは、全然違う認識が根付いてしまっているんだなあ。すっかり時代遅れな人間になっていたらしいよ僕は。

あ、そうそう、講談社では、この本の改訂版が出たら(藤村氏の件)、今の本を持ってる人には無料で交換してくれるらしい。そうなるとこの改定前の本は、そのうちプレミアがついたりするんだろうか。つかないだろうなあ。

でもどの辺がどう変わるのか、すごく興味があるから、二冊並べて検証はしてみたい。


01003 「東京地名考」 上、下巻 朝日新聞社会部 朝日文庫

読み始め 010213 読了 010224

コメント:○

東京の地名の由来や住居表示によって消えてしまった昔の地名などを、東京区市町村別に紹介している。誰もが知っているものから、すごくびっくりする由来もあったりして、すごく楽しめた。意外と多かったのが、地名より前に鉄道の駅名があったため、というもの。一番有名なのは、高田馬場だろうが、その他にもたくさんあった。


01002 「山谷ブルース」 エドワード・ファウラー著、川島めぐみ訳 洋泉社

読み始め 010206 読了 010212

コメント:○

山谷とは、東京都台東区北部に広がる、いわゆる「寄場」のある地区の旧称である。浅草から北に向かい、吉原を越えるとそこが山谷である。住居表示により、現在は台東区に「山谷」という地名はもう存在しない。

この本は、アメリカ人の作者が89年から91年にかけて、実際に山谷の労働者達と生活を共にし、一緒に日雇いの労働をしながら集めた証言集である。偏見や差別を持って触れられがちな人々の生活が、リアルに浮かび上がっていて、凄い。作者がアメリカ人であったために、日本人同士では語られないような部分にまで突っ込んで語られているように思う。


01001 「同時代ゲーム」 大江 健三郎

読み始め 010110 読了 010205

コメント:◎

読了するのにほぼ一カ月もかかってしまったが、それだけ読み応えがあったということだと僕は認識している。これは、僕がずいぶん読んだ大江健三郎の小説の中でも、一、二を争う名作だと思う。閉鎖された地域に生きる独自の神話と、その神話を語る語りべの、二つの、大きくスパンの違う二つの時間の流れが繊細に、そして大胆に交錯し溶解し、壮大なスケールの物語となっている。これはすごい。出だしが退屈なので読む人は要注意。そこを越えないと、退屈な出だしの意味がわからないから。



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